第216話 ゲームリスタート

「さぁ、どっからでも―――」


 俺が死者相手にそう話している最中に、ふと首に違和感を覚える。

 硬化しているので手で触ってみても傷一つなかったが、確かに"斬られた感覚"があった。

 さらに、先ほどまで目の前に居た女子高生と思しき死者のひとりが、いつの間にか後ろに居る。

 右手にサバイバルナイフを持ちながら…


 速すぎて見えなかった?能力を使っている様子から、高速移動能力でも使ったのか。

 …いや、いくら高速移動能力と言えど、全く認識できないなんて有り得ない。

 となると彼女の能力は―――


「…っと!」


 一瞬…ナイフ少女の能力に考えを巡らせ他の九人から目を離した隙に、"岩の鎧を纏った"男がタックルをかましてきた。

 俺はそれを躱しつつ、全員から距離をとるため自宅の屋根の上に乗る。


 いけないいけない…

 十人を相手にするのに、ひとりの能力考察で気を取られてたらダメだな。

 こっちから、攻める…!


(卓也さん、手を貸しましょうか?)

(ヘーキヘーキ)


 これくらいの敵圧倒できなくちゃ、西田に俺が成長をしたところを見せられないからな。

 俺は身につけておいたポーチからパチンコ玉を取り出すと、両手に持った。

 まずは西田以外を全員消す…!


「天の川っ!!!」


 俺は一番端の西田に当たらぬよう、死者たちへパチンコ玉の雨を降らせた。

 能力で重さと発射パワーを上げた玉は当たれば手足くらい軽く吹き飛ぶ威力になっている。


「ちっ…」


 ところが玉は敵に当たることなく、壁に阻まれてしまった。

 さっきの鎧男が土の壁を形成しもう一人の青年がそれを金属に変え、即席の防護壁を作り出したのだ。

 つか、意識は無くてもそういう連携は出来んのね。


「おっと!」


 ひとりの男が炎の玉を打ち込んできたのでそれを躱し、壁のあいている部分に向けてパチンコ玉を投げつけるも、やはり阻止されてしまう。

 対して向こうは炎弾を3発4発と撃ち込んでくるので、それを躱すために屋根から降りた。


 すると、今度は目に少し痛みが走る。

 喉の違和感の時と一緒で、またナイフを持った女子が背後に立っていた。


「…鬱陶しいな」


 目にも留まらぬ早業の正体…恐らくあの子は"時を止める能力"を持っている。

 だが発動中は泉気を攻撃に回せないのか、ナイフによる攻撃が関の山だ。

 硬化を解かない限りダメージを受けることは無いだろう。


 しかし気が散るので早めに倒したいというのもある。

 首、そして目と攻撃してきてナイフが通じないのは理解したハズだ。

 そうなると、次に試したいのはここしかないだろう。


「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 俺は大きく口を開けて叫んだ。

 別に超人モード3になるわけでも、尺を稼ごうというわけでもない。

 ただ、弱点となりうる場所を開放しただけだ。

 そして次の瞬間―――


「おぐぉっ…」


 痛みはない。斬られてもいない。

 ただ、口の中に異物感があり少し気持ち悪くなっただけ。

 そしてそれを感じたと同時に後ろに下がり…

 ナイフを持った少女の頭と首を掴むと、そのまま捻るようにして胴体から切り離す。

 直後少女の体が霧散し、ナイフが地面に落ちる金属音が辺りに響いた。

 まずは一人だ…。


「おぉっ…!」


 一人倒したのもつかの間、足元から急にゲートのようなものが現れ中から中年女性が俺の両足を掴まんと手を伸ばしてきた。

 俺は瞬間ジャンプし手を躱すと、両足で女性の頭を挟みそのまま体を捻って首を折る。

 女性はそのままゲートごと消滅した。

 空間移動系能力者だったらしい。

 俺をどこかへ飛ばそうとしたのか、はたまた亜空間に閉じ込めようとしたのか、目的は不明のままになってしまった。


 そしてどうやら防護壁は目くらましの役割も担っていたようだ。

 消える瞬間が分からなかった。


 二人目を処理した俺に、ドスドスと重い足音を立てて鎧男が走ってきている。

 重量と速度により高められたパワーで、そのままタックルをするつもりだろう。


「受けて立つ…!」


 俺は即座に"超人モード"へと変身し、敵へと接近した。

 そして―――


「オラァ!!!!」


 両手を頭上で組み、鎧男に振り下ろす。超パワーによるスレッジハンマーだ。

 俺の攻撃を食らった鎧男は地面にめり込み、岩鎧は砕け、体は先の二人と同様霧散してしまった。

 中々良いガタイだったが、変身した俺の体格の半分にも満たない。

 この形態で、単純なパワー勝負を挑まれて負ける気がしないな。


 さぁ、残りは西田を除いてあと六人だ。


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