終わりにしよう
最後の日だ。
まだそこまでボロボロになっていない400㏄のバイク。
見た目はレトロ、中身はハイテク、アナログメーターが2つ、その中央にはデジタル燃料計。
セパレートタイプのシートにスプリング。タンクにはニーグリップ用のラバーがついている。
単気筒マフラーから切れのある心地いい排気音が今も頭に流れてくる。
ポケットに入れた折り畳みナイフのようなキーを見つめ、俺は小さくため息をついた。
もう少し早めに生まれていたらな、そんな気分にもなる。
移り変わりの時代に生まれて、パソコンやスマホがどんどん新しくなる、それとは別にそのままいてほしいと願う代物だってある。
誰もがそう望んでいなくても、誰かは賛成しているだろう。
背中を向けて、店主にキーを渡す。
お願いします、なんて言いたくないけど、俺はそっと呟く。
ヘルメットもグローブも、ジャケットもブーツもゴミ箱に放り投げた。
まるで心が空っぽになった気分。
晴れやかになるはずがないだろう、シャツとジーパンだけ。
無関心だったものが身近に来た時、ようやく知る。
素足で歩きながら、無を抱えて歩く。
バイクを添えた短編集 空き缶文学 @OBkan
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