第3話
「そうですぞ、ガライン様!我らは誠心誠意国王陛下に仕えてきたにも関わらず、我らの忠誠を裏切ったのは国王夫妻、貴方達ではありませんか!」
「その通りです!いつか目を覚まされると思い今日まで仕えてまいりましたが、それもここまで。この売女に何を吹き込まれたか知りませんが国を滅ぼす者を玉座には座らせておけません!」
マリアナに続いて二人の家臣が国王夫妻を、そしてセーラを責め立てる。
触発されたようにパーティーに参加していた貴族達からも声が上がり始め、それは大きく広がりやがてこの場を埋め尽くすほどとなった。
彼らの言葉と反応に国王は深く深呼吸すると小さく呟いた。
「……そうか。相容れぬか……」
その呟きは傍に居た妃の耳すら届かないほどであった。
「静粛に!」
場を収めるためにガラインが声を出せば、騒いでいた貴族達は口を噤んだ。
「……父上、母上、申し開きがあれば聞きましょう。しかしこの場に貴方達の味方は誰一人居ない、助けなど期待されないでください」
ガラインの問に国王は悲しげな視線を我が子に向ける。
「……我が息子、ガラインよ。今一度問う。本当に、我らの行いが国を滅ぼすことに見えたか?もうすぐこの国は厄災に見舞われる。我らはそれを理解し国民を救うために奔走してきた。我等を追放すればそれに対抗する力もなくなり、国は滅亡してしまうのだ」
「何を……父上、一体何を仰っているのです?」
自分の罪を認めないばかりかこの国が厄災で滅びるのを防ぐ為にセーラの我儘を許してきたという。
訳が分からなかった。
厄災など来るわけがない。
なにせこの国は大陸で一二を争うほど豊かで国民も多く、気候も安定している。隣国との仲も良好で大きな戦争など何百年も起きていない。
災害も少なく噴火を心配するような山もないし、海辺に位置してはいるが津波や豪雨などの被害にあったこともない平和な国だ。
「何を根拠に厄災が来ると仰るのですか」
国王の言葉にガラインだけでなく、マリアナな他の者達も目を瞬かせいる。
「……奇病だ。死してなお、屍となっても死ぬこともできず動き続け他者を襲う。襲われたものも感染し一気に広がる……そんな奇病が厄災として訪れる」
「そんなこと……」
ない、と否定しかけたガラインだがそうも言い切れない。
奇病の類は昔から度々問題視されてきた。
時には感染が拡大し、多くの人が亡くなったこともあった。
しかし死して屍となってまで動くなど、まるで冒険物語に出てくるアンデッドのようではないか。
国王の言葉に数人の貴族が息を呑んだ。
「そのような奇病、他国からも報告は上がっておりませぬ!何を根拠に厄災だと仰るのか!」
国王に一番長く仕えた家臣が問いかける。
「まだ報告は上がってはおらぬだろうよ、なにせ奇病が広がるのは今日からだ。十数年前、そこにいる公爵令嬢セーラより打ち明けられた」
人々の視線が微動だにしないセーラに一気に集中した。
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