第131話 ユーシアの戦闘訓練

 数日後。


「よし、いつでもいいぞ」

「わ、分かりました」


 俺とユーシアは拠点から少し離れた場所で相対している。ユーシアの戦闘訓練をするためだ。


「はぁっ!!」

「ふんっ」

「えっ!?」


 神々しく光る剣を具現化させ、ユーシアが俺に襲い掛かってくる。その攻撃を腕で受けとめた。


 ユーシアは俺の行動に驚く。多分躱すと思っていたのだろう。


「俺にはその程度の攻撃、効かないぞ?」

「そんな……城では当たった相手は一撃で倒せたのに……」


 俺があざ笑うかのように言うと、ユーシアは呆然となる。


「ほら、今度はこっちから行くぞ!!」

「!?」


 お返しに俺の方から攻撃を仕掛ける。俺はそのまま殴りにいく。ユーシアは何かを感じたのか、俺の拳を躱した。


「もしかして……アイギスさんって滅茶苦茶強かったりします?」

「我に勝てるのだから、弱いはずなかろう」


 冷や汗を掻いて尋ねるユーシア。俺の代わりに戦闘を眺めていたソフィが答えた。


「ソフィさんに?」

「我はこれでも高位古代竜だ。普通に人間では傷一つつけることは叶わん」

「ソ、ソフィさんってド、ドラゴンだったんですか!?」


 ソフィに勝てるからってなんなのという表情のユーシアだけど、その後に続けられた言葉を聞いて酷く狼狽する。


「ん? 言ってなかったか?」

「聞いてないですよ!!」


 俺が首を傾げたら、抗議するようにユーシアが大きく叫んだ。


 すでに知っている思っていたが、言うのを忘れていたらしい。


 そういえば、最近はすっかり人間の姿でいることが多くなっていた。ユーシアが来てからもドラゴンの姿になったところを見た覚えがない。


 それに、ユーシアは何かと戦う恐怖に打ち勝つために、勇気が出る卵を求めてここにやってきた。


 俺にはソフィのような変身能力はないので、どうしてもただの訓練にしかならないだろう。


 でも、ソフィくらい巨大な存在を相手に練習すれば、その恐怖感も和らぐのではないだろうか。


「ソフィと戦ってみるか?」

「え!?」


 丁度いいので提案してみるとユーシアが目を大きく見開いた。


「うむ。我が相手をしてやってもよいぞ」

「いやいや、い、いいですよ」

「遠慮するな。どれ少し待っておれ」


 ソフィがウキウキした様子で返事をする。ユーシアが遠慮しようとするが、ソフィは物陰に隠れたと思ったら、ドラゴンの姿になって飛んで来た。


「ひ、ひぇえええええええええええ!?」


 ユーシアがその姿を見て腰を抜かす。


 ソフィのドラゴンの姿は別に怖い物じゃないだろうに。むしろかっこよくて美しいと思う。


『待たせた』

「よーし、ユーシア、ソフィを攻撃しろ」

「む、むむむむ、無理ですよ!! ドラゴンですよ、ドラゴン!!」


 俺たちの目にソフィが着地した後、ユーシアに指示を出すが、涙目になって追いすがるユーシア。


 ここは心を鬼にする場面だ。


「大丈夫だ。ソフィは優しいから手加減してくれるさ」

「わっととっと!?」


 俺はユーシアの襟首をつかんでソフィの前に放り投げる。


『それではゆくぞ!!』

「うわぁああああああっ!?」


 ソフィが威嚇すると、ユーシアはソフィから逃げ出した。


『こら!! 逃げるでない!!』


 ソフィはその背中を追いかけて軽くブレスを吐く。


「ひょえぇえええええっ!?」


 危機を感じたユーシアが飛び退いてブレスを躱した。


 今のは中々良い動きだったんじゃないか?


『どんどんゆくぞ!!』


 それを見ていたソフィは問題ないと思ったのか、次々とブレスを放つ。


「あひゃ!?」

「んほっ!?」

「にひぇ!?」


 ユーシアは変な声を出しながらソフィのブレスを右に左に必死に回避しながら逃げ続けた。


「ぜい……ぜい……」

『今度はこれだ。ふんっ』

「ひぃええええええええっ!? ぐふっ」


 スピードが落ちてきたユーシアに情け容赦なく、腕を振り下ろすソフィ。ユーシアは必死になってソフィの腕を躱そうとするが、もう疲れが限界で躱しきれずに攻撃を受けてしまった。


「おーい、大丈夫か?」


 俺は倒れたユーシアに駆け寄ると、彼は意識を失っていた。


 幸いどこにも異常は無さそうだ。


『かなり力を抑えたからそやつでも問題なかろう?』

「ああ。初めてにしては頑張った方だろう」


 ソフィの言葉に頷き、俺たちはユーシアを背負って拠点に戻るのであった。

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