第347話 パンツァー・フォー

「爆発だ!」

「敵襲か!?」


 火実の放った爆弾による突然の轟音、衝撃、風、そして熱。それらがターゲットである相手の班員たちを酷く動揺させる。

 かろうじて、特撮のスーツアクターなどをしている男だけが他の四人より若干爆発に耐性があり落ち着いていた。が、それでも次の攻撃に備えるだけの経験や技能は持ち合わせておらず…


「っ! 敵―――がっは……!」


 素早く懐に潜り込んできた瀑布川のCQC(近接格闘術)により、あっさり地面へと倒れた。


「いつの間に…おわっ―――」

「いっ―――」

「失礼しますよっと!」


 地面に組み伏せられた仲間を見て反応した二人の候補生を、才洲が分解する。

 肩の少し下のあたりを真横に断ち切ることで、主体となる頭から両手と胴体部を切り離し彼らの自由を奪った。


「このぉっ!」

「おっとと…」


 残った二人の内の一人が泉気銃を才洲に向けて2発ほど発射するも、彼女はそれを身を翻して回避する。

 銃はセーブモードに設定されており殺傷力が抑えられているので、当たっても致命傷にはならない。

 とはいえ、”先端が丸い棒“で突かれるくらいの衝撃は受けるため、才洲は当然受けずにかわした。

 なお、能力カウントの消費はゼロである。


「…くそっ―――」


 銃が当たらないのでナイフに切り替えようとしたその時、男の動きが停止した。


「う……ごけ…ねえ」

「そこまでだ」


 空中から降りてきた火実の射程距離に入った男は静止した。身に着けている防具が一転して拘束具へと変化したせいで、身動きが取れなくなってしまったのである。

 銃はタイミング悪く懐にしまい、この状況を看破できる能力も持っていない。詰みだ。


「う…」

「終わりだね」


 最後に、四人に囲まれ真ん中に居た候補生に皆川が迫る。

 一向に反撃の素振りを見せないことから、見立て通り補助か回復…戦闘能力を持たない術師である可能性が高い。


 無論それを逆手に取って自らの射程距離に誘い込む算段というのもあり得る。

 しかし…


「こっちは終わりました」

「私もです!」

「自分もだ」


 班員がそれぞれ自分の担当した候補生を転送し終えて一同に会したことで、万一の可能性すら消えた。


「………負けだ」


 最後に観念した候補生を送り、駒込班の初陣は全く危なげなく勝利を収めることが出来た。



 ■石神班

 小保方

 佐村河内

 新垣

 野々村

 居村     リタイア










 _______________












「……強いな」

「だね」


 背中に小さいジェット機の翼のようなものを取り付けた二人が、今までの駒込班の戦いの様子を見て感想を漏らした。

 空気を吹き出してホバリングのように対空し、適切な距離をとって見張っていたのだが、ものの数分で駒込班の面々の“前評判”を改めさせられる。

 それは、『初戦は全力で』という駒込班のスタンスが生み出した過剰な情報漏洩であった。


「全然ちげーじゃん、火実とか。ガイダンスの時も思ったけど」

「そうねえ…。で、どうする?」

「どうするって…」


 女の候補生から問いかけられ、男は少し考えるように上を向いた。

 そして…


「チームで奴らを潰す」


 火実たちの動きを見て尚、闘志は漲っていた。


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