第16話 マッサージ
有はびしょびしょになってしまったパンツとズボンを明理に渡す。そして、その代わりに明理が生成したパンツとズボンを受け取る。明理は、有のズボンとパンツを綺麗に畳んだ後、ジップロックに入れてそれらを押収した。
有は、気絶している冬葉のポケットに、先に帰ります。という書き置きを残して屋上を後にする。歩きながらぐっと伸びをする有。この日は様々な出来事があり疲れが溜まっていた。
夕陽の差す帰り道を明理と歩く有。明理と話しながらも、どこか有の心のうちには寂しさのようなものがあった。
家に着くなり、ソファにどさりと倒れ込む有。ふわぁ〜。と大きなあくびをする。そんな有の隣に座る明理。
「有くん。ここで寝ちゃダメだよ〜。」
横になっている有の頭を愛おしそうに撫でる明理に有は、でも僕もう疲れちゃった。とうつ伏せの体勢を取る。どうしても立てない?そんな明理の問いを受けて、なんとか体を揺らして反応する有。明理の目の前で有のお尻が揺れる。バイソンを襲う肉食獣のような目になる明理。
「そ、それじゃあ、お姉ちゃんが有くんの疲れを取るためにマッサージしてあげよっか。」
明理はそう言うと、有の服を脱がせた。下着の状態になる有。ハァハァ、と息が荒くなり顔も好調していく明理。明理は魔術で本来、未成年に使用してはならないマッサージオイルを出す。そのオイルを惜しげもなく有の背中に垂らす。マッサージオイルの冷たさに反応する有。
「お姉ちゃん、冷たいよぉ。」
そんな有に、すぐ熱くなるから、大丈夫よ。と完全に据わった目で答える明理。様子のおかしい明理に有は不信感を抱いた。姉は自分に何かをしようとしている。大体、マッサージにオイルを使うなんてやりすぎている。だって、オイルを使用するマッサージなんて全部...。
有が思考する間に、明理は興奮した様子で有の背中をほぐし続ける。そして、有の体がびくんと跳ねた。突然の反応に驚くが、すぐさま舌舐めずりをする明理。完全に計算通りね。と時計を見る。
すると、次の瞬間、有の体は蒸気を発し、有の顔色がみるみる良くなっていく。有は、体中の筋肉が超回復を起こし、細胞に力がみなぎっていくのがわかった。
そんな有の様子に焦り出す明理。確かにマッサージの役割は回復である事は間違いないが、今回はそんな事を求めていない。
慌ててしまった自分の心を落ち着かせ、もう一度有の背中と対峙する。リンパに集中するんだ。そう自分に言い聞かせ、有の体を揉み込んでゆく。
今度は抜かりなく誘うような手つきでマッサージを行う。またもや、有の体がビクンと跳ねる。これこれ。と舌舐めずりをする明理。すると、有は上腕のみでソファから跳ね上がり、フローリングに直立する。目を丸くして驚く明理。
自身の肉体に触れる有。さっきまでの疲れが嘘のように吹き飛び、活力に溢れている。有は姉のマッサージに不信感を抱いた自分を恥じた。
「お姉ちゃん、ありがとう。」
そう言うと、普段の何倍も凛々しい表情になった有は次々と日課をこなしていく、夕食作り、洗濯、お風呂。夜の日課を明理と共に凄まじい勢いでこなす。
そして、お風呂で上がった体温が下がった頃、有は健全に眠気を感じる。ここまでサポートできるほど、明理のマッサージは完璧だった。
月が2人を照らす頃、有は明理の前で拳を掌に合わせてお辞儀をする。
「姉さん。感謝します。」
もはや別人のように彫りの深くなった有は、そのままベッドに入り、すやすやと寝息を立ててしまった。ポカンとする明理。とにかく有と一緒のベッドに入る。
自身のマッサージの腕を憎らしくも思ったが、可愛い弟の寝顔が見れるならそれでいいか。と有の頭を撫でる明理。有との1日を思い出しながら明理も眠りについた。
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