第1章 覚醒~脱出 7 先生 1
その日の午後再び台座に載せられた私達は、あの世界の中で心を繋げると同時にルイ兄さんの言う努力を始めました。
心を繋げる事は出来ましたけど、私の様に心を外に拡げる事は難しいようです。
それに私の消耗が激しくて、長時間は維持できず意識を失ってしまいます。
その度にノルンハイム先生のお世話になっていますから、親しくなるのは早かったですね。
私が数日で懐いたことでみんなも先生に気を許す様になりました。
「セラがこんなに早く懐くなんて不思議だよね?」
ミルお姉さんが首をかしげますが、前世の私がおじいちゃん子だった影響も有るでしょうね。
「私も空の民の端くれだからかな?私の祖国は空の民との混血が大半だから」
「ええと、空の民って?」
ノルン先生の言葉にマリが聞き返します。
「私達浮島に住むのが空の民、又はイーオルの民とも言うわ。逆に地上に住むのが地の民、又はガルンの民ね、マリ。私達イーオルの民は地上に降りられないし、ガルンの民は高空には上がれないのよ」
スゥお姉さんが説明してくれました。
「あまり私達を信用してはいけないよ。家族を人質に取られて彼等に協力している者が多いのだから」
そう私達に警告してくれるノルン先生の祖国は、十年ほど前に王国連合エル=セントリアに占領されたそうです。
あの兵隊達の国で地上周囲の国々に攻め込む一方で、浮島にも積極的に攻めて来ているそうです。
まだ詳しい事は聞けていませんけど。
今は私達に関係している事を聞く方が先ですからね。
「ノルン先生、この遺跡と言うかあの台座は何なの?」
「さて、それを知るために調査しているのだが。この遺跡はシャントル遺跡と言ってね、古代天空王国の更に前の時代の神殿なのだ。飛行石イーオナイトの利用に関しては今より進んでいた処が有るのだよ。あの窪みに子供を置いて、何らかの儀式か操作を行ったらしいとまでは遺跡の絵図から読み解いたが、その後でね・・・」
「何があったのですか?」
暗い顔で躊躇った様ですが、私の目を見て話してくれましたよ。
「子供達を連れてきて、実際に載せたのだよ。・・・全員正気を失って、亡くなる者も居たね」
と首を振る先生。
「そんなに危ないの!?」
みんなも驚いていますね。
「私達は大丈夫でしたけど?」
「条件が有るのだろうね。中空以上の子供達であるとか、巫女の素質が必要で有るとかね」
「私達なら大丈夫でしょうか?」
「何とも言えないね。今の君達を診た限りでは、異状は無いけれど」
何となく大丈夫そうな気がしていますけどね。
「ノルンハイム先生、あの兵隊達は何を考えてこんな事をしようとしてるんですか?」
ルイ兄さん、ナイスな質問だ。
「彼らはある種の兵器だと考えているのだよ。それも子供を犠牲にするなら、それだけ強力な兵器だとね。それを再現するために、中空の浮島の幼児を拐って来たのだよ」
もしかして前世の名作映画で見たオーパーツを探す軍隊と同じ事かな。
笑い飛ばしたいけどあの台座を見てるとな・・・。
兵器という感じはしないけど、ホントに何の為の物かな。
「そもそもノルン先生は何を研究しているの?」
「世界の仕組みかな。何で出来ていてどんな風に動いているのか、それが知りたいのだよ」
ちょっと話題を変えてみたら、そんな返事が返ってきた。
「燃素の提唱者ですよね。ノルンハイム先生は」
「何なんだい?燃素って」
「火が燃える時に必要な空気に含まれている物ですよね?」
ダンお兄さんの疑問にスゥお姉さんが答えつつノルン先生に確認している。
燃素?酸素の事かな?
「ガラスで大きなカップを作ってね、火の上から被せると中の火が消えてしまうのが見えるんだ」
「風が無いからじゃねえの」
何を当たり前のと言う感じでジル兄が答えると、ノルン先生は
「そう!風が無いんだ。つまり新しい空気が入らないんだよ。でも空気が無くなった訳じゃない。火が燃えるのに必要な何かを使いきって消えただけでね。その必要な何かを含む新しい空気と入れ替えてやれば、又燃え始める」
と楽しそうに説明している。
「それは私達生き物にも必要な物なんですよね?」
スゥお姉さんはホント物識りですね。
どこで学ぶんだろう?
「うん、火が消えてしまった後の空気の中では小鳥や他の動物も死んでしまう。火が燃えるのに必要なだけでは無くて、生き物が生きていくためにも必要なんだ」
やはり、酸素ですね。
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ノルンハイム先生はこれ以後セラの仲間の一人に。
主人公の側に老研究者が居るのは初期のシナリオどおり。
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