第1章 覚醒~脱出 13 形見

目が覚めると、マリとネネに抱きつかれたまま寝ていました。


「目が覚めたかね。気分はどうかね?」


ノルン先生に答えて体を起こそうとしますが、二人に抱きつかれては起きれませんね。

しかも身動きしたせいか、かえってギュウッと抱き締められました。


「マリ!ネネちゃん!起きて下さい!」


叫んでも起きません。

見かねたダンお兄さんとミルお姉さんが二人を引き剥がしてくれました。

すぐ起きた処を見ると寝た振りで抱きついていましたね。


半日寝ていたようでお腹が空いていますね。

みんなで遅い昼食を食べた後、ノルン先生の診察を受けた処でジル兄が聞いてきました。


「姫さん。あの台座でさ、この遺跡を空に飛ばせられるよな」

「はいっ?」


「逃げるのに遺跡だけなら小さくて浮かせやすいだろ」

「ええっと、はい?」

ジル兄は何を言い出したのでしょう?


その後ルイ兄さんから話を聞きましたが、ここから逃げるのに台座の力を使うこと、水や食べ物を持って行くのに遺跡ごと飛ばした方が便利だろうということになったそうです。


「ええっと、多分できると思います。みんなの力も借りますけど、大丈夫でしょう」


私がそう答えると、みんなの顔が一気に明るく成りました。

まあ、浮島ごと移動するよりずっとマシとは思いますけどね。


ああ、でも、母様の形見が未だ・・・


「どうしたの?セラ」


私が落ち込んで暗くなったのに気が付いたのでしょう、ミルお姉さんが気遣ってくれます。


「母様の形見を取り戻せませんでした。奪った兵士が何処に居るかも判りませんし、仕方無いです」


本当はどうしても取り戻したい。でも無理だと判るから、泣きたいのを我慢しているしかないですね。


私が我慢しているのに気が付いたスゥお姉さんが抱きしめてくれます。

ちょっと泣いても良いですかね。

私の様子を心配するみんなにミルお姉さんが訳を話してくれます。


「どんな物なのかね?」

ノルン先生の質問に、


「ペンダントなの。軽くて硬い金属の板が吊るして有るけど、本当に大事なのはチェーンに通してある指輪の方なの」


私がそう答えると、先生は遺跡の資料らしき物が置いてある長机から、小さな木箱を持ってきて、


「もしかしてこれかな?」


と蓋を開けて聞いてきました。

私は涙が溢れて返事が出来ず、母様の形見をそっと取り出すと胸に抱きしめて嗚咽を漏らしていました。


みんなに抱きしめられて、慰めて貰って落ち着きました。

やっぱり感情を抑えるのは大変ですね。


「ノルン先生、どうしてこれを?」

「指揮官のシェーンガルト少佐が部下から巻き上げたらしくてね、見て気になったので調査に使おうと借りていたのだよ」


「何が気になったのですか?ノルン先生」

「ペンダントの先の金属板の模様が広間の柱の模様に良く似ているのだよ」


スゥお姉さんが先生と話をしていますが、私にとって大事なのは指輪です。

飛行石イーオナイトの成分をかなり含んでいるのが唯一の特徴で、宝石も飾りも無く質素かもしれませんが、父様から母様に贈られ、母様はとても大切にされてました。

表には母様の名前が刻まれ、裏側には母様が自分で父様の名前を刻んだのと言っていました。

凄く硬い指輪なのにどうやったの?と聞いたら父様が好きだから出来たの、と答えられてすごく嬉しかったのを憶えています。


「セラちゃん、巫女姫様の遺品って宝刀や腕輪なんかもあったでしょう?」

「宝石が一杯付いてて飾りもすごいよね」


マリやネネちゃんが聞いてきますが、あんな物どうでもいいです。


「一緒に逃げていたトーラさんが管理してたのですけど、どうなったのかは判りませんね」

「セラちゃん、あっちは大事じゃないの?」


「トーラさんは心配ですけどね」


母様が亡くなられてショックを受け、嘆き悲しんでいたのは知っています。

私の前では気丈に振る舞って、私を慰めてくれていましたけど、夜一人の時はずっと嗚咽を洩らしているのを見てしまいましたからね。

宝物なんかよりトーラさんが無事でいて欲しいですよ。











───────────────




セラ復活。

形見の指輪を取り戻す。

母ソアラは意に染まぬ結婚を嫌って逃亡後、恋人の子供を出産。

指輪は恋人と交わした結婚指輪

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