1章 10話 いざ、聖剣の間へ(神々の双璧)05
「着いたよ、勇者様。本当は一緒にこのままゴールしたかったんだ。
でもこれ以上手伝うとロザリナ姫達に見つかる恐れがあるから無理なんだ」
「その気持ちだけで僕は十分に嬉しいよ」
たくさんの霧に覆われて姿をはっきりと見えなかった神々の双璧。
だが頂上が近づいてくるにつれて明確に大きくイルバーナのお城が見える。
「ここから先は胸を張って俺の1人の力で神々の双璧を踏破してやったぜ。
楽勝ヤッホーの設定でロザリナ姫達に向かって
是非ともまた1人コントして下さいね」
「だから僕の前世も現世もお笑い芸人じゃないって」
「あはは、そのツッコミいやその意気ですよ。
聖剣を振るいまくって悪の魔王何かぶっ飛ばしてやって下さいね、勇者様」
「ああ、僕に任してくれ。ここまで運んでくれてあり……」
「またね、勇者様っ。お食事楽しみにしていてね」
早々と妖精さんは元気よく手を振って空高く
イルバーナのお城へと消えていく。
「もう行っちゃったのか? その小さな体でありがとうな、妖精さん。
さてもう踏ん張りするか?」
妖精さんとの思い出に浸る間もなく、
僕は魔王を倒す切り札である聖剣の間を目指す。
そもそも神々の双璧は聖剣を抜くために僕に与えられた試練でもあるんだ。
ほとんど裏技を使ったけどあのツンデレな妖精さんの
優しい行為のためにも頑張らないと。
「はぁ、はぁはぁ」
2、30分高低差を歩いた頃だろうか?
イルバーナの城門前に無数のヒト影が大地が見えてくる。
僕の到着をまちびれてみんな外で待っていてくれていたんじゃ?
「ひっーーく、勇者殿ぉーー」
この距離でもアルコール臭い。
このフォルクスって妖精本当に信頼できるのかな?
「だからフォルクス殿、あれ程お酒はまだ早いだと」
「止めるでないぞ、アレンティン。
ワシはどんな試練が待ち受けようとも勇者殿の元へ行くんじゃ~」
じゃあ、さっさと酒なんか飲んでないで迎えにこいよフォルクス。
いや、いや今の訂正。
僕と妖精さんとの時間に割り込まないで末永くここで隠居していて下さいな。
「待ちわびましたぞ、勇者殿ぉーーー」
フォルクスが千鳥足で僕にもたれ掛かってくる。
その醜態を止めるためにアレンティンがフォルクスの肩を強引に掴む。
そしてその一部始終をおかずに遠くでティーカップ片手に
笑っているロザリナ姫。
どいつもこいつも僕と妖精さんの苦労も知らないで優雅にくつろいで……。
「随分と時間が掛かりましたね、勇者様。待ちくたびれましたよ。
監視役のスフレがまたいらない悪さをしたのでしょうか?」
「……特に何もしていないけど」
あの妖精さんは実は僕の監視役だったんだ。
それにしても妖精さんの名前はスフレっていうのか? 可愛い名だ。
「あやつはろくに仕事もなしで我々の頭上を飛び越えて行ったんじゃ。
死刑、死刑じゃ」
いったいどの口が言っているだ、このクソ爺。
「ロザリナ姫。私は死刑はやり過ぎだと思いますが勇者様の誘導の遅さ
そして今回の途中仕事放棄は今後の指揮に大きく関わる恐れがあります。
兵士達の見せしめのためにも何かスフレに罰を与えた方が
宜しいかと思います」
「フォルクス様にアレンティンまで申しているならスフレに何か罰を考えた方が
良いかもしれませんね」
何が遅いだ。
そりゃあ僕は無力でスフレに頼ってばっかりで何もしていないけどな。
口に出来ないけどスフレはこんなお荷物を抱えて、
必死に寒い空を飛んでくれていたんだよ。
アレンティンにロザリナ姫まで全てがスフレの敵なんだ。
こんな嫌な光景は前世で見覚えすぎて反吐がする。
スフレに罰を与えないためにも何か良い方法がないのか?
僕は孔明が好きなんだろう? なら起死回生の知恵はないのか?
下策でもいい。スフレを助ける方法は他にないのか?
「ワシと一緒で勇者殿も死刑派ですかな?
あなたの意見なら公開死刑いやもっとスフレに拷問していたぶることも
出来るかもしれませんぞ。その時はワシもご一緒に
ふぉふぉふぉお供しますぞ」
「フォルクス様。それはさすがに国民の支持が下がりますぞ」
そうだ、僕は勇者様。世界を救う勇者様はロザリナ姫よりも
上になるなり得る存在なんだ。
自らの立場を利用するのは先生みたいで抵抗があって嫌だけど仕方ない。
これも僕を助けてくれたスフレを救うための勇者の仕事なんだ。
「アレンティンも真面目なヤツじゃのう。
本当はお主もスフレの泣き叫ぶ姿が見たいんじゃろうて」
「いや別に私は……」
「フォルクス様、アレンティン。
わたくしの前でもうそんな野蛮な話はやめて下さい。
拷問は余りにも酷すぎます。スフレにはおやつ抜きが何よりも
一番効くと思います」
ロザリナ姫も一刻の主、いや妖精全てがきっと彼女の可愛い子供なんだ。
僕の家庭は違ったけど誰も苦しんでいる我が子の姿なんて
望んで見たくはないんだ。
「スフレの到着が遅れたのは全て僕のせいなんだ」
これは穴がし間違ってはいない。
もっと僕に力があればスフレが責められることもなかったんだ。
「僕がスフレの魅力に負けて愛の告白して、微妙な空気になったんだ。
きっとロザリナ姫達に挨拶し忘れたのも僕と一緒にいる所を見られるのが
恥ずかしくなって飛んでいったんだと思う」
一方通行の僕の片思いならスフレにも迷惑は余り掛からない。
それにロザリナ姫も女の子。
ましては妖精はこんな恋愛の話は大好物だろうと思うし。
「……まぁ、大胆ですこと?」
「ワシが思っていたよりも勇者殿は獣ですな?」
「……まだ子供と思っていたスフレにあんなことやこんなことまで
やらせるなんて。鬼畜極まりないですぞ、勇者様」
まんまと見事にエサに釣られたけど解釈が斜め上過ぎの効力て
怖いぐらいだ。
マスコミに狙われたタレントの気分でもう何がなんだか分からない。
「あなた達が想像している変な行為は僕は絶対にしてませんからね。
それよりも早く聖剣の間に行きましょう。
この右腕がうずいてしょうがないのです」
あれだけ時間が経ったのにまだ右腕がチクチクと痛むなんて。
これはまた左手メインの生活の始まりの合図なのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます