第6話 君のいない世界で私は

 白ちゃんが学校を休むようになったのは、それからだった。


 四日目になり、こんなに続けて休むなんてありえない。


 そう焦る私が耳にした言葉はもっとありえないと思える現実だった。


「桃倉、廊下を走らない!」


「せ、先生、白ちゃんのこと、知ってますか?」


 担任の原田先生ハラセンに怒鳴れてもそんなこと気にもせず、私は無我夢中で先生に詰め寄る。


 頭に激痛が走った。


 その後の先生の言葉はよく覚えていない。


 バカなことを言ってないでそろそろ本気で進路のことを考えろと言われたような気がする。……そんなのどうでもいい。


 気づいたら裏庭に出ていた。


 ここではいつも白ちゃんがスケッチを続けていた場所。


 今はそこに、誰の姿もない。


「ど、どうして……」


 何もかも信じられなくなってしゃがみ込む。


『秋月白夜? 何年生だ?』


 先生も、やっぱりそう言った。


 白ちゃんのクラスメイト同様、彼のことを知らないと言った。


 頭がおかしくなりそうだった。


「ど、どうして……」


 白ちゃんの存在が、誰の中でもまるで存在してなかったように扱われている。


 頭を抱えたら泣けてきた。


「どうして……」


「桃倉さん? まだ授業の時間でしょ?」


 探していた声がきこえた。


 私は涙を必死に堪え、振り返った。


 きっと、この人に話さないといけない気がしたから。


 だから、真っ直ぐに志木先生を見た。

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