第130話 仲良くなる二人
「よーし、収穫を始めるぞ」
『おおー!!』
皆で広大になった畑に降りて、割り当てに沿って野菜の収穫を行う。
ユーシアと魔王は俺たちと同じ畑で作業だ。
魔王は一回しかやったことがないのユーシアと魔王をペアにしてやれば丁度いいだろう。
「ユーシア、魔王のサポートを頼む」
「え、僕ですか?」
俺の言葉を聞いたユーシアは、きょとんとした顔で聞き返す。
「農業もやったことあるみたいだし、手慣れてるからな。(見た目の)歳もそう変わらんだろうし、やりやすいだろ」
「そ、そうですね」
「よろしく頼むぞ?」
「は、はい。よろしくお願いします」
魔王がユーシアに尊大な態度で話しかけると、彼はペコペコしながら返事をした。
「マオさん、行きましょう」
「うむ」
ユーシアは畑の中で自分が担当する場所に魔王を連れていって作業を始める。
「それじゃあ、ここをこうして、こうやって切り取ってください」
「うむ」
二人の様子を眺めていると、ユーシアがきちんと教えながら、作業を始めていた。今回は前回のディーコンとは全然違う野菜で収穫方法が違うので、丁寧に教えてくれるのは助かる。
魔王は指示に従って収穫し始める。
「どうじゃ?」
「そうですね。全体的に良いんですが、もう少しこの部分を丁寧にしてもらえるといいかなと」
「よかろう」
魔王が収穫した野菜をユーシアに見せる。それを見た彼は少し眺めた後で、ダメ出しをしている。
ここまでやれるのなら問題ないだろう。
俺も作業を始めた。
「ふぅ~、そろそろ終わりの時間かな?」
作業をしていると時間があっという間に過ぎた。日が傾き、もうすぐ太陽が地平線に沈みそうだ。
暗くなる前に料理を済ませてしまいたい。
「食事当番はそろそろ上がろう!!」
『はーい!!』
俺が声を張り上げると、食事当番が返事をして畑から家のある方に移動していく。
「まずは汚れを落とさないとな」
食事の準備をするにしても、汚れたままで作る訳にはいかない。
「それなら、妾に任せておくのじゃ!!」
水路に水を汲みに行こうとすると、魔王が自信ありげに手を挙げる。
「そうか。それは助かる。頼んだぞ」
「うむ。クリーンッ!!」
俺の返事を聞いた魔王が、魔法名を唱えると、俺たち全員を光が包み込み、一瞬で作業前のようにピカピカの状態になった。
「おお。助かった。流石魔王だな」
「カッカッカッ。この程度は朝飯前よ」
俺の誉め言葉を聞いた魔王は、今にも後ろに倒れてしまいそうなくらいふんぞり返って笑う。
「それじゃあ、急いで料理に取り掛かろう」
「はい」
俺とユーシアと、料理担当班は急いで調理場に向かった。
「妾も手伝うぞ?」
「それじゃあ、野菜の皮を剥いてもらってもいいですか?」
「分かったのじゃ!!」
魔王は調理場にやってきて手伝いを買って出る。前回手伝ったからまたやるつもりらしい。
ユーシアが野菜を指さして指示を出すと、魔王はそれに従って野菜の皮を剥き始めた。
「マオさん、その部分は、こうやって、こう切ってください」
「分かったのじゃ」
魔王が苦戦しているのを見つけると、すかさずフォローを入れるユーシア。すっかり魔王の教育係だ。
「よし、終わったのじゃ。次は何をすればいいのじゃ?」
野菜の皮を剥き終えた魔王は次の仕事を求めてユーシアに声を掛けた。
「次はこれをお願いします」
「うむ。任せよ」
ユーシアも少し慣れてきたのか、先んじて魔王に指示を出している。
それからしばらくして夕食が出来上がった。
「ふぅ。今日の作業は終わったぞ」
「了解。飯にしよう」
「うむ」
ちょうどその時に、最後まで残って作業していたソフィ班が戻ってきて、広場に皆が集まってくる。
昼と同じように炊き出しと同じ要領で皆に料理を渡していく。全員に行き渡ったところで食前の挨拶をして食べ始めた。
「ユーシア、今日は世話になったのう」
「いえ、そんな。大したことはしていませんから」
「そんなことはない。妾はお主に色々教えてもらったのじゃ」
「それはそういう指示でしたから」
別れ際に褒める魔王に、謙遜するユーシア。
「そうかもしれぬが、世話になったことに違いないのじゃ。だから、お主にはこの指輪をやろう」
「いやいや、そんな高価な物受け取れませんよ」
魔王が自分の指についていたもの外してユーシアに送ろうとするが、ユーシアは慌てて両手を体の前でパタパタと手を振って受け取うろとしない。
「これは高価な物ではないから安心せよ」
「ユーシア、せっかくくれるって言うんだから貰っておけ」
「わ、分かりました」
魔王と俺でユーシアを諭すと、彼は恐縮しきった様子でその指を受け取った。
「それではまたな。今日には世話になった。ユーシアもまた会おう」
「はい。待ってます」
最後にユーシアと別れの言葉を交わした魔王は、ジムナスと一緒に空を飛んで国に帰っていった。
魔王とユーシアはすっかり仲良くなったな。
俺は二人の様子を見て内心で喜んだ。
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