いっすんぼうし

レイド

〜いっすんぼうし〜

昔、ある所にお爺さんとお婆さんが住んでいました。この両親、昔から子宝に恵まれぬと言うか……何をやっても旨くいかない駄目駄目な夫婦でした。

何故駄目駄目なのかと言いますと、お爺さんは花札にはまり、一千万も大損をしてしまい、婆さんは博打にハマリ、借金をい~っぱい作っていたからです。それを見た他の家の人々は、「馬鹿夫婦」と言っていて、その馬鹿夫婦を助ける事は、全くしませんでした。

そんなある日、お婆さんが洗濯機を買うお金がないので、洗濯物を洗いに川に洗いに行くと、川の上流の方から、小さいお椀に乗った小さな男の子が川を渡って来ました


「おお!?何じゃあれは!?」


お婆さんは、その小さい男の子を川から拾い上げると、こう言いました


「川から子供が流れてくるとは、不思議な事じゃの」


お婆さんがそう言うと、小さな男の子はこう言いました

「おい婆! 貴様のキタネエ面なんか見たくないんだよ! とっとと失せろ!クソ婆!」

何と、小さな男の子は、不良でした。いや不良と言うより悪餓鬼です。


「何と口の悪い子供じゃ! 許さん! お仕置きしてやるわい!」


「はん、婆に何が出来るってんだ、やってみろ!」


男の子がそう言うと、お婆さんはニタリと笑ってこう言いました。


「ほ~? そんな口が叩いていられるのじゃな? じゃあ、お前を見世物小屋に売り捌いて

芸を仕込ませてやるが、それでいいんじゃな? お前なら高値で売れそうじゃな? 奇怪な生物じゃしの~」


お婆さんが、そう言うと男の子は見る見る顔つきが変わって、こう言いました


「ごめんなさい、お婆様……それだけは勘弁して下さいませ」


「素直でよろしい、ふむ……このまま家に持って帰るわい、ワシから逃げようと思っても無駄じゃぞ? 解かったな?」


「……はい、お婆様について行く事にします」


こうして、お婆さんは、小さい子供を家に持ち帰る事にしました。

お婆さんと小さな小人が、家に着くと、お婆さんの帰りをお爺さんが待っていました。


「やあ婆さんや、お帰りなさいじゃ、ん? そのちいさき子供は何じゃ? もしかして、他所からばくってきたのじゃな?」


お爺さんは、いきなりさらっと物騒な事を言いました。 それを聞いたお婆さんはこう言いました。


「他所からじゃないよ、川から拾ったんじゃ」


「そうか、じゃあ他人の物ではないのじゃな、安心したわい、いつ請求書が来るか、解かったもんじゃないじゃからな? ワシらは借金まみれで、払えるもんも払えんからのう」


「なんか……俺って、物扱いか……」


男の子は、そうつぶやいていました。


「あ、そうそうこの子に名前をつけてやるのじゃが、何にするかの?」


「そうじゃな、グレートタイガーマトリックスなんてどうじゃ? かっこいいじゃろ?」


「その名前は嫌だ……と言うか……センスがわからん」


「じゃあ、お前は何がいいんじゃ?」


「俺は……一寸法師でいい……」


「ん~? グレートタイガーマトリックスの方が、かっこいいのじゃがな……」


「爺さんの言う事は、時々おかしいからの~気にしないでおくれ、その名前で、ワシはいいと思うぞ? 爺さんもOkじゃろ?」


「ん~しょうがないの、その名前で良いのじゃ」


こうして、男の子の名前は一寸法師と決まりました。

そんなある日、町で鬼が暴れているという情報が入りました。

何でも超ビューティホーな姫を頂きたいたい為に、暴れていると言うのです。

それを聞いたお爺さんとお婆さんは、一寸法師にこう言いました。


「一寸法師、町で鬼が暴れているのじゃ」


「ふ~ん、それで?」


「お前がその鬼を退治してくるのじゃ」


「は? 何で、やだよ!」


「つべこべ言わずとっとと言ってくるのじゃ! 鬼に勝ったら、優雅に暮らせるのじゃ! だからワシらの将来の為に、行ってくれ!」


「将来って……高齢のくせに何言ってんだよ……もう長くないだろ? お前ら」


「やっぱり見世物小屋に売り捌くかの~?爺さんや」


「おお、それはいいかもじゃ、早速交渉に行くとするかの?  なるべく高額で買い取ってくれるように、交渉するのじゃ」


「わ~やりますやります、お爺様お婆様、では行って来ます!」


「解かればよろしい、行っておいで」


「ちゃんと勝つのじゃぞ!」


そう言って、一寸法師を見送りました。


「しょうがねえな、行くか……」


そう呟いて一寸法師は、町へと行くのでした。

町に着くと、派手な赤色をした鬼が「娘は何所じゃ~!」と言いながら、町中を壊していました。


「おいおい……あの鬼と戦えってか? 冗談じゃないぜ、勝てっこないし」


一寸法師はそう言いました。それもその筈です、だって……一寸法師は、名前の通り、一寸しか無く、鬼は二メートル以上+金棒を持っていたからでした。はっきり言って勝算は零に近いです。


「ん~? 何だ貴様は? えらく小さいごまつぶ見たいな餓鬼だな?」


「ごまつぶだと……許さん!」


一寸法師は、その言葉を聴いて怒りました。そして鬼に襲い掛かりました。


「馬鹿か! この俺様に勝てる筈がないだろ! 金棒一振りで地平線の彼方まで吹っ飛ばしてやるわ!」


鬼は、一寸法師に攻撃して来ました。


「甘い!」


一寸法師は、それを難無く避けました、というか鬼にとっては、小さいので当てづらかったのです。

鬼は金棒を振り回しましたが、一寸法師に全く当たらず、時間だけが過ぎていくのでした。


「はあ、はあ……すばしっこいやつめ!」


「食らえ!必殺目潰し!」


一寸法師は、小さい体を利用して、鬼の目にキックをぶちかましました。

これには、鬼もたまりません。


「く、前が見えん! おのれ~!」


鬼は、目が見えなくて走り回り、そして壁に激突して倒れました、はっきり言って自滅です。


「どうだ!一寸法師の勝利だ!は~っはっはっは!」


トドメを刺したのは、壁なんですけど、一寸法師は、それを自分の手柄にする事にしました。

まあそれは置いといて、鬼は、大きい小槌を持っていました 。


「何だこれ?」


「そ、それは、打ち出の小槌! 貴方が鬼をやっつけてくれたのですか?」


一寸法師に話しかけたのは、綺麗なお姫様でした。

今まで何所に隠れていたのか、全く解らなかったのですが、鬼が倒れたとたん、一寸法師の目の前に現れて、そう言っています。


「打出の小槌って?」


「これは、相手の願いを叶えると言う小槌なんです。鬼を倒してくれたお礼に、貴方にこれを使わせてあげましょう、貴方は何をお望みですか?」


姫が、そう答えると、一寸法師は、はっきりと言いました。


「じゃあ、婆と爺の暗殺を頼む、あいつらは生かしておくと碌な事考えないからな? 早めに始末した方が、世の中にとってはいい事だと思うし、俺の今の体じゃ、爺も婆も倒せそうにないしな?」


「却下です、いくらなんでもその願いは聞き入れません、はい 他の願いも無さそうですね? じゃあ私が勝手に使わせて貰います。全く……なんて物騒な事を考えるのでしょうね? そうですね……貴方は小さいので、人間サイズにしてあげましょう」


そう言って姫は、勝手に打出の小槌を使ったのでした。


「ちょっと待て! 他にも願いがあったんだぞ!」


「問答無用! それ!」


姫は、一寸法師に打ち出の小槌を振りました。

すると、何と言う事でしょう、一寸法師の背が大きくなり、人間と同じサイズになってしまいました。


「はい、願いが叶いました。よかったですね」


「よくないぞ! 他にも願いあったのに! まだ打ち出の小槌は使えるのか!?」


「いいえ? もう使えませんよ? それにしても……よく見ると貴方、かっこいいですね?」


「はい?」


姫は、何故か一寸法師を見て顔を赤らめました、そして


「うん、決めました。私の良人になる人はこの人です! さあ一緒に来てくださいませ!」


「おい、何だよ? 良人って」


「わ・た・しの夫になるって事ですよ? さあ行きましょう! 二人の愛の園へ!!」


「はあああ!???……って、腕つかむな! 何だその力は! 引き剥がせないじゃねーか!!」


こうして、一寸法師とお姫様は、何故か結ばれる事となりました。

一寸法師は何回も姫から逃げ出そうとしたのですが、逃げ出すたびにすぐに捕まり、一寸法師は逃げる事を諦めて、姫と添い遂げる事にしたのでした。

そして、お爺さんとお婆さんには、姫から結納金を受け取り、それで借金を全額返済して、優雅に暮らしたのでしたとさ

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