8月18日 穴埋め作業完了!
「起きろー!」
驚いて目を開けると、前にイセリナと小型パンダが笑っていたので少し安心した。ここのところ起きると碌な目に遭わないことが多すぎて若干辟易している。素直に起きるのが少し癪に障ったので寝返りを打とうとするも、イセリナが御腹の上に乗って来て身動きが取れない……。
「どけよ」
「起きろ!」
「起きてるわ!」
「どかない!」
ニヤニヤしているイセリナを見て、このまま行くと不毛なやり取りが続きそうだと察し、腕でベッドを押しながら上半身を逃しつつ起き上がる。勝ったと思ったらしく満足したのか人の腹の上からどくイセリナ。
小型パンダは俺がベッドから完全に起き上がるのを待って、両手を上げ抱っこしろのポーズをするので抱えて立ち上がる。ベッドを回収してからイセリナの先導でダンジョンへ向かう。
どうやら俺が倒れている間に皆がダンジョンの修繕を手伝ってくれたようで、ついに五十階まで穴は塞がったという。とりあえずこれでひと段落だなとは思ったが、次の問題をどうやって解決しようかと考えるだけで頭が痛くなる。
五十階で休んでいたヨーダにオルテガさん、勇者一行に挨拶をしてから頭を下げて謝罪すると皆快く許してくれた。黒いプレートアーマーが襲撃して来た件は勇者から聞いたらしい。
変に事実を曲げて伝えてないか心配になったが、どうやら包み隠さず伝えたらしく驚いた。
「どうもあの黒いプレートアーマーはこの辺りを徘徊しているらしいな」
「なにが目的何だかさっぱりわからないので、私の所属する教会でもどう対策を立てて良いかわからないで困っています」
「そういえばマリアに聞きたいんだけど」
俺は再度気を失うきっかけになった人物の話をすると、考え込んでしまう。不思議に思ってガムンとハンナに視線を向ける。二人は首を竦めて何も言わずにマリアが言葉を発するのを待ったので、俺もそれに従い待つことにした。
「あなたの御推察通り、その方は聖職者です。それ以上はお答えできません、申し訳ないのですが」
「問題無いよ。ちょっと気になっただけだから」
「まぁ聞いてわかるように上の人らしいから我慢してくれよな。お前さんが手柄でも立てれば聞けるだろう」
「手柄と言えば君たちこれからどうするの? ダンジョンの修繕は終わったけど」
ハンナにそう問われて今後の予定を話す。するとやはり三人とも難しい顔をして押し黙る。そりゃそうだろうな、なにせモンスターを捕まえるかしてダンジョンに連れて来たいって話なんだから。
「麻酔を使ったりして捕獲してからダンジョンに放り込むのは難しいが出来る。問題はそこからだ」
「そうよね……モンスターが従ってそこに住み着くかは別問題だし」
皆の視線が俺からひっぺがした小型パンダとじゃれ合うイセリナに向く。気付いたが聞いていなかったイセリナは笑って誤魔化し皆溜息を吐いた。
「資金も底を突いたし、ここは依頼でモンスター捕獲のものを選んでやっていくしかないだろう」
「それはこっちとしても願ったりだ。恐らくここから逃げたモンスターたちも付近をうろついているだろうし、依頼もあるだろうから受けて貰ってここにもう一度連れ戻してくれれば助かるよ」
「私たちも明日の朝冒険者ギルドに居るからさ、来たら声かけてよ! 色々教えてあげる」
「助かるよ! あれ、そう言えば皆はどうしてここに?」
気になっていた点を質問してみると深い溜息を吐いた。聞けば冒険者ギルドに皆で依頼を受けようと移動したところ、急に勇者が一人走り出したのでそれを追って来たという。
流石に俺たちのところではないだろうと他所を探していて来るのが遅れたらしい。仲間の意表を突くとは流石勇者。一行は俺と勇者を確保しヨーダたちと共に寝かせ、お詫びに食材を持って来てくれて修繕の手伝いもしてくれたという。
「まぁもう逃れられないほどの縁が出来ちまったわけなんで、これからもよろしく頼むぜ」
「こちらこそ」
ガムンたちと握手を交わし、一旦ダンジョンの外に出て共に食事をしてこの日は解散となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます