1章 11話 いざ、聖剣の間へ01

聖剣を使って勇者様が魔王を倒したって

語り継がれる妖精国イルバーナの伝説。

聖剣の間に入れるのはたった1人の神に認められた異世界からの勇者のみ。

手に汗握る期待と不安を胸膨らませて僕は古き扉の前に立つ。


「本当にこの場所が聖剣の間なのか?」


自然剥き出しのイルバーナとは場違いなぐらい聖剣の間は

異質な畳のある空間で。

障子から間接に闇を照らす光がまた不気味な感じを漂わせていた。

そして土壁に掛け軸が飾られ、中央には木造の棚には想像していた

西洋の剣じゃなく、刃が反り返った刀が祭られてあった。

左右を囲む障子を豪快に開けば庭に盆栽やししおどしがあっても

おかしくない古き時代の和を感じるのだが……。


「紛うことなき、この場所は聖剣の間でございますぞ勇者殿って。

 押す出ない、押す出ないぞロザリナ姫」


「わたくしだって見たいものは、見たいんです」


障子に映り込むロザリナ姫達の影が全てを台無しにしていた。

思い返してみれば聖剣の間に入る瞬間から

ロザリナ姫達の様子が変だったんだ。

聖剣解除の儀式であるロザリナ姫の美しい舞は文句なしで最高だったのに。

舞が終わった途端、神々の双璧の再来のように

ロザリナ姫達は空高くに消えていく。

聖剣の間の扉を開くと毒ガスで噴出して

みんな死んでしまうんじゃないかってぐらいみんな機敏でまとまっていて、

また完全にボッチになるのかって思ってしまった。

しかし聖剣を守るための大きな扉に意味はあったんだろうか?

障子の和紙など指を突っ込むだけで簡単に穴が開きそうなのに。

いや深く考えるな、この異世界にツッコミを入れたら多分負けだぞ。


「……何て綺麗な顔なんだ」


決して僕はナルシストじゃないけど刀に映る顔は

形の形良いパーツが集合したいわゆるイケメンってヤツあり、


「僕はこの世で最も強くそして美しい」


日本人離れした金髪で青い瞳をした幼き少年の姿に見事変身していた。

ボロボロの服など抜き捨てて、つい僕は自分自身に魅了されてしまう。

あの死ぬ直前で見たスポットライトの光は夢じゃなかったんだ。

さすがに美少女って訳にはいかなかったけど

美少年でもお釣りがくるぐらい嬉しい。


「みんな聞こえているか?」


篠染最高! 篠染最高! 篠染最高!


「きっと届いているよね。魔王なんてくだらねぇ!

 それよりも僕の歌を聞けぇぇっー……ひゃっほーーーーー篠染最高!!」


「見て下され、ロザリナ姫。急に勇者殿がストリップショーを始めましたぞ」


「まあ、何て破廉恥な?」


「ひょっとしてあれは自らの肉体と聖剣を融合してマスターベーションを

 高めている自慰行為かもしれませんぞ」


「それって露出狂いやただ変質者のなのでは?」


「うるさいぞ、外野ども。僕は聖剣萌えの変態じゃないぞって!?」


はぁ? いったい僕は何をやっていたんだ?

どうして全裸で刀を見つめているんだ。

急になんだか寒くなってきた。乳首も下半身も丸出しで、超恥ずかしい。

すかさず僕は畳に落ちてた服を拾い、そして着る。

魅了してヒトを全裸にする力がこの幼刀の呪いの力なのか?

ってまさか……な?

でもこの一件無駄な行為のおかげで程よく体がに温まってきた。

準備運動のヌードモデルはここまでにして、


「……あれ、おかしいな。全然持ち上がらない」


刀ってそんな重い武器だっけ。

こんなに薄い刃なのに左手で力一杯持ち上げてもビクともしない。


「動け、動けよ」


ムキになって足を大の字に開く。

そして全体重をかけて腰を中心にして力を入れるのだが、


「うなくそーーーー動け、動けよ、動けって」


いたずらして誰かが瞬間接着剤で固めたんじゃないかってぐらい

刀は数ミリも動かない。


「いったい今度は何があったんじゃ勇者殿」


まさか、僕を驚かせるためのフェイクの刀?

いやそもそもこんな手薄な警備なら魔王の配下に直ぐに

強奪されるんじゃないかのか?

お目当ての聖剣は実は掛け軸の裏に隠されているとか?

ない、ない、ない。何処にもない。スフレに魔王を倒すって約束したのに。

僕が神々の双璧をずるして登ったのがいけなかったのか?

欠陥品の中古僕は召喚されたのがそもそもの違いだったのか?


「この聖剣の間にはきっと本物の聖剣がなかったんだ。

 真の聖剣は何処かの洞窟の奥に眠る石山に刺さっていて……」


「もし仮に洞窟に聖剣があるなら確実に湿度で

 その聖剣は錆びていると思うんじゃが?」


どうしてこんな時だけ現実的にリアルな反応なんだよ?


「それは聖剣の帯びたる魔力で刃が錆びないとか……」


「お母様が命を削ってまで大事に聖剣を守ってきたのに。

 勇者様はそんなにその聖剣が偽物だっておっしゃい……きゃああっ!?」


怒涛のごとく障子と一緒にロザリナ姫が倒れてきて、


「姫っーーーー!」


「ロザリナ姫! お怪我はありませんか?」


どうやら妖精の世界でもパンツは存在していたみたい。

純白のパンツでフチがモンシロチョウを

意識してデザインしているみたいな感じで。

ロザリナ姫のお尻を筆頭に松明を持ったフォルクスを初めアレンティン達と

ばったりと鉢合せするのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る