第6話

「蒼い〇〇」6


 見たこと無い若者だらけの街を男の後について歩いた。途中で男は銀行に立ち寄っていた。

 辿り着いたのはあの革ジャンの店だった。男はあたしの手を引いて店に入った。


 あたしは店内で緊張して立ち尽くしていると男は店員に何かを聞いて店員が三着位ライダースジャケットを用意していた。

「こっち来てくれ」

男があたしに声を掛けてきた。あたしが近付くと選んでいたジャケットをあたしに着るように言った。あたしは後退った。

「ムリムリ!買えないから!」

「試着はただだよ」

「でも」

「いいからさ」

半分強引にあたしにジャケットを試着させた。

「サイズはこれで良さそうですね」

店員が言った。

 ジャケットは一見堅そうに見えたけど着ると身体に馴染んで柔らかくてとても着やすかった。

「この三つならどれが良い?全部着てみろよ」

「いや、でも」

「気にするな!着てみろよって」

男はニヤニヤしていてその笑顔が可愛く見えた。

 あたしも嬉しくて三着試着してみた。

 シングルの裏地が蒼いやつがしっくりきた。

「店員さんこれで!着ていくからこのままで良いですか?」

「はい、かしこまりました」

「え?だめだよ!無理だよ」

「バイク乗るのにジャケット無いと寒いだろ!俺が風邪引いちゃうから自分の着ろよ」

「だってお金無いよ!」

「金なんて気にするなよ!バイクにも失礼だろ!格好いいバイク乗るんだから格好いいジャケット着ないとだぞ!」

「何その持論!悪いよ!」

「うるさい!」

男はあたしの肩をポンと叩いて笑った。


 あたしと男は同じルイスのジャケットを着て若者の街を歩いた。そしてクレープを食べた。タピオカも飲んだ。パンケーキは並んでる最中に飽きて却下してケバブを食べた。

 あたしはいきなりの出来事に戸惑いながら凄く楽しかった。マーチンのブーツもお揃いで買った。お金は男が出した。あたしは絶対に返すからと言ったけど男は微笑むだけだった。

 バイクに戻り男はタバコを吸っていた。

「ありがとう。本当にありがとう」

「もう一カ所付き合えるか?」

「え?」

「ダメか?」

「大丈夫!」

「よし!高円寺行くよ!」

「高円寺?」

「ジーパン買おう!」

「そんなお金使わしちゃ悪いよ!」

「金が気になるなら説明しておくよ。バイク買おうと貯めてた金があったんだけどな世話になってる人がこのバイクをくれたんだよ。だから、その金をバイクに乗るために自分に投資してるんだよ」

「それならあたしなんかに使っちゃだめだよ」

「アンタが気になっていてさ…その…なんて言うか…笑って欲しいんだよ」

「え」

「五万払うから今日は付き合ってもらえないか?」

あたしはさっき全部出したと思っていた涙がまた溢れ出してきた。

「ごめん…あの公園まで送るよ」

「違うの…なんか…なにから説明して良いか解らなくて…」

「何があったんだ?」

あたしは何も言えなくてでもバイクには跨がった。

 男も乗りエンジンを掛けた。

「高円寺いこ」

「いいのか?」

男の腰に腕を回して頷いた。


つづく

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