第1章 覚醒~脱出 14 脱出
あいつらは連合軍と言うそうですが戻って来る前に逃げないといけません。
「ノルン先生、他の皆さんは?」
「全員遺跡の外に出たよ」
「誰も残らなかったのですね」
「愛する家族が居て居場所がハッキリしている者が選ばれているからね。私は名声で引っ張られたのかな」
「ルイ兄さんとミルと私で水と食べ物は確認したわ」
「ジルと二人で広間の扉が閉まっているのは確認したぜ」
スゥお姉さんとダンお兄さんの報告で出発する事にしました。
「台座に載って下さい」
そうは言っても、マリやネネちゃんは載せてもらうんですが。
もちろん私もね。
結晶の中に入ると、みんなも自力で入ってきて心を繋いでいきます。
台座の下の結晶モドキは、私が激情のままに取り込んだ事で台座と一体化していて、台座の力は最初の頃の数倍に上がっています。
大きさは逆に取り込む際に方向性を揃えることで完全に結晶化し、圧縮して台座数枚分にまで成ってます。
台座と一体化して単体の結晶になってますがら、床から柱を飲み込み、その上にまで聳えるまでに成っていて、もはや巨石ではなく巨岩といった大きさですね。
私が使える斥力の《力》も遺跡の周囲にまで拡げて使える様になりました。
みんなの後押しがあれば、もっと色々出来そうですけどね。
遺跡の内外に《視界》を飛ばします。これホントに便利ですよね。
私が想定したように重力子センサーに近いのか、物質の中の構造も手に取るように解ります。
シャントル遺跡とその周りの山の構造に干渉して、遺跡を一纏めにする形で周囲の小高い山に亀裂を入れて元の大地から切り離していきます。
では、出発ですね。
シャントル遺跡が浮島から離れると、浮島は緩やかに高度を下げて行きます。
遺跡は逆に大きく高度を上げそうになりますが、適当な高度で止めます。
シャントル遺跡の有った浮島は、低空上層と中空低層の境位の高度でしたから、中空低層の中程なら連合軍も簡単には近付けないはずです。
このあたりの操作はもう簡単に出来ますね。
さて脱出出来たのですから、どちらに行くか決めませんとね。
でも誰か判るでしょうか?
「すまないが、シャントル遺跡の有った浮島の位置は機密と言う事で教えて貰えなかったのだ」
「あたし達も監禁されて連れてこられたからな、あたし達の浮島が何処に在るのかサッパリだ」
「あたし達帰れないの?
・・・グスッ」
「あっ、いや大丈夫だから。ちゃんと家に帰れるから。なっ」
ミルお姉さんが慌ててネネちゃんを宥めていますね。
「何にせよ、一端追手を撒かないと駄目です。もう捕まりたくはありませんからね」
「その後はどうするんだい?姫様」
「人の住む浮島伝いに、人の沢山集まる浮島に向かいます。
其処で商人たちの繋がりに頼りましょう」
「フム、良い考えだと思うね。
南が王国連合の本拠で、東から北が戦場だから、西に向かうと良いね」
ノルン先生の賛成もあって、その方針に決まりました。
もう少し風の流れの強い高度に遺跡を上げます。
夕暮れになり眼下の雲も増えて来ました。
《視界》を周囲から遠くに飛ばして見ると、日が傾く西には巨大な山脈が南北に連なるのが見えます。
北に嵐の気配が有ります。こちらに近づいて来そうですね。
それまで一休みにしましょうか。
「北から嵐が近づいています。明日の夜遅くになりますが、遺跡を動かせる様にしておかないと駄目だと思います」
「嵐って大丈夫なの?セラちゃん」
「大丈夫ですよ、マリ。逆にあいつらから逃げられる好機です」
「嵐の風に乗って一気に移動しようと言うのだね。悪くないと思うよ」
「でも起きていられるかな?」
「明日はお昼寝を長く取って夜に備えましょうね」
ミルお姉さんの心配はそのとおりですけど、スゥお姉さんの言うように備えておくしかないでしょうね。
「これは圧縮されてくっついているのか?」
ノルン先生が台座の下の結晶モドキだった物を見ながら呟きます。
台座の下に溢れる程有ったのが、圧縮されて台座の下の空間を埋め尽くしています。
柱を取り込んで、台座と一体の結晶に成っていますからね。
「ノルン先生、それは何なのですか?」
「彼等王国連合が作り出したケイバーライトと言う飛行石だね。ブロック状の組み合わせで浮島の巫女でなくても扱えるらしいが、これは一つに纏まっているな。色も変わっている」
ケイバーライトってまさか同胞がいるのか?
ヴェルヌにせよアニメだったにせよ、その名を持ってくるとは。
「どうやって作っているんでしょうか?」
ノルン先生は少し暗い表情で答えてくれました。
「浮島の飛行石を奪って作っているんだ」
───────────────
セラ再起。
方針決定。同胞即ち前世の記憶持ち。
飛行石~ケイバーライト~同胞と連想して、敵の設定が決まってきました。
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