森のふくろうサンタさん

宮草はつか

森のふくろうサンタさん

 今日きょうはクリスマスイブです。


 まちではいろとりどりのかりが、まぶしいほどともっています。しろゆきのかぶさった家々いえいえまどをのぞくと、ちいさなこどもたちが、今日きょうにかぎってお行儀ぎょうぎよくして、ひとりでみがきをして、ひとりでパジャマにがえて、ベッドのなかにもぐりこんでいきました。まくらもとには「サンタさんへ」とかれた手紙てがみと、毛糸けいとまれたおおきなくつしたがいてあります。


 まちかりはえることなく、サンタさんをむかえようとしていました。


 まちからとおはなれたもりでも、動物どうぶつのこどもたちが、人間にんげんのこどものようにお行儀ぎょうぎよくして、ねむりについていました。


 よるけ、もりくらになってしまったころ。もみのにとまっていた一羽いちわのふくろうがましました。ふわぁっとおおきなあくびをして、ぼけまなこあしでこすって、うんっとつばさばしました。それから、のうろへいって、プレゼントのはいったふくろあしっかけてってきました。


 灰色はいいろくもにおおわれたそらは、月明つきあかりもありません。闇夜やみよのなか、しろかびあがった綿雪わたゆきが、たえまなくしんしんとっていました。


 ふくろうは、よくがるくびでくるりとあたりを見回みまわしますと、つばさひろげてびたちました。やわらかいはねおとをだすことなく、しずかに暗闇くらやみのなかをんでいきます。


 最初さいしょにやってきたのは、ねずみのおうちです。地面じめんられたあなのなかで、こねずみが寝息ねいきてていました。あなまえりたったふくろうは、あしっかけていたふくろからどんぐりをひとつりだし、あなぐちにそっといてやりました。


 つぎにやってきたのは、きつねのおうちです。洞穴ほらあなのなかで、二匹にひき兄弟きょうだいぎつねがってねむっていました。洞穴ほらあなまえりたったふくろうは、ふくろからたけんだまりをりだし、兄弟きょうだいぎつねのかたわらにそっといてやりました。


 つぎにやってきたのは、ことりのおうちです。まつえだのうえで、八羽はちわのことりたちがせあってねむりについていました。となりのえだりたったふくろうは、ふくろからかいがらでできた首飾くびかざりを八個はっことりだし、ちかくのえだにそれぞれっかけてやりました。


 そうしてふくろうは、もりまわり、動物どうぶつのこどもたちにプレゼントをくばっていきました。


 あさになりました。


 まちでは、こどもたちのよろここえひびいています。


 もりでも、動物どうぶつのこどもたちがまし、ゆきのなかへころげだして、はしゃいでいました。


「みてみて、サンタさん、ぼくにどんぐりをくれたよ」


 どんぐりをもらったこねずみは、ひげをひくひくうごかしながらいいました。


「どんぐりなんて、べたらすぐなくなっちゃうじゃないか」

「おいらたちは、まりをもらったよ。これならずうっとあそべるよ」


 たけでできたまりをもらったこぎつねたちは、ゆきのうえをねながらいいました。


「あたしたちは、首飾くびかざりをもらったわ。どう、きれいでしょう」


 かいがらの首飾くびかざりをもらったことりたちは、さっそくくびかざりをつけていいました。


「サンタさん、ありがとう」


 動物どうぶつのこどもたちは、それぞれのプレゼントをもちながらそらにむかっておれいをいいました。


 もみのうえでは、ふくろうがじてねむっていました。動物どうぶつのこどもたちのこえこえているのか、いないのか。なにもらないかおをして、ゆったり寝息ねいきをたてていました。


 クリスマスのよるがきました。


 ふくろうはましました。ふわぁっとおおきなあくびをして、ぼけまなこあしでこすって、うんっとつばさばしました。そのとき、つばさのさきに、こつんっとなにかがあたりました。


「おや、なんだろう」


 ふくろうはそういって、つばさにあたったものをたしかめてみました。それは、もみののてっぺんにのせられた金色きんいろかがやほしかたちをしたいしでした。不思議ふしぎいしはキラキラとひかって、もりをやさしくつつみこんでいました。


 メリークリスマス。まちに、もりに、すてきな一日いちにちおとずれますように。




   《おしまい》

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