第116話 三枚のJOKER
「俺が犯人って…何をワケの分からない事を言っているんだ!?俺はお前を助けに…!」
俺の言葉に明らかに狼狽える男。それもそうだろう。
皆に追われている犯人を助けに来たら、逆に犯人扱いされてしまった可哀想なヤツ。
俯瞰で見たら宗谷弟はそんなふうに見えるのかもしれない。
だが俺は、コイツがそのような善意から来る行動をしていないのは分かっていた。
俺のカミングアウトを起点に、伊坂の能力を使い、美咲の誘導の上で、それでも来ないかもしれない博打の様な作戦。
もしダメだった場合、治療術師としてこの4日間で築いた儚い俺の地位を引き換えに許してもらった上で、伊坂たちの事実の一部を公表し特対の皆に警戒してもらうつもりだった。
『職員の中に真犯人がいるぞ』と伝えお互いを警戒し合うことで、新たな犠牲者を出さずに犯人を追い詰めていく算段だ。
どこまでを打ち明けるかは非常に悩ましく、犯人に対し伊坂たち追跡者の存在を明かす事は正直怖い決断だった。
油断していてくれた方が"危険度"という意味では低いからだ。
しかし今回の作戦を決行する前にこの辺のリスクもちゃんと説明し、それでも『やる』と言ってくれた。
これ以上停滞した状態で居るのはイヤだと、俺の作戦に乗ってくれたのだ。
そして、尻尾を掴んだ。
「清野」
「あいよ」
宗谷弟が話している途中だったが、俺は清野に指示を飛ばす。
すると身を隠していた清野から了解の声が聞こえる。
そして次の瞬間
「うおお!?何だ…くそっ」
何もない空間から水が現れ、いつもの触手を形成していく。
その触手は宗谷弟に絡みつくと、そのまま身動きが取れないよう拘束した。
攻撃に防御に拘束にと、大変汎用性の高い清野の能力だ。
「行くぞ!」
「ああ」
事前の打ち合わせ通り殺さずに確保すると、清野はそのまま宗谷弟を運び移動を始めたので俺もそれに付いて行く。
移動中、俺は和久津と志津香に犯人と思しき人物を『5階で確保した』と伝え、次のフェーズに移行する旨を共有したのだった。
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大勢の職員が居る会場に、突如『ドン!』という音が響いた。
会場の扉が、乱暴に大きな音を立てて開かれたのだ。
非常事態にピリピリしていた中の人間は、一斉に音のする方を向いた。
するとそこには、液体で形成された触手にくるまれた職員が一人、宙にぷかぷかと浮いていたのだった。
異様な光景にみな目を見開いていると、その職員に続いて二人の男が会場に入って来た。
3課の暴れん坊清野誠と、嘱託職員塚田卓也だ。
「お疲れ様です」
「っ!?」
「待ってください!!」
清野と卓也を見た瞬間、扉の近くに居た職員の一部が二人に向けて攻撃をしようと構えた。
ある者は手をかざし、またある者は己のエモノを取り出し。
今にも跳びかからんとする職員を、会場のコントロールをしていた美咲が間一髪で止める。
卓也の自己申告に加えて伊坂の能力を付与し入念に演出したため、会場のヘイトが卓也に集中するのは当然であった。
だがこれから"ネタバラシ"を行うのに一斉に跳びかかられては困るので、美咲は"言葉"で、清野は強烈な"殺気"で動きを制した。
とは言え、一人でも生き急いだ職員が攻撃を始めれば途端に大戦争になりそうなほど危ういバランスで、会場は停止している。
なので卓也は急いで進行を始める事に。
「皆さんお騒がせしてすみません。先ほどは突然のカミングアウトで折角のパーティを台無しにしてしまった事をお許しください」
丁寧に、ゆっくりと、謝罪の言葉を紡いでゆく。
それに対し会場でリアクションを取る人物は居なかった。
皆が彼の次のアクションや、職員を一人宙吊りにしていること、あの清野と一緒に現れた事に対する説明を待っている。
「…さて。先ほどは『私が犯人です』などという発言をしてしまいましたが、一点訂正いたします。本当の犯人は……」
たっぷりと溜めながら、会場の職員の注意をさらに引き付ける。
そして集中が最高に高まったタイミングで、ゆっくりと右手を上げて人差し指をビシっと突き立て、高らかに宣言した。
「そこの彼です。彼こそが警官殺しの真犯人、宗谷修二です」
漫画の中の探偵のように、会場中の全員に分かるよう指定した。
宣言と同時に入り口近くに居た一人の女性職員が能力を発動させていた事には、皆気付いていない。
それほどの急展開。ジェットコースターのような話。そこに誤解の能力が加わり、全員の思考が揺さぶられる。
普段は冷静な職員でさえ、すぐには整頓できないような事態となっていた。
「皆さん、こんなヤツの言葉に耳を傾けないでください!頭がおかしくなっているんですよ!!」
自分に疑いをかけられた宗谷弟は、真っ先に反論する。
当然だ。いくら『自分が犯人です』と名乗った頭のおかしなヤツの指名とはいえ、こうして拘束までされている以上、容疑を否認して周りにいる職員に早く何とかしてもらいたいと思っているのだ。
しかし、周りの反応は宗谷弟が思っているものとは違っていた。
「…え?何ですか?その目は…。まさか皆さん本当にこの男が言うように、僕が犯人だなんて思ってませんよね…!?」
「…」
「はぁ…!?冗談はやめてくださいよ!!なんで黙っているんですか?」
宗谷弟を擁護したり助けようとする者は居なかった。
伊坂が卓也にかかっていた『警官殺しの犯人』という誤解を解除し宗谷弟に付け直したことで、この会場内に100%彼を信じる者が居なくなってしまったのだ。
だがそんな状況に一人動きを見せる者が現れた。
「…修二……」
「兄貴!!」
皆から疑いのまなざしで見られている弟の為、兄である【宗谷
同じく状況が分からず混乱しているが、この場で唯一の肉親である彼は真実を確認せずにはいられなかった。
それを弟はすがるような目で見る。
しかし…
「ホラ…兄貴からも言ってやってくれよ…!俺はやっていないって…!」
「…本当にやってないんだよな…?」
「…は?」
「修二…お前…本当に無実だよな…?」
「兄貴まで、何言ってるんだよ…」
「いや、お前がそんなことするような奴じゃないって分かってる…分かってはいるんだが…頭がどうしても疑ってしまうんだよ…」
「くっ…!うっ…うっ…」
「すまない…修二……!だから俺の目を見て、ハッキリと言ってくれよ…無実だって…」
疑いたくはないが、能力により疑心がぬぐいきれない様子の兄・宗谷彰。
唯一の味方となりうるハズの身内からも疑いの目を向けられ、俯いて嗚咽を漏らし始める弟・宗谷修二。
誰からも見放されてしまい可哀想な男のようになっていたのだが…
「うっ…!くっく…」
「さぁ、修…」
「くっくっくっく…」
「修二…?」
「………………いやぁ…参った参った……"認識の書き換え"かな?恐ろしい能力を持った伏兵が居たものだな、ココには…。私の調べでは特対にそのような能力を持った職員はいなかったハズだが…存在自体を能力で書き換えていたと見るべきか…。そしてこのタイミングでカードを切って来たということは、その能力者の目的も"私の確保"かな…?」
ブツブツと独り言を始める宗谷修二。
「何を…言ってるんだよ…修二」
「猿芝居はもういいのか?」
「…ああ、ブツブツと済まない。もうここから巻き返すのは難しそうだからね。仕方ないから私が出てきたよ」
「…」
先ほどまでの悲痛な叫びをしていた時とは打って変わり、実に落ち着いた態度で卓也と会話をする宗谷修二。
静まり返っていた会場はまたしてもざわつき始め、どうなっているのかと言葉にする職員たち。
しかし卓也はギャラリーを気にせず、ようやくかと待ちくたびれた様子で話を進める。
「お前が1年前の警官殺しの犯人だろ?」
「いかにも…よく分かったね、塚田卓也くん。他のエース級と言われる職員たちは私の存在を全く疑いもしていなかったのに…まさかこんな滅茶苦茶な方法で暴かれることになるとは驚きだよ。どうやら君が私に対してのJOKERだったようだね」
「上手い事言ったつもりか?」
「ははは…。拘束されているから出来ないが、私は今、心の中で君に拍手喝采の気分だ。実に素晴らしいね。本当さ」
「余裕そうじゃねーか。まるで傍観者のようだなオイ…」
白旗を振っているような言葉を口にする宗谷修二だが、態度からは焦りや不安と言ったマイナスの感情はまるで見えておらず、非常に余裕があるようであった。
そしてその事から、卓也もある予感がしていた。
「余裕そうに見えるかい?君こそ誤認能力者に、そこの清野誠にと、私という存在を確信して随分と入念に準備して動いていたように見えるが?部外者がどこで情報を入手したのやら」
「俺の能力で一発だったぜ?お前の悪事なんてな」
「フッ…その態度、その目…敵ながら惚れ惚れするね。自分の情報は渡さず、私からは全て引き出そうという姿勢だ。怖い怖い」
「そりゃ買いかぶり過ぎだ。俺なんてどこにでもいるただの錬金術師だよ」
二人の探り合いが続く。
お互いの仮説をぶつけ合いながら相手の反応を見て、どこまでが正解でどこまでが誤りかを掬い取る作業。
周りの職員は口を挟めず、静かに見守るだけ。
拘束して本人が白状したのなら、あとは取り調べでじっくり聞けばいいだけでは?と思っている者も少なからず居る。
だがすぐにそうしないのは、卓也の中に"ある説"が新たに生まれていたからだった。
「おい修二…何をペラペラと言っているんだよ…!?否定するんじゃなかったのかよ!」
修二と卓也。二人の世界に割って入って来たのは、先ほどまで自分の弟を必死に信じようとしていた兄・宗谷彰だった。
彼は予想外にも自分の犯罪を白状し始めた弟に怒りを覚えている。
だが弟は実にあっけらかんとした態度でそれに応じた。
「ああ、お兄さん。済まないね。もう擁護の必要は無いよ。引っ込んでいてくれたまえ」
「ああ?!弟を庇うのは兄として当ぜ…」
「察しの悪い男だね。君の弟はとっくに死んで、今ここに居るのは私の【死霊術(ネクロマンシー)】で操られているただの死体に過ぎないのだよ」
「え…」
自分の能力をあっさりとネタバラシする宗谷弟…いや彼を操っている術者だった。
卓也も『裏で操っている誰かが居る』という予感はしていたが、まさか宗谷修二がとっくに始末されてそれを死霊術で操っているという所までは読めなかった。
もちろん出まかせを言っている可能性もあったので、確認作業を始める。
「随分と気前よく教えてくれるじゃねーか。ネクロマンサーさんよ」
「言ったろ?私は私の正体を暴いた君を高く評価していると。だからこれらの情報は私からの褒美だと思ってくれ。もちろん嘘かもしれないがね?」
「そうかい。ならこんなことをしている理由も教えてくれるのかい?」
「ああ、いいとも。これは調査と実験なんだよ」
「実験?」
「私の能力で蘇らせた人間は、果たして生前の能力を使えるのか、というね。宗谷修二はたまたまその実験の時に近くに居たに過ぎなかったんだよ…。丁度良いから的にさせてもらった」
「的だと…」
「そう。そして死んだ君の弟は私が蘇らせ、特対の情報を盗み出すために動かした。普段は宗谷修二の人格を付けいつもと変わらぬ日常を過ごさせて、情報収集の時だけは私がこうして直接操っていたのだよ」
「くっ…!」
「生前の人格を付ける事で私のコントロールからは完全に離れるが、誰にもバレずに私の手下を一人特対に潜り込ませることが出来たというワケだ。いつでも切り替えは出来たしね」
自分の情報を得意げに話すネクロマンサー。
真偽はともかく、ここまでで不審な点は見当たらない。
動機がとてつもなく軽く頭には来ているが。
「君が知りたがっているという、1年前の警官殺しも"ある実験"の一環に過ぎなかったのさ。死んだ職員に恨みは無かった。可愛そうな被害者だ」
「俺が知りたいなんて言ったか?」
「……ふふ…まあいい。だがその時、思わぬ誤算があってね。殺しの現場を見られてしまったのだよ。ある女子高生に。最初は通りすがりの能力者のせいにでもしようと思ったのだが、仕方なくその子に罪を被ってもらう事にした。急いで裏の指名手配になるよう手を回し、捜索もさせた。だが今日まで捕まっていない。大したもんだね」
卓也は爆発しそうな怒りを抑え、変わらぬ態度で聞いていた。
「私の見立てでは、今も逃げ続けているその高校生と言うのが君の協力者の一人…認識を書き換える能力に目覚めた子だと思っているのだが、どうかな?」
「どうって…小説家にでもなれとしか言いようがないかな」
「ふっ…私の妄想に過ぎないというワケか。まあ、そんなワケで情報収集と実験の為に宗谷修二に成りすまし潜伏していたところ、あえなく君に暴かれてしまった…というのが全貌だ」
ネクロマンサーは降参だというような態度で話している。
だが卓也はさらに詰め寄る。
「まだだろ?」
「ん?」
「そっちの協力者の情報をまだ聞いていないぞ。その女子高生とやらに罪を着せるのは、一人にしては手際が良すぎだ」
「いやいや、私に協力者は…」
「いいだろ?どうせもう飽きてるんだから」
「………欲張りなヤツだなぁ…」
そう言うと、男は自身を拘束している触手を能力で切り裂き一旦自由の身となる。
拘束から解き放たれ会場の床に着地するが、そこから暴れる様子は無い。
「こいつ…」
「待て、清野」
再度拘束しようと手をかざす清野を卓也が止める。
「済まないね。協力者を呼ぶからさ」
「修二…お前。いつの間に能力を…」
「これかい?これは死人に別の死人の能力を付与する実験の賜物だ。この前はぶった切って悪かったよ。痛かっただろ?」
全く悪びれる様子もなく淡々と告げる。
言葉だけの白々しい謝罪が周りの怒りをさらに増幅させた。
「さて…では協力者を紹介しよう。おいで」
男が手を叩くと、大勢の職員の中から二人の職員が卓也たちの居るぽっかりと空いたスペースに歩みを進めた。
その男女の職員は意識が無く、俯いたままゆっくりと近づいてきたのだった。
協力者だと言われたそのメンツを見て、会場はどよめく。
「一人目の協力者は彼女。一年前に自殺してしまった能力探知能力者の後任として仕事にあたっていた、【如月(きさらぎ) 京子(きょうこ)】さんだ」
和久津の後任として能力者の探知を行っていた3課職員の如月が、ネクロマンサーの協力者であった。
そして同時に、彼女は既に殺されていることも意味している。
「さて、如月さん。今まで本当にありがとう。最後に皆にお別れを言いな」
そう言うと男は指パッチンをする。
「……っ!違います!あたしは協力者なんかじゃありません!!違うんです!!!信じてください!!!あたしはずっと特対でーーー」
意識を取り戻した途端悲痛な叫びで自身の無実を主張する如月だが、言葉の途中でまるで糸が切れたマリオネットのように力なくへたり込む。
そして動かなくなると、肌が青白く変化し始めた。
まるで死人の肌のように…冷たい色に。
近くに居た職員が脈を計っている。
「私の能力が切れると肌ツヤ等は残念ながら死者のソレになってしまうのさ。いきなり腐ったりはしないがね。で、もう一人の協力者は【
もう一人の協力者は郡司と呼ばれる職員だった。
彼はC班班長・衛藤と同期で警察に入職し、特対に移ったのもほぼ同じという縁のある人物だ。
そんな彼がネクロマンサーの指パッチンで意識を取り戻すと、同時に近付いてきた衛藤に最後の挨拶を告げる。
「…矢次郎」
「……突然で済まない壮士…先に逝く」
「ああ。仇は必ず打つからな…」
「そりゃあ…楽しみだ…な…」
如月と同じく力なく倒れ込む郡司と、それを神妙な面持ちで支える衛藤。
その目には怒りの炎が宿っていた。
「二人には、工作など私が動きやすいよう特対を裏からコントロールするのに非常に役に立ってくれたよ。いやぁ、早めに殺しておいて正解だった」
「…他には?」
「ん?」
「この際だから全員出しちまえよ。お仲間を」
「流石にもういないよ。塚田くんの言う通り、ここでの情報収集はとっくに終わって、カモフラージュの手段を得た今、飽き飽きしていたんだ。死体の維持にも泉気は使うしね」
「そうかい」
「それに…
とても愉快そうな目で卓也を見つめる男。
「新しい玩具って…【ハローマイク】にでも行ってきたか?」
「ん?なんだいそれは?」
「…知らないならいいさ。気にするな」
ハローマイクとは20年前までチェーン展開していた玩具店のことである。
当時CM広告などを積極的に打っていた事もありかなりの知名度を誇っていたが、ネット通販の普及などにより経営不振となり現在は全て閉店してしまっている。
卓也はこの店名を知らないという情報を引き出し、ネクロマンサーの年齢にある程度絞り込みをかけた。
もちろん知らない振りをしているという可能性を片隅に置き。
「さて、一番多く体を貸してくれた宗谷修二くんのお兄さんには、少し多めにお別れの時間を設けてあげよう。どうぞ」
そう言うと、一度宗谷修二の体がガクッとうなだれ、そして再度起き上がった。
「兄貴…」
「修二…なのか?」
「悪い兄貴。この前は、殺しかけちまって。できれば償いたいけど、もうお別れみたいだ」
「修二…!」
「親父とお袋にもよろしく言っておいてくれ…」
「絶対に仇は取ってやるからな!!!」
ガシっと肩に手を置く兄。
「それは嬉しいけど、かなりヤバイやつだから。無茶はしないでくれよ。次兄貴に会う時はヨボヨボのおじいさんの姿だと嬉しい」
「じゅうじぃ…!」
涙と鼻水を垂らしながら、言葉にならない言葉を紡ぐ兄。
職員の中で唯一肉親を失った無念が会場中に伝わっている。
思わず肩にかかる手にも力が入っているようだ。
「そろそろ時間切れだ、兄貴…。離れてくれ。ヤツは何をしでかすか分からない…か…ら…」
「修二!!!!」
再度ガクッと力なくうなだれると、また起き上がる。
そして
「おお、すごい顔だ。感動的なお別れだったみたいだね」
「てめぇ…!」
「なるべく綺麗な状態で遺体を保存したいなら、私に手をあげるのはよしたまえよ」
兄の無念など意にも介さず、ネクロマンサーは淡々と告げた。
そして俺に向くと
「さて、塚田くん。今回は君の勝ちだ。おめでとう。私は一旦引き下がるが、またどこかで会うだろう。その時もまた私を楽しませてくれたまえ。特対の諸君は、もう少し頑張ってくれよ。このままじゃ期待外れもいいとこだ」
勝手な事をベラベラと話すネクロマンサーに、卓也が不敵に笑いながら最後の言葉を投げる。
「ひとつ、良いことを教えてやる…」
「おや、なんだい?」
「人の命を弄ぶ奴が行きつく先は、地獄だ」
「ありきたりだね。聞いたことあるよ」
「信じてないようだから、念を押したのさ…」
「……そうか。肝に銘じておくよ。それじゃ」
そう言うと、宗谷修二の体からは完全に力が抜け床に倒れた。
弟の亡骸を抱きしめ泣く宗谷兄の声が、誰も言葉を発せず静まり返った会場に響き渡る。
祝賀会のムードが二転三転し、とんでもない空気となった。
卓也は清野からの依頼を無事完遂し、伊坂と和久津を救うことが出来た。
しかし最後に、新たな脅威と邂逅する事になったのだった。
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