第3話
「蒼い〇〇」3
女は食べ終わったアイスの棒を俺に渡して笑っている。
棒には“あたり”と書いてあった。
「当たったね」
「そうだな」
「あたしは行くね!ありがとね!」
「あぁ」
「ホントにありがとね」
「お礼なんていらない」
「ありがと」
女は何度もありがとうを言いながら公園を後にした。
女は笑ってるのに悲しそうに見えた。
ゴミ屋敷みたいな部屋にアタシみたいな女の子が五人ー。
皆何にも喋らない。
アタシも喋らない。
男達が入ってくる。
「汚ぇ部屋だな!てめぇら片付けろよ!」
マサシさんは土足で上がって足元の雑誌や化粧品を足で退かしながら進んでる。
アタシは部屋の隅でじっとする。
一番奥に居る一番美人な人の腕を掴んでしゃがみ込んだ。後に居る男がバッグから注射器を取り出してマサシさんに渡した。
「今日もお前に予約入ってるからよ」
マサシさんはそう言いながら女の腕に注射器を射している。
打たれてる女は無表情で顔色一つ変えないでポンプの中で血液と透明な液体が混ざって自分の中へ入ってくるのをじっと見つめている。
注射器を渡した男が女の手を引いて部屋から連れて行った。
マサシさんは立ち上がり小さな鏡で化粧してた娘とアタシの対角線に居る娘を指差した。
「お前達は撮影あるから支度したら車に乗れ!後は今日は休みだ!部屋片付けておけよ!」
マサシさんは出て行った。
アタシは立ち上がり部屋のゴミをコンビニ弁当の袋へまとめ始めた。
残された他の娘達も自分の周りのゴミをまとめ始めた。
ゴミを拾いながら涙が出てきた。アタシもこのゴミと一緒に袋に入って夢の島に行きたい。カモメに食べられて太平洋の真ん中でフンになって深海へ沈みたい。そしたら目を開けなくてもよくなる。朝は来ないで欲しい。
ゴミの中からアイスピックが出て来た。周りを警戒しながらそれを化粧ポーチに隠し込んだ。
半年前から此処で暮らしている。歌が歌いたくてギターとキャリーバッグ持って新宿に向かった。でも東西線は高田馬場でアタシを降ろした。
つづく
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