第1章 覚醒~脱出 8 結晶 1
「でも、空気の中にそんな物が在るなんて、何も見えないけどな」
「私も見たことは無いな。見たいとは思っているけどね」
ダンお兄さんの疑問に、ノルン先生は苦笑しながら答えています。
「ダンお兄さん、岩を砕けば石に成ります。石を砕けば砂に成ります。砂を砕けば小さい砂に成ります。それを砕けば?」
「もっと小さい砂か?」
「はい、それを続けて行くと長老の眼鏡を掛けても見えない位小さくなります。更に続けて行ってこれ以上は砕けない物が有れば、それはこの世界の基本を成す物の1つで、そういったものが組合さってこの世界が出来ているのでしょうね。先生の言う燃素もそういったものでしょう」
「そうなのかね?」
「子供の戯れ言ですよ」
ノルン先生やみんなの目が集まって落ち着きませんね。
しゃべり過ぎですね。
みんなの目を避ける為、目を閉じて横になります。
横に引っ張られましたけど、マリ、何故私を膝枕しますか?
落ち着きますから良いですけどね。
それにしても、飛行石ですか・・重力に影響を与えているんですよね。
前世には在りませんでしたけど、ダンお兄さんにした話からすると、特別な粒子がある?
そう言えば、前世の宇宙創世論では物質と反物質が同量出来て対消滅した後、偶然の揺らぎで極微量の物質が残り宇宙の基に成ったとか。
重力子に対する反重力子がこの世界には残っているんでしょうか?引力が重力ですから、反重力なら斥力でしょうか?
対消滅していない理由はこれでしょうか?
反重力子の結晶が飛行石ですかね?
そう単純ではないと思いますけど、もう少し考えてみましょうか。
このシャントル遺跡に着て数日で実験は行き詰まった様です。
台座は下に在った石みたいな物を載せた台車を動かすことで、起動出来るようです。
意味がさっぱり分かりませんがね。
私達は空の民イーオルで、中空の浮島の幼児です。
それ故か、台座が反応しても私達は無事で居ますけど、それ以上の事が解らない様で、条件を変えて色々と探っている様です。
ただ、性急な結果を求める指揮官は苛立ちを強めていて、私に対しても薬で意識を覚醒させて実験を長時間出来るように命じて来ましたが、ノルン先生が、
「幼児は直ぐに具合を悪くする。意識を無くしたり死んだりすれば実験は止まるが、その方が良いかね」
と、指揮官に分かる理由で止めてくれています。
台座の上で聞いていてドキドキでしたね。
台座の窪みの位置は最初の位置で固定されるらしく、その位置以外では起動しなくなりました。
研究者達はこの理由も探っていますが、認証登録の様なものでしょうか?
結局私は真ん中の窪みのままです。
台座の中のあの光る線が増えていますが、特に私の居る窪みの周りに集中する様に集まっています。元々有った線が活性化したのか?、新たに線が作られたのか?その場合はどの様に作っているのか?
解らない事だらけですよ。
報告なんて一切していませんが、みんなと心を繋げて結晶の世界に引っ張り出すことには成功しました。
私と心を繋げている間だけですが、みんなもお互いの間で心を繋げて居られる様です。
おかげで結晶の世界をより深く探れます。
普通結晶の構造には方向性があるのですが、もっと深い基礎構造にも方向性があるようです。
半分以上空想ですが、反重力子を生成する結晶物質と普通の結晶物質がまちまちな方向に並んでいる様な感じです。
そして、その方向性に干渉出来る気がしますね。
人の思念に反応するみたいなのですよ!
母様が巫女姫と呼ばれていた事、神殿が崩壊して母様が亡くなり浮島の高度が下がったという話を思い出します。
飛行石を心で操作出来るのでしょうか?
指揮官も上の方からの圧力に晒されているようで、指令書?が届く度に顔が歪みます。
恐いですけど、いい気味だと思いますね。
その指揮官が何やら指示を出して準備を始めています。
嫌な予感しかしませんね!
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飛行石の存在する世界の考察。
技術者の記憶からか、理論理屈を考察したがるセラ。
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