第8話 自己紹介2 私のことは、イフリータと呼びなさい!


 イフリートは、俺から立ち上がると。

 向かい側に座った。


「落ち着いたところで、自己紹介のやり直しよ」


「誰のせいで、騒いでたんだよ」


「なに。まだやりたいのかしら?」


「いえ! とんでもございません!」


 イフリートの態度は明らかに、出会った時と違い、主人に対する優しさ従順じゅうじゅんさは、カケラも感じられなかった。



 はぁ。俺様の従順メイドがぁ。まぁ俺がちゃんとイメージして、召喚しなかったから悪いんだしなぁ。


 てか! んなもんわかるか!!! けど、今までのイフリートより、自然な表情を見せている気がするが。気のせいか?



「私の事は、イフリータと呼んでもらうわよ」


「何でだよ『イフリート?』」



 イフリータとユーリの頭上に魔法陣が現れた。


 イフリータは、ユーリの頭上に召喚された「あ」ユーリの脳天にイフリータが、のしかかった「グガァ!」



 イフリータは、うつ伏せに倒れた、ユーリの頭に正座したまま話した。


「私を召喚する事になるからよ。わかったかしら」



「わかりました(柔らかい。感触はたまらないんだが!! 頭がづぶれそうだ! イフリータ小柄でよかったぜ)」


 イフリータは、ユーリの頭を踏み「グガ」立ち上がると、向かい側に座った。



 イフリータが座って何も話さないので、気になることを聞いた。


「ところでイフリータは、いつ頃消えるんだ? 俺の知ってる召喚獣は、一定時間で消えるんだが(無論ゲームの話だがな)強いイフリータが、突然消えても困るから知っておきたいんだが」



 イフリータは、呆れ顔で俺を見て。


「そんな事も知らないわけ? ご主人様は?」


「いや、実はな」


 イフリータに天使に殺された話や転生した事を話した。


「ふぅん転生者ね。やけに無知なご主人様だとは思ってたし。さっきから、前世とか、死ぬ直前だとか神様って言ってるから、何かの冗談かと思ってたんだけどぉ」


「本当なんだ!」


「信じられないわね」


「あのだな(クソ。いくらファンタジーの世界でも、転生なんて信じないよなぁ。どうすりゃ)」


 俺が、悩んで地面を見ていると、イフリータは、エクリアを疑いの目で見ていた。


「あんな子が、本物の天使だなんて。信じられないわ」


「へ! あぁそっちか」


 エクリアは、もじもじしながら。


「そんなに、見つめられると照れますねぇ」


「はぁ。しかも、神聖なる神の使いであるはずの、天使が殺人だなんて。ありえないわ」


「殺人なんてしてませんよぉ。天使聞きが悪いですねぇ。あれは、聖なる事故ですよぉ」


 何笑顔で言ってんだ! エクリアのやろう。


「人間界で買い食いして、カラスに追われて、コンビニ袋を空から落として、俺の脳天にぶつけて、殺したの! どこに! 聖なる要素があるんだよ! エクリア!」


「あはぁ? そうでしたかねぇ? ユーリ?」


「都合良く忘れてんじゃねぇ! エクリア!」



 イフリータは、両手をパンパンと叩いた。


「まぁいいわ。話進まないし」


 俺は納得し座った。


「そうだな」


「けど、冗談だと思って聞き流してたんだけど、羽は魔法じゃなくて、本物だったのね」


「あぁ、あれが天使とは信じ難いんだがな」


「そうね。お間抜けに見えるものエクリア。まぁ、疑ってもわかららないし、今は信じとくわ」


「そりゃどうも(なんだろうか。教えてもらう立場とはいえ、ご主人様の俺が、下になったみたいだな。俺様の従順なメイドは、消えてしまった)」


「転生者だからかしらね。ご主人様が、変わった力を持ってるのわ」


「変わった力? イフリータの見た目のことか?」


「確かに召喚獣を人の姿にした人はいないけど。それよりも変わってるのは、ご主人様の魔力が減ってないのよ」


「俺の魔力が減ってない? それって」


「信じられないけど、魔力が無限ってことかしらね」


「魔力無限??? 冗談みたいな話だな」


 俺は、体全体を見渡したが何も変わったところはなかった。

 外見からは何も分からなかった。


「そうね。普通ならありえないわ。魔力無限に関係あるのが、さっきの質問、召喚獣である私がいつ消えるかなんだけど」


「おぉ! そうだった。イフリータは、いつ消えるんだ?」


「召喚獣との契約は召喚者。つまり、ご主人様から貰ってる魔力の供給がなくなれば、召喚の契約破棄になり、召喚された者は消えるのよ」


「ふむふむ(俺の知ってる。ゲームと同じだな)」


「けど、私が魔法を使っても、魔力がカケラも減らないのよねぇ」


「それで無限か」


「そ、だから無限。つまりご主人様の魔力が無限だから。私は、ご主人様が死なない限り、消えないってことよ」


「あぁ、わかったよ。まぁ強いイフリータに突然消えられても困るしな」


「違うわよ」


「ん?」


 イフリータは、指で自分のくちびるに触れると、俺に胸元を見せてきた。


「だから私と、ご主人様は未来永劫、一緒に暮らすのよ。わかったかしら」


「はは、そうだな(なんだぁ、急に色っぽく言いやがって。さっき迄、俺を踏んでたの誰だよ! つーか板胸で挑発されても……いやぁ、これはこれで、いや違う俺はある方が好きなはずだ!!!)」



「それに、殺されて転生って事なら。私達、召喚獣とそんなに違いはないから、この世界に転生したのは、運命みたいなものかもしれないわね」


「転生した俺と、召喚獣に違いがないって、意味がわからないんだが? どういう意味なんだイフリータ?」


「私達、召喚獣は、元はみんな人だったのよ」


「なに!!!」


「そうだったんですか」


「何で、人から召喚獣になってるんだ」


「私は召喚獣になってからは、召喚してもらった時しか人と話せてないから、確かな情報はないんだけど。私が人だったのは大体、1000年前になるわね」


「千年!」


「ほほぉ。イフリータさんは、つまり千歳なんですね」


 イフリータは、右手で、左腕を撫でるようにエクリアに見せていた。


「この柔肌のどこが! 千歳のババァなわけ! エクリア!!!」


「いえいえ、イフリータさんの体は、ユーリの変態ロリメイド特集のイメージだったはず! あ! はは」


 エクリアは、イフリータを見て話すのをやめた。

 イフリータは、エクリアを目を細め睨みつけていた。


「冗談じゃないですかぁ、いやですね。ははぁ」


(こいつ怖いもの知らずにも程があるな)



 俺はイフリータの機嫌を悪くしないため、心の中で叫んだ!!!


 つーか変態ロリメイド特集ってなんだよ! んなもん見てねぇよ!!!


 正確には、ロリメイド特集はいらないって、次のページにしたら死んだんだよ!!



「コホン! 話を戻すわよ。千年と言っても召喚獣になってからは、時間の感覚がなかったからか、千年も長くはなかったわね」


「そんなものですかね」


「それで、何があったんだ」


「千年前『魔王』が現れたのよ」


「魔王が!!! 最初から居たんじゃないのか!」


「違うわ。魔物は居たけど魔王はいなかったわ」


「それで魔王は、何をしたんだ?」


「魔王は世界に宣戦布告をし、強力な魔物を世界各地に召喚したわ」


「それで、世界は滅びなかったのか?」


「私の知る限り今の人達より、昔の人達の方が強かったのもあって、世界が滅んだりはしなかったわ」


「そうなのか?」


「昔使えた物も、今では禁忌きんきに、されたらしいから」


「禁忌?」


「そ、禁忌、山ほど巨大な召喚獣を召喚する『究極召喚』よ」


「究極召喚! 名前からして強そうだな」


「巨大化ですかぁ。イフリータさんだと、パンツ見えますねぇ」


 イフリータは、無言でエクリアを見つめていた。


「はは、冗談ですってぇ」


(こいつ、ほんとこりねぇな。いや、俺も想像はしたが)



「続けるわよ。究極召喚は強かったわ。一撃で山が消し飛び、海をも陸地に変えてしまうほど。けど究極召喚の代償には、巫女を生け贄に捧げる必要があったのよ」


「生け贄で召喚!!!」


「むごい事しますねぇ」


「あの時代は仕方なかったのよ。誰かが犠牲にならないと。みんなが死ぬだけだったから」


「難しいな」



「まぁそんな時代も、500年前からは勇者が現れて、俺達が魔物を倒すから、巫女達を犠牲にしないでくれと言ったわ。実際に魔物の被害が減って、強力な召喚獣を召喚する生け贄は禁止になったわ」


(勇者か、カイザーのご先祖様になるんだろうな)



「今の召喚獣は、500年生け贄にされた巫女達の魂の集合体よ。まぁ無理矢理、巫女にされた子もいたけど、家族のため望んで巫女になった子も居たみたいだから……私は……どっちだったか忘れちゃったわね」


「そんな事があったのか」


「どこの世界も酷い時代はありますねぇ」


「まぁ、もう千年も昔の話よ。悲しむ事じゃないわ」



 なんだ? エクリアが立ち上がって気合を入れてるが? また何か企んでるのか?


「ふふーん! ここは天使としてですねぇ。昔亡くなった、イフリータさん達の為に! 天使の祈り『エンジェルヴェール』を捧げましょうとも!」


「遠慮しておくわ。あなたが本物の天使だとして」


「ほんものに決まってるじゃないですかぁ」


「それは置いておいて」


「なぜ! 置くのですか!!!」


「私は今を楽しんでるから、成仏でもしたら困るのよ」


「そうですかぁ。仕方ありませんねぇ」


「よし!!」


「どうしたんですか。ユーリまで突然立ち上がって」


「俺が召喚したら、永久召喚になるんだから、他の召喚獣も自由にできるんじゃないかと思ってな」


「ほほぉ。なるほどぉ、それは名案ですねぇ」



 俺がどうだ? とイフリータを見ると、イフリータは甘える様に指を咥えていた。

 ゴクリ……


「えぇ、それってぇ。私専用のご主人様じゃなくなるってことかしらぁ?」


「い……いやか? てか、なんだよ専用って!」


「ふふ、言ってみただけよ。私も良いと思うわ。みんなも自由にしてあげたら」


「そうだよな! えぇと召喚するには確か『召喚獣リスト!』」


 ブゥン空中に召喚獣リストが映し出された。


「あれ? 名前が黒い?」


 召喚獣リストを出したが、召喚獣の名前は黒く、よく見ると時間が表示されていた。



 イフリータを見ると、アゴに人差し指を当て思い出した様に話し出した。


「あぁ、そう言えば昔聞いたわね。召喚した召喚獣が帰るまでは一定時間、他の召喚獣を召喚できないって。まぁ普通は魔力切れで帰るから関係ないんだろうけど。ご主人様は魔力が底無しだから」


「そうなのか残念だけど仕方ないな。それなら持ち物でも調べて街を探しながら、時間になったら召喚だな」


「それがいいわね」


 死人の持ち物を調べるのは正直、追い剥ぎしてるみたいで罪悪感がないと言えば嘘になる。が! やはり気になる。


 勇者一行の召喚魔術師様だ! 何があるかは開けてのお楽しみぃ!


『アイテムリスト!』


 ブゥン

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