第100話 作成の条件
祝!!100話!!
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「しかーし!!一つだけ条件がある!!」
話がまとまったと思えば、そのドワーフは指を立てて声を上げる。
「それは?」
「うむ。スーモウでワシ達と戦って勝つことだ」
「スーモウってなんだ?」
条件を聞いたが、良く分からず俺は腕を組んで首を傾げた。
「ああ。スーモウというのは、ドワーフが昔から行っている競技の一つでな……」
ドワーフがスーモウと言う競技について説明をしてくれた。
まずは一定の範囲内で相手を押したり、ついたり、投げたりすると言うのが大まかな内容らしい。そして、その範囲から出したり、相手を横に倒せば勝ちになるそうだ。逆に出されたり、倒されたら負けだ。
それだけではいまいち競技がつかめないので実際に簡単に地面に範囲を仕切る線を書いて、実践してもらった。
「なるほどな。ある程度理解した。その勝負受けて立とう」
「ほほう。中々漢気があるじゃねぇか。気に入った。土俵に案内してやる」
それを見て俺に非常に合っている競技のようなので問題なく、引き受けることになった。俺達はドワーフの里の中に足を踏み入れた。
「へぇ~、ドワーフの住処ってこんな風になっているんだな」
洞窟内は明るくて、その明るさには覚えがあった。それはダンジョンの洞窟階層と同じだった。恐らくダンジョンで内部を照らしている何かを同じように活用しているのだろう。
ただ、ダンジョン内のようにグネグネと道が入り組んでおらず、壁も凸凹していたりせずに何かで削ったように綺麗に平らになっていて、あまり洞窟の中という印象は受けなかった。
「ほぅ。お前さんはドワーフの里には来た事はないのか?」
俺が珍しそうにあたりを眺めていると、俺を案内しているブリギルが振り返って尋ねてきた。
「あぁ。初めてだな」
「まぁ鍛冶してるか、穴掘ってるか、スーモウしてるだけで面白味はあまりないからな。あまりここに来る奴は多くない。今の武器に満足できない奴や鍛冶に興味があるやつばかりだ。まさかハサミを求めてくる奴がいるとは俺も思わなかったがな」
俺の返事に、ブリギルは肩を竦めて俺に呆れるように笑う。
俺はドワーフにまさかハサミを作ってもらうことになるとは思いもしなかったな。そのおかげでドワーフの里という場所を見ることが出来たんだから悪くないけど。
「俺は結構この洞窟の中は面白いけどな」
「本当にお前は変わってんな」
里の内部をずっと見回しながら返事をしているせいか、変なものを見るような視線で見つめられた。
「俺はダンジョン都市から出たことがなかったからな。あんまり外のことを知らないから新鮮なんだよ」
「なるほどな。今のご時世で全く街の外に出たことがないってやつは珍しいな」
「そうか?俺は孤児だったし、そのままダンジョン都市の孤児院で育てられて探索者になったから出る必要がなかったんだよ」
「まぁ誰しも何かあらぁな。とっ、着いたぞ」
俺とブリギルが話をしていると、広い空間に出た。半球型の室内の中心に何やら天蓋のようなものがついた舞台がある。
「あれは……」
「あそこの上の土俵で戦うのがスーモウだ。今日はまだ誰もやっていねぇけどな。いつもは時間があれば、あそこで同族たちと競っている」
俺が視線の先にある建造物を見つめると、ブリギルが親切に説明してくれた。
「へぇ~。面白そうだな」
なんだか分からないけど、舞台の上で競いあうというのはワクワクする。
「だろぉ~。毎日負けないように特訓して必死よぉ。下手したら鍛冶よりもやってるかもな!!」
「それはやり過ぎだろ」
まさかあれ程鍛冶が好きだと言われるドワーフが、それと同等、いやそれ以上にのめり込んでる競技はあるとは思いもしなかった。
「しょうがねぇさ。昔からいざこざは全部これで解決していたし、ドワーフが初めに覚えるのもスーモウ、ストレス発散も全てスーモウだ。スーモウはワシ達ドワーフの魂に刻まれた競技なんだよ。だから今日初めて戦うお前には負けねぇぞ」
「望むところだ」
どうやらかなり自信があるらしい。たがしかし、俺も最近は少しずつ自身がついてきた。だから、俺は絶対に勝ってみせる。
「おっ。ブリギルじゃねぇか。一体何をするつもりだ?」
俺達が舞台の近くで話していると、俺があったことがないドワーフが話しかけてきた。
「ああ。この人族とスーモウで勝負するんだよ」
「へぇ。それは面白そうじゃねぇか。こりゃあ皆を呼んで来ねぇとな」
「おいおい。別にそんな大事にしなくてもいいだろ」
ブリギルが説明をすると、そのドワーフは楽しそうに笑って踵を返すが、ブリギルが肩を掴んで止めようとした。
「バカ野郎!!滅多にないスーモウと言えば皆で観戦しなきゃなんねぇだろ!!」
「あーはいはい。分かった分かった。勝手にしろ」
しかし、面白がって止る気がない相手に、ブリギルはお手上げと言った様子で追い払った。
「すまんな。大事になりそうだ」
「まぁ俺は別にハサミを作ってもらえればそれでいいさ」
「そうか。そう言ってくれると助かるわ」
俺の申し訳なさそうにするブリギル。
それから待つこと暫く、開けた半球型の空間がドワーフたちによって埋め尽くされることになった。
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