第1章 覚醒~脱出 11 仲間 3
《スゥールパーナ》
セラの意識が薄れて繋がりが切れました。
マリの慌てたような思念と共にマリの意識も遠ざかりました。
私も戻りましょうか。
セラは結晶の中と表現してましたが、不思議な空間です。
セラに引っ張られてこの空間に来る経験が有ったので、自力でこの空間に来れましたし、みんなと繋がる事で、暴走するセラを宥めて支える事が出来ました。
あのままではセラは自滅しかねませんでした。
セラのあの力は姫神子の力でしょうか、未だ一人では上手く扱えないのでしょうけれど。
それにしても、まさかとは思うのですが、この結晶は伝説に有る・・・
意識が体に戻りました。後にしましょう。
「セラちゃんは、どうなの?」
「気を失っているだけだと思うけど、下に降りてノルン先生に診てもらおう」
マリの問いにミルが応じています。二人ともセラの側に居ますね。私も近くで身を起こしたジルと一緒に近寄って声を掛けます。
「私達も下に降りて休みましょう」
「別に、俺は大丈夫だぜ」
ジルは平気そうに言って来ますが
「今は興奮して解らないだけよ。何かの薬も打たれているのだし、気を付けた方が良いわ」
そう返して周りを見ると、ルイ兄さんがダン兄さんとネネを連れて下を伺っています。
セラが暴走して兵士達を追い出しましたが、他にも研究者達が居るのでした。
「下はどんな様子なの?」
「ノルン先生が手を振ってるから大丈夫じゃないかな」
私の問いにルイ兄さんが返します。ミルにうなずくと、セラを二人で抱えて降りて行きましょう。
セラの側にくっついて来るマリが不安げに尋ねて来ます。
「これからどうなるの?」
「一休みしてから、みんなで話しましょう」
笑みを浮かべて返しましたが、私の方が聞きたいですよ。正直大人に任せて頼りたいです!
ノルン先生の診察の後、遅い朝食を食べた処で全員一休みしました。
マリとネネは未だ寝ています。
セラも意識は戻りません。
ノルン先生は今のところ異状は見られないと言っています。
心配ですが様子を見るしか無いでしょう。
「セラ君なのかな、あの見えない力を振るったのは?」
「セラですけど、怒りに任せて巫女の力を使ったんだと思います」
「巫女の力とは飛行石を操る力だけでは無いのかい?」
「詳しいことはあたしは知らないし、みんなもそうだと思うよ」
ノルン先生の疑問にミルが答えていますが、本当の事は話せません。
ソアラ様にもセラ本人からも素性を漏らさない様にとお願いされていますからね。
浮島を昇降させる力はともかく、私達を結晶の中に引っ張り込んだり、兵士達を追い出したりしたセラの力は浮島の巫女の力とはとても言えません。
やはり、セラは姫神子の系譜なのでしょう。
私は皆より早くに読み書きが出来たので、本に親しむのも早かったのです。
それに話すより聞く方が苦に成らなかったせいか、お年寄りの話し相手になることが多かったのです。
親しくなればつい口を滑らします。
私が子供であれば気も緩むのでしょう。
そうして聞き知った様々な話と本の知識とを合わせて、皆の誰よりセラの事情を知っていると思います。
自治府長の息子でマリの父親のヒュウさんが自分の恋人と、彼女が仕える巫女姫様を連れて浮島に戻ってきたのは、私が赤子の頃だったと言います。
マリの父親、ヒュウブリックは当代の出世頭と評され、アストゥリアス皇国の八皇家の一つに仕える近衛に成ったと聞きます。
駆け落ちかと騒ぎに成りましたが、自治府や古老の判断で抑えられ秘密とされました。
懐妊されていた巫女姫ソアラミス様が産んだのがセラです。
遅れてマリが産まれました。
もしかしてセラとマリは姉妹なのと古老に聞きましたが、違う様です。
セラの父親についてはマリの両親とソアラ様の付人トーラ様以外誰も知らない様です。
公にはされませんでしたし、私も知ってしまった時は口外を禁じられましたが、巫女姫ソアラ様は古代天空王国の姫神子の系譜を引く、アストゥリアス皇国の当代の姫神子様です。
そのお力で浮島の位置を大きく変えられたそうです。
マリの祖父の自治府長や古老達が浮島に来る商人達と新しく渡りを付けるのに苦労したと聞きました。
理由は古老達も知らされませんでしたが、ソアラ様は身分を隠し只の巫女として暮らされました。
セラを深い愛情を持って育てながら。
私たちも又ソアラ様には気に掛けていただきました。
巫女としての基礎を教えていただいたり、アストゥリアスのお話をしていただいたりと。
亡くなられる前には、個別に枕元に呼ばれてセラの事をお願いされてもいました。
でも、故郷アストゥリアスに知られてはならないとは、どれ程のご事情がお有りだったのか、私には分からないのです。
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仲間視点。
スゥお姉さんは事情通。
アストゥリアス皇国は古代天空王国の後継を自認する空の支配者。
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