8月10日 一階の修復へ
翌朝目が覚めるとヨーダは寝袋状態で上半身を起こし、オルテガさんはバラッと地面になっていた状態から理科室の標本の如く立ち上がった。それを見てベッド起き上がり、小型パンダを抱えてからベッドの足を蹴ってミニチュアにしてポケットにしまう。
二人と三角形を描くように立ち無言のままじゃんけんをする。数十回のあいこの果てにオルテガさんが負けた。声を発さずまだ寝ている小型パンダを高い高いして小さくスキップし、ヨーダは膝を付き拳を握り締め天に向かって声なき声で叫んだ。
オルテガさんは骸骨で目付きがわからないはずだが、恨めしそうな顔をしているように見る。何度も振り返りながらイセリナの部屋へと牛歩しながら向かって行った。
「はざいまーす……」
「おはよう」
「はざいますってなんだ? おはようございますだろうお前」
「はざいまーーーす」
しっかり指摘したヨーダに対し、目を座らせながら近付き再度挨拶っぽい何かをする魔王イセリナさん。寝起きが悪い魔王に関しては適当にスルーするのがいいと学ぶ。
「オルテガさんは?」
「わかんにゃ。扉の前でなんかいてる」
ヨーダが頑張ってこらえてくれている間に目を覚まして貰おうと、地上で購入してきてくれた水をこれまた地上で買って来てくれたタオルにかけてイセリナに渡す。ぼーっと見てからゆっくりと掴み顔を拭いた。
「もったいね」
「なにが?」
「わき水ある」
タオルをだらんとして引き摺りながらイセリナは部屋の方へ歩いて行く。あの部屋見たくないなぁと思いつつも、水は貴重なので覚悟を決めて後に続いた。派手な装飾の扉の前にオルテガさんがバラッとして倒れている。イセリナはそれを気にせず扉を開けたので急いで下がった。
オルテガさんは扉に押され壁際に追いやられたがそれでも起きないのはすごい。個人的に中は見たくないので反対方向を向いていると、暫くして扉が閉まる音がしたので振り返る。
イセリナはL字の棒を手にしてオルテガさんが転がってるあたりの石と石の縦溝に差し込み、ぐいっと強く押し込んでから横へ回し引き抜く。石がごとっと一つ抜けその先には明らかに人工的に作られた丸い筒があり水が出て来た。
「うごっ!?」
オルテガさんにバシャバシャ水があたり目が覚めたのか変形ロボットのように組み上がり立ち上がる。イセリナはオルテガさんを突き飛ばしてどかすとその水で顔を洗い口をゆすいでから飲んだ。俺にもやれというジェスチャーをしたので仕方なくする。
「どういう仕組みなんだこれ」
「お父さんしたからしらな」
この期に及んでまだ目が覚めない魔王様。お父さんすごすぎるな水は全く濁っていないし岩を塞げば水は止まった。これは魔法による仕組みなんじゃないのかと聞いても眠そうな目でうなずくだけで真相は謎のまま。
取り合えず戻ろうとするも、イセリナは歩くのを拒否。オルテガさんと見合い無言でじゃんけんをしたがオルテガさんの勝利。声にならない声で喜びガッツポーズをするオルテガさんをイセリナはまた蹴とばし両手を伸ばして来た。
小型パンダが目を覚まし自分で降りたので仕方なくおんぶをしヨーダのところに戻る。水の話をすると、面倒くさそうに頷き一階へと移動する。地上から下ろしているロープは安物なので階段から移動するぞと言われ、イセリナをおぶりながら歩く。
一階に長い時間かけて移動したが道中誰にも会わず、本当に誰もいなくなったんだなと実感する。イセリナも途中で下りるといい自分の足で歩きながら現実を受け入れているようだった。
一階につくと先ずは残骸を見てまわる。使えるものがあれば流用しようといっていたが、どうやらあの剣は崩壊はさせたが完全に消滅させたわけではないので、天井や床を構成していたものはあちこちにあった。
最初に一階の床の穴を塞ぐべく粘土質の土を少しずつくっつけていき、半日かけて小型パンダを含め五人で終えると、イセリナが炎の魔法を弱めに使い乾燥させ強度を増し残りは明日としてこの日は一階で雑魚寝。
男一人でベッドに寝るわけにもいかず、イセリナと小型パンダに貸して男三人雑魚寝した。
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