第2話
断罪の日。
「皆にどうしても打ち明けなければいけないことがある!どうか聞いてほしい!」
ガラインが声を張り上げたのは成人式後のパーティーが始まってすぐだ。
国王の挨拶の後、自分が挨拶をする時に思い切って声を上げた。
ガラインの隣には彼を応援するようにマリアナが寄り添い、手を握っている。
彼が婚約者であるセーラでなく、マリアナを連れ立って現れたことで集まった貴族達は彼らとセーラに注目していた。
それは決してセーラを心配したものではない。
社交界にとんでもないスキャンダルが投下されることを楽しみにしてのものだ。
注目の的であるセーラはパーティーホールの中央にいるが、扇で口元を隠したまま真っ直ぐにガラインを見つめていた。
動揺しているのか、悲しんでいるのか、憤っているのか全くわからない。
今日、このパーティーに彼女の両親である公爵夫妻はおろか公爵家の人間は一切参加していなかった。
パーティーの直前で体調を崩してしまったという。
断罪される側である国王夫妻以外は、この場に参加している家臣、貴族、警備の兵士達、使用人に至るまですべてがガラインの味方であった。
それを知る由もないセーラはまっすぐにガラインを見つめている。
その視線を受けながらガラインは声高々に国王夫妻と婚約者の断罪劇を始めた。
「私はここに、我が両親と婚約者セーラの罪を暴き断罪することを宣言する!」
ぴく、とセーラの肩が揺れた。
「……どういうことだ、ガライン」
重々しい声色で国王が問う。
ガラインは隣に立つ両親へと向き直った。
彼らの表情は動いていないが、内心は驚愕していることだろう。
「聞いた通りですよ、父上。貴方は……いえ、母上もセーラも含めた貴方達は国家予算を私物化した。それだけではない、献身的に仕えてくれた家臣達を理不尽な理由で解雇し追放してきた事も罪だ!国民を家臣を、なんだと思っているのですか!貴方達の様な暴君がいてはこの国は滅びてしまう!……だから、っ……私は貴方達を断罪しこの国から追放するのです!」
両親への情からつい言葉が途切れ、涙ぐんでしまったガラインの手をマリアナがぎゅっと握る。
その感触に勇気付けられながらガラインは兵士達に国王夫妻とセーラを拘束させた。
不思議だったのは彼らが一切抵抗しなかった事だ。
ただ国王だけは静かにガラインに問う。
「……ガラインよ。我らがしてきたことはお前の目には、本当に国を滅ぼすようなことに見えるのか?」
まるでこちらの方が悪であり、善は自分達にあるというような言い回しにガラインの心が揺れる。
「だ、騙されてはなりませんガライン様!心苦しくともこれは国のため!国民のためなのです!……お辛くともこの道は避けられませんわ!」
ガラインを叱咤するようにマリアナが声を上げた。
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