第1章 覚醒~脱出 15 同胞
「浮島の飛行石を奪うなんて、そんなことをしたら浮島は・・」
「そう低層の小さな浮島は次々と大地に落とされている」
「なんてことを・・・」
ノルン先生の話にみんなはショックを受けていますね。
あのシェーンガルト指揮官の、引き摺り降ろすと言う言葉は事実な訳ですか。
「お兄、私達の浮島は?」
「心配すんな。俺たちのラートラムはでっかい。飛行石だってそうそう奪えやしないって」
ネネちゃんの頭を撫でながらダンお兄さんが安心させています。
「いったい誰がケイバーライトを作ったのですか?」
私はこっちが知りたいですね。
「王国連合の初代の大総統だそうだよ」
「だ、大総統って・・・」
私の同胞で確定ですかね。
私と言う存在が居るのです、同じ様に、向こうの世界の記憶持ちの同胞が居るのが、当たり前でしたね。
それから先生に聞いたのは、二百年以上前の同胞の英雄譚でした。
大陸南東の中規模王国の下級貴族の出身だった彼は、軍人として若くして功績を立て、軍学校に入学。
そこで王太子の知遇を得て、その後ろ立てもあり王太子が父王退位により即位しようとする時には、三十歳の若さで将軍にまで昇進。
そこに起きた第二王子のクーデターが転機となりました。
殺害された王太子の遺児を擁立し、クーデターを鎮圧。
異論を唱える大貴族の反乱も制圧。
機を見て攻め込んできた隣国とは領土割譲で講和。
すぐに王都に取って返し王宮貴族も粛清して全権を掌握。
大元帥と宰相を兼務して、総統と号しました。
大したもんだと思いますけどね、序ノ口なんですよ。
彼は全土に軍学校を開設。
初等科から高等科まで、後には幼年兵制度も作り、規律有る国民正規軍を作り出しました。
更に火薬と銃火器の開発も促進。爆竹や、炮烙が既にあり、形に成るのは早かった様です。
満を持して隣国に侵攻。
奪われた領土を取り返し、相手の首都にまで攻め込み征服してしまいます。
すごいよね。
でもまだまだなの。
征服した隣国でも王家は存続させる事で反発を和らげ、政軍全権は確保して自国と同様に総統と号する。
そして貴族の反乱を潰しつつ、軍学校を開設して、隣国でも自分の軍隊を作り出して準備しました。征服した隣国の上空には大きな浮島が通過する軌道が在ったのです。
数年後、浮島が隣国上空を通過すると大量の気球で軍隊を一気に送り込み征服してしまいます。
浮島の住民を目の前で次々に火炙りにするという苛烈な遣り方で巫女達支配層の心を折ると、浮島の飛行船を命令通りに動かせるようになりました。
余談だけど、この時の浮島征服の司令官が第二代大総統になり、軍の統制を強めて更に周辺国の征服を進め、大総統に恐怖のイメージを付けたとか。
より高く飛べる浮島の飛行船なら、敵国の飛行船や地上の敵軍でも城にでも、矢でも石でも火薬でも投げ放題。
周囲二か国を更に征服。
大陸南東にあった各国の政軍全権を纏めて大総統と号し、王国連合エル=セントリアの成立を宣言しました。
こう話を聞くと英雄譚としか言いようが無いよね。
でも私生活は慎ましく、幼馴染と結婚して三人の子供がいたと伝わっている。
会ってみたかったね。
さてケイバーライトは征服した浮島の遺跡調査で大総統自身が作動方法を見つけた装置で作られるそうです。
普通は機密事項だと思いますけど、英雄譚に成っちゃってるからね。
材料が飛行石なのでそれからも浮島の征服を続けています。
結果として浮島が大地に落とされているんですけど。
今や気球ではなく、ケイバーライトを使った空中艦隊を作りだし、世界征服に乗り出している真最中というわけです。
攻められているこっちはたまったもんじゃないですね!
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敵国の建国者が過去に居た同胞。
貴族を弾圧し国民国家を建設。
故にハーレムは無し。幼馴染みの尻に敷かれただけとも言う。
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