第7話 自己紹介。私はイフリート


 エクリアは勇者達の墓に祈り終えると、満足そうに歩いてきた。


「お! 終わったか?」


 エクリアは腰に手を当て、自慢のオッパイ! を突き出し!


「えぇ万全でしょうとも!!! この私が、血反吐を吐きながら! クソッ!!! ガミ!!! に拷問され会得した!『天使の祈りエンジェルヴェール』を味わったのですよ! あの退屈な天国に行けたに違いありません!!!」


「そ、そうか。ありがとうエクリア」


「ふふ、それほどてもぉ、ありませんよ!」



(大丈夫だろうが。こいつの話聞いてると、地獄に行ったみたいに聞こえるな)


 俺がエクリアを疑いの眼差しで見ていると、転生してからも、1枚だけ黒かったエクリアの天使の羽が光り始めた。


「おおお!! 1枚だけ、黒かった羽が白くなったぞ!」


「おぉぉぉ!!! 良いことをした証ですよぉ!!! 純白の羽の帰還です!!! これは盛大にお祝いをしなくてわ! いけません!」



「めでたいのはわかるが。祝う物は何もないぞ」


 エクリアは、地面に両手をつき土下座するように倒れた。


「がぁ!!! ぞんなぁ」


「あたり前だろ! この世界でまだ町に行ってないんだから!!!」


「チクショォォ」



 いつの間にか青から赤い髪に戻った、メイドが俺の肩を叩いた。


「楽しそうなところ悪いのだけど、ご主人様」


「どうかしたのか?」


「まだ遠いのだけど、100人近くの紅鎧を着た者達が近づいて来てるわ」


 俺は立ち上がり、慌てて周りを見たが誰もいない。


「何もいないぞ?」


「偵察魔法、紅蓮鷹フレイムバードを使ってるのよ」


 メイドが指差した空には、紅蓮に燃え盛る鳥が飛んでいた。


「あれか?」


「紅蓮鷹の見た風景は、私の左目で確認できるのよ」


 メイドは指で左目を指差した。

 左目は炎の様に紅く染まっていた。


「おぉ! 便利だな!」


「さっきの騒ぎで、騎士が出てきたんでしょうね。倒していいなら倒すけど、どうするの?」



「騎士! 倒していいわけねぇだろ!!! こんな状況で、騎士に出会うなんて、何聞かれてもアウトだぞ!」


「だったら、あっちに逃げれば問題ないわよ」


「よっしゃぁ! 行くぞ! エクリア! って何してやがる」


「ごほうびが、ないなんてぇ」


 いつまでも土下座体勢で、項垂うなだれている、エクリアを抱っこして。


 猛ダッシュで林に逃げ込み、メイドの指示に従い。30分移動し林の反対側に抜け、違う草原に出た。


「はぁはぁ、ゼェ! はぁ。ここまで、来たら大丈夫か?」


「そうね。まっ! 何か来たら私が、わかるから大丈夫よ」


「そうか。はぁ! 疲れたぁ」


 ドサッ!


「だらしないですねぇ」


 大の字で倒れ込む俺を、エクリアが胸をポヨンとさせ覗き込んでいる。

 かわいい……だが! 今は関係ない。


「てめぇが! 走らねぇから、ずっと抱っこしてやってたんだろうが!!!」


「あたり前じゃないですかぁ。普段飛んでた私が、走るなんてするわけ、ないじゃないですかぁ」


「エクリア、てめぇ……」


「ははぁん」


「つかれた。はぁ」


 休憩後、落ち着いたところで、自己紹介を始めた。



 「では、落ち着いたところで、私はイフリートといいます。ご主人様、これからよろしくお願い致します」


「俺はユーリだ。よろしくな」


「私はエクリアでぇす」



 やはりメイド服姿の彼女は、俺の召喚した召喚獣イフリートで間違いないようだ。


 だがなぜ! 魔獣じゃなく。赤髪ロリメイドなんだ!

 いや、それより重要なのは! 俺的には、もう少し大人な感じが好みなんだ!!!


「で、聞きたいんだけど。ご主人様、この容姿ようしと服は、なんですか? あと妙な話し方も」


「は? 俺は知らないぞ?」


「なに言ってるのよ!!! 全て! ご主人様が与えてくれたんでしょ!!!」


「は???」


「だから、ご主人様が……」


「ちょっと待てよ。じゃあ、このメイド服も見た目ロリなのも! 俺が召喚したのか? てか、服の召喚てなんだ。つーか!!! ありえねぇよ! 俺はナイスバディの人が。は!!!!!」



 俺はイフリートを見ていて、思い出した事があった。前世で、死ぬ直前に見ていた物! ネット情報『ロリメイド特集』を思い出した。


 死ぬ直前だった為に、記憶に深く傷まれていたのかもしれない。確かに、イフリートに似た子がいたなぁ。


 もしかしてこれが原因か?


 どうすんだ! この状況! 俺は、どっちかといったら、胸も身長もある方が好き!


 いやいや、今はそれどころじゃない。

 どうやって、この状況を回避するかだ! 下手したら殺されるぞ!


 ん? いや、必要ないのか? 何もイフリートは、知らないんだから、普通にイメージ通りと誤魔化ごまかせばいいだけだな!


 と俺が結論を出した直後! エクリアが手をポンと叩いた。



「あぁ、おもいだしましたよぉ! ユーリは死ぬ直前に、小柄メイド特集なる、書物を読んでたんですよぉ。死ぬ直前の記憶は、鮮明せんめいに記憶に残りますからぁ」



 俺はエクリアに詰め寄り。


「テメェ、エクリア! 小柄ってなんだ! 書物ってなんだよ!!! 俺が見てたのはネットだろうが!!!」


「いえ、ロリやネットは、この世界の人には、わからないかと」


「余計なとこ、きいつかってんじゃねぇ! 大体どこで、そんな情報を仕入れやがった!!!」


「何言ってるんですかぁ。神様の映像にバッチリ映ってましたよ」


「てめぇ、余計なことばかり! げ!!!」



 イフリートは、ふるふると、体を小刻みに揺らし、体全身を青く燃やしていた。


「へぇ。そうなんだぁ。無理矢理こんな姿にされて、ムカついてたけど。ご主人様が望んだんだからと、我慢してたのに」


「いや……あのな」


「この胸がないのも、チビなのも、妙な服なのも、ご主人様と呼ぶのも、全部望んでなかったわけね。へぇ」


「ままて、本当に俺は、心から望んで、君を想像したんだよ」


「本当?」


「ほんとほんと」


「じゃあ。私を何時間イメージして召喚したの???」


「へ? たしかぁ」


 俺はイフリートを、召喚した時の事を思い出していたが。

 勇者パーティーの召喚魔術師だから、最強のイフリートなんだろうなぁと、思った記憶しかなかった。


 つまりイフリートの姿形をイメージした時間はゼロ!


「秒殺でしたよ」


「テメェ! エクリア! 胸と髪見てて、しらねぇだろうが!!!」


「いえ、丁度、川に映っていたので知っています」


「てめぇ。は!」



 さらにイフリートは、燃え上がっていた。


「びょうさつ……」


 やべぇ、下向いてて顔はわからないが。

 膝の上に置いた手の血管がはち切れそうになってやがる! なんとかしないと!


「いやいや、理想の姿だから、時間なんて要らなかっただけだ。テメェ! エクリア! 羽黒くなるぞ!」


「ふ、真実を言うのは聖なるおこない! なので羽は! 黒くならないのですよぉ!!! 多分ですが!!!」


「この! 悪知恵ばかりつけやがって」


「へぇ、羽が白いからエクリアが言う事が正しいんだぁ。ふふ、嘘つきな、ご主人様には、お仕置きが必要よねぇ」


「なにするきだ」



 イフリートは、右拳を握りしめ右腕に青い炎をまとわせた。


「聖なる我、下部しもべ我拳に宿り、眠りから目を覚まし! 我に抗う者にバツを!!! えーと、意味ないし面倒いから以下略!!! ご主人様を喰らい尽くしなさい!!!『青竜拳』」



「うをい! それは痛いじゃなくて死ぬだろうがぁぁぁ!」


「さようなら、ユーリ。短い間でしたが、お世話はやりとげましたよ神様」


「何不吉なこと言ってやがる! エクリア! てか、何離れてんだ!!!」


「いえ、痛いのは嫌なので」


「こんな時だけ動きが早いな! ん? そういや、何も起きないな」


 エクリアを見ていた視線をイフリートに移した。


「何止まってるのよ、青竜ちゃん? ご主人様に遊んでもらいなさいよ」


 イフリートの右拳から放たれた青竜は、Uターンしイフリートの顔の近くで「キュイキュイ」と鳴き首を左右に振ると消滅した。


「青竜ちゃん。そう……ご主人様には、攻撃ができないわけね。ムカつくわね」


 俺には状況は理解できなかったが、死ななくてすみそうだ。


「まぁ落ち着けよ『イフリート』」



 イフリートの足元に魔法陣が現れた。


「あら?」


「イフリートが消えた!」


 俺の頭上から音が聞こえ上を見た。


「魔法陣か? 足? スカート!」


 魔法陣からイフリートが召喚され、俺の顔面を踏み倒した。


「グガハァァァァ。なぜ」


 俺を仰向けに踏み倒したイフリートは、顔から胸に移動し、俺の顔を見下ろし小悪魔の様なニタついた顔で笑った。

 かわいい……じゃなぁい!


「へぇ、魔法は使えないけど、踏み付けはできるのねぇ。ふふ、ご主人様に土足は失礼よね」



 イフリートは、ニヤつきながら、裸足になり。


「なにするつもりだ!」


 イフリートは足で俺を踏み潰し始めた。


「この!」

「グガァやめ」

「えいやぁ!」

「どぼべぇ!!」


(いや、けどさっきの青竜よりはマシだよな。靴も脱いでくれたし、死にはしないだろ)


「グガはぁ!!! てぇめぇエクリアまで何してやがる!!!」


「いえ、裸足なら踏んでいいとわかったので、日頃の恨みをですねぇ」


「いいわけねぇだろ!!! 降りろ! ガハ! グオワァァァ!!! 肋が折れるぅぅぅ!!!」



 俺は、20分踏み倒された。


 イフリートは、俺に腰掛け、紅ニーソを履きながら。


「ふふ、こんなとこかしら」

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