第3話 離婚された侯爵夫人は語る(3)
「ねえ貴方、あの双子を私達の養子にはできないのかしら」
「何を突然」
「だって、私達には子供ができないだろうし…… 親戚筋からいただくより、もっと血が近いのではなくって?」
「本人がそれは嫌だと言っているんだ。侯爵家を継がせるのは嫌だ、自分で育てるとね。あれは充分絵でやっていけている。僕等が口を出すことじゃないよ」
そうでしょうか。
だって、子供には両親が揃っていたほうがいいに決まってます。
今は大丈夫と言っていても、大きくなったらどうでしょう?
でも夫も義母も「馬鹿げたことを」と相手にしてくれません。
でも、子供達自身がそう思ったらどうでしょう?
だから私は遊びに行くごとにこっそり、子供達と遊びながら、こう小声でつぶやいたりしました。
「おばちゃまはね、実はあなたたちのママなのよ」
何のことを言っているんだ? と目をぱちくりさせる姿もとても可愛らしいです。
ぶくぶくした手も、男の子女の子と違っても、やっぱりよく似ている二人の姿は、私の胸をときめかせてくれます。
「おばちゃまのこと好き?」
子供達はすき、と言ってくれます。
嬉しいわ、おばちゃまも大好きよ、と抱きしめて振り回したりすればする程、離したくない、という思いにかられます。
そして再び夫に頼んでみました。
今度はあの子達が欲しいんだ、ということを全面に出して。
「子供が欲しいのなら、それこそもっと子供の多い親戚筋で、生まれたばかりの子をもらった方がいいよ」
「他じゃ駄目なの、あの子達がいいの」
私はその時、初めて夫の前で大声を出してしまいました。
「君は、妹から子供を引き剥がそうとしたいのかい?」
「そうじゃないわ。でも母親だけで育てるなんて、どっかで絶対おかしくなるわ」
そこで夫の視線がやや厳しくなりました。
「そもそもあのひとは勝手すぎるのよ。自分流に育てるって、そんなことばかりしていたら、侯爵家の血の入った子供が、あの集まってくるひとたちからも、悪い影響を受けるわ。いつかあの子達が育って、社交界に出るようになった時、責任がとれるっていうの?」
「それは君の考えるべきことじゃない。君は母親じゃない」
「だから母親になりたいって言っているじゃないの」
「……どっちにしても、そのうち『エレネージュ』はアトリエを王都に移すと言っていたから、君がどうこう言っても無駄なことになるよ」
「何ですって、だったらなおさら」
夫はこの話はよそう、とその日はそのまま眠ってしまいました。
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