2022年 8月

春うらら あなたの香りを待ちわびて ゆっくり落下する花水木


夢越えて あなたに会いに行く もう誰も死なせないから


白き橋 渡るは私 向こうにいるのは、もう一人のわたし?


困ったな 皆まで言われて頭かく そんなにちゃんとおっしゃらないで


どんな不思議が待ってるの 何度も言葉に問いかける


夢おつかい 母に頼まれ銀杏をくぐる 明日は秋鍋 そうなってるのよ


今度は利他的に生きられるかしら 何度もトライしてみてるのだけれど


自己中心的に生きるのを赦される そういうふうに設定したから


神様はもうお眠りになったのかしら 人間をお嫌いにならないでね


シャーマンは 自覚のないまま操られる それで己が受の者と知る


受動的なわたし 能動的なわたし 維持のわたし 全て統合されてほしいの


バラバラのわたしを集めて作り上げる 人間のような塑像


こうしても どうしても みんなと深く繋がって気持ちいいの


不可視界じゃ みんなえっちなことしてるのよ それに狼狽えちゃいやよ


魔法の杖 左手に持ってダウジング ほんとはペンなの でも使えるわ


本棚の中に夢がつまってて 可愛くみんなダンスしてるの


私は純粋だとよく言われるけれど、不純になれずに困っているの


白い鳩 飛んでいくの 空高く あんなに金粉を撒き散らして


女の子 私は素敵な女の子 でもそれってどういう意味なのかしら


虹色の光を見たわ どこまでも 柔らかくぽわんと存在してた


一人分のスペースさえあれば十分なの それで全部できるからね


回帰 何度も同じ人生を繰り返す 私の舟はどこまでも緩やかに


せっかちさん いつも早く動いてくれて ありがとう 恩に着るわ


パールのたましい 運びながら 尊んでくださる人に投げキッスするの


きらきらのおめめをしているのかしら、あなたも 怖い獣は御免被るわ


でももう私 わたしを尊ぶことにしたから 男の人はもうさよならよ


ありがとう 身近な人たちありがとう もうこんなにも輝いて みんなを照らしていける気がする


人生は汚濁飲み込む連続よ それでも、美しく生きてゆけたなら、他にはもう、何も望まない


不可思議な夢をずっと見ている気がするの どうしてこの世はこんなにも眩いのかしら



9日


風船は あれは恩寵に抱きとめられてるのだ やがて天国へと着くのだろう


素直な人は 頭上に神を拝しているのだ この世界で生きる選択をする尊さ


夏の暑い日に図書館へ向かう是非を問う まぁ行くんだけど 涼しいし


正反対の友人が二人いる そのことを尊く思うと同時に 世界の不思議さに想いを馳せ


会社に行っていた時よりも 世界と繋がっている感覚がする それは余裕のもたらす技


自己と向き合う その時だけが生命を吹き返す一時でもないかも


思考のみによって真理に到達せんという縛りを解いていく


己の機能を把握することによって落ち着いていく これで涼やかに生きられるだろうか


内心は様々な人間がくつろいでいる たまに役に立つだけの生命に愛を


有用性は悪魔の開発品だよ それを分かっていなければ この世で本当に生きることは難しい


一人遊びの楽しさを ただ己が実感することの豊かさに愛の所在を感じる


感情は自分ではなくて 少し遠い他人で だから尊重して過ごすのだ


コウノトリは 利他的な行動によって幸せになるのか 参考になる


野球中継を何度見ても楽しいとは思わない性(さが) しかし善きものなのかもしれない


一匹狼と仲の良い友人は云う そのことそのものよりも 見てくれていることに喜びを感じ


理性のみの人間は味気ないという呪いを解除していく


思考とは解放のための重要ツールなり ゆめゆめ馬鹿にすることなかれ


各々のイコン 各々のアイドル 各々のコレクト 各々のゴッド


没頭こそがエネルゲイアであると度々思い返すことによって、息を整える


日本はやはり多神教なりと オタクの対象への愛を見つめながら


「踊る阿呆に見る阿呆同じ阿呆なら踊らにゃ損々」祭り会場次元上昇して


人は皆 お腹の中に一つの庭をたくし込んでいるという そこが平和であれと切に願う


網膜に閃く色で対象の本質の質を見極めるひとつの技術


良きものは気配で分かる 君の笑顔とか、奏でる音楽とか



《薄水色の風》


綿毛摘む 薄水色の風が攫ってく 後86日で僕は14歳


白々と明けてく空を眺めつつ 僕の寿命を逆算していく


曾祖母のくれたブランケットを床に敷き 今日からこの部屋が僕の船の甲板


ジュール・ヴェルヌの描いた月に心を飛ばす 彼処に風は吹いてるだろうか


波の打つ髪に手をやり梳かしつけ 栗色のうねりを少し気にする


教室で笑うマドンナの横顔を バレないように眺める技術


川風が洗う川辺の一本道 自転車押しつつ友と帰る


ロビンソン・クルーソーのような生き方に憧れて 架空の世界で大冒険する


草色の短パン履いて虫取りに 手には籠と虫取り網あり


幼い頃の毛布がいつの間にか捨てられてた 母に訊く手間を惜しむ


この世界の成り立ちを知りたくてペンを持つ ここは一体どんなところなんだ


綿毛にはしゃぐ妹の髪をそっと撫でてやる きっと未来は虹色なのだ


友人と奈良に行って駄弁る日の楽しさをずっと覚えていたい


あぁ、自分は散策するのが向いているタイプなのだなと知るなどする


思索の愉しみが何にも増して好きなのだ 蜻蛉がまだ飛ばない青い季節に


みな触れ合わないようにして 自己の幸福に邁進しているのだと この年にしてようやく気づく


赤い意思をずっと持て余してきたけれど いつか遠い知り合いになれれば


黒のレース地のトップスを着た友人の優雅な立ち振舞いと現実の匂い


柔らかな善良な薫りを漂わせ 彼女は生徒の未来を憂慮する


ほうじ茶ラテの甘やかさと苦さに顔見合わせ「おいしい」とほころぶは良心なりや


マテリアルな本が好きなのだとにもかく 愛することにかけては貪欲に


集合的無意識に警告を出す 目の前のあの人の意識を少し変えてください


不注意は周りを危険にさらすと今更ながらに実感をする


ノートや本を愛する以外に別にすることないかも 人より物に依存をしよう


気にしない技術にやっと目を向けて それを体得せんと励む


思考と遊ぶのに熱中しすぎた これからも熱中していくだろう


優しい日だまりに無意識に 顔を向けて「この世はいいところ」


入道雲 まるでスタバのラテの上にのってるクリームみたいだな


時代物の黒い鞄を見つけたり 記憶にないはずの記憶蘇る


散歩と思索が大好きで 本とノートさえあればよくて 無常識の世界に没入


この夏はきっといい夏になるだろうな なんせ私と世界が在るのだもの


トンネルの中に住んでいる光の天使 規則的に電車を横切る


心配性の母の背に何も載せたくないと思っており それが早く叶えばと願う


すれ違いこそ人生のままならなさだと気づいていく25歳の暮れ


強制的に途中下車して歩いて帰る決断をした私GJ


好きなアイドルを毎日摂取することの良さについて論じたい


占いを人にするのはまだだけど 自分に向けてするのは大好き


というか本から占いの香りをたくさんもらえるのがいい


製本士になることができたならば そんな夢みたいなこと、実現すればよい


感情を愛するのよ そうすれば全ては思うように進んでいく


女らしさをそもそもあまり意識してこなかったという ただの雑音だと思ってました


生まれもった意志の強さを社会的な方向に活かしていく時期がやっときたか


互いの性を意識する時期を仏頂面で通りました それについて何も思わない


独立した働き方をしたいと思う そうすることによって私のよさは活きるのだきっと


無印のノートを数冊買って帰る ここにこれからの言葉が並ぶ


もう何も恐ろしいことは起きないでほしい 私のいる世界でそれは赦さない


新しい常識に合わせてゆく なんてったって素敵な世の中になりつつあるのだから


お寺に向かう 手すりのある階段の脇に咲いてある夾竹桃


道端に咲く花の赤と橙のコンポジション 写真に撮って名を母に訊こう


長い間くだらないと封印していた現実の気配を少しだけ呼ぶ


空想の思考空間だけでは限界があったと判断した後のしょうもなさ


何がそんなに許せなかったのか とにかく現実が言うこと聴いてほしかったの


外敵を作ることはもうやめた なんて無駄な時間だったのだろう


心の中には複数人いて 思考と行動と記憶と感情を司っている


彼らの対話で善きものが生まれる 本を触りながらそれを深めていこうと誓う


夏雲の満ちる世界で独り歩く こうしてこの世ら成り立ってゆくなり


植物のレイヤーで行きたいと願う 無数の在り方が赦されるこの世界で


集合的無意識のその奥の叡智に辿り着きたいと願う者なり


老婆は私の足元を見ゆ まさかおろそかになっているというのか


実践哲学を確立したいという願いを懐に入れているなり


あまねく鳥のあまねく命を触れないままで貫徹されよと祈念す


正しすぎるのもよくないのだと気づく それよりも豊かさこそが命で


賑やかな世界を横切る文明の音を遠くに聴いており葉音は永遠の方へ


永遠は常にそこに在り 私の帰りをわくわくと待っており


自然こそが 嗚呼自然こそが現実なのだ この限定的な生を離れて


雲が虹を食んでいる あるいは雲の舌として垂れ下がる


永劫回帰の生を生きているのかもしれないという うたがいが現実味を帯びてきた


自然の芸術にはどなたも勝てません ただ驚き目を見開くことしかしてはならない


人の世の儚さを実感すると より厳しく清くなりゆく心


生の限定性を身を以て知る者としか もうはっきりとした会話は出来ぬ


欲望を離れた生き方を選択した これでよかったと胸撫で下ろす


生に熱中している人間か 俯瞰している人間か 見定める猫に見つめられる



14日


せいこらと掛け声かけて川へ飛び込む 川面に金魚が泳いでいるなり


頭に乗っかる陽の光 燦々世界を照らしてゆくあらまほしき火


酢漬けのあんず煮をかき混ぜて 今日も今日とて生きていきます


肉体の檻を出ずに住む方法 探しているのですよいつでも


人間はなんでもできるのか? 今でも懐疑的でいるがまぁできるのだろう


遥か空高くたましい飛んでゆく 気が済んだら肉体に戻っておいで


扇風機の羽根を一枚づつ千切ってゆく 手で千切ったほうがおいしいですよ


まんまるの目をぱちばちとしばたかせて 今日帰るんですか? 宇宙に?


春風は今は季節外れです どこか違う国に行ったほうが幸せになれますよきっと


名建築みんなどんなメンタルですごしてるんだろう どっしり構えて立派なものだな


物言わぬ父専用の椅子をちらりと見ては不在を思い出す


行くはずだった市街地を恋しく思っている 降るはずだった雨は留守電


血を分けた子どもの心に宿る鮮やかな火を守り通す気概はあるよ


緑色の人間はおらんかえ 怪獣はいないので喋れません終わり


水量が僅かに増えた川べりを歩く 熊はおらず鳩がいた


夏の日を静かに過ごす こんな日は心の楽園を探検するに限る


ピンク色の宇宙船の窓から見える水色の惑星 彼処には哺乳類が住んでいたはず


手を上げると金粉がさらさらと云うことを聞く いい子ね 今からケーキにして差し上げる


銀の椅子に座ってあぐらをかき スパゲッティを食べる なんだか寂しいわ


温かい世界からどこまで飛べるか その飛距離で人の価値なんか決まるわけないでしょう


光溢れる庭に出て 植物と会話する「今日は何回ちょうちょがとまりましたか?」


女帝のカードをお守りに画面にお越しいただいて 時々撫でてほっとしている


ピンク色のクッションを高く投げて占うの 今日もいい日になるでしょうか


モンキチョウの軌跡を指でなぞって遊んでる そういやロケットどうなったっけ?


琥珀糖食べてみたくて調べてる 碧い世界に人指入れる


優しく触る 全てに あぁ、あれが神様? これもかみさま?


会社員には後戻りできないよ だって向いてないのが事実なのだもの


空の雲にふんわり乗れる年齢にはまだ達せない 地面を這いずり生きるしかない


虫だけがこの世の真理に気づいてる世界はディストピアだね


上手く踊ろうとしちゃだめだよ 夢中になって踊ればいずれ分かることがあるよきっと


神様のおもらしが雨なんですよ だから静かにしてれば自然が後始末してくれる


メトロノーム鳴らして体を揺り動かす 夢みたいな時間 無駄な時間


昔海辺で取った貝殻を透明のビンに入れて飾っている 金色の記憶


翠色の飴玉を見せつけてくる子どもの後頭部をひらひら撫でる 綺麗な形


頭を寄せ合って見つめた憧れを 桃色の夕焼けに重ねて触る


貝殻の中の会社は忙しそう どこもかしこもこんな感じなのか……


金銀の耳鳴りが聴こえてくるといいことが起こる そういうジンクスを幾つか持っている


象色の空がゆっくり移動して僕らの頭上にやってきた 黙ってお家に帰りましょうね


夕暮れの町のスピーカー 明日は空想が降ると予報を告げる


外で楽しくお遊戯してるみんなはお腹すかないのかしら


六角形の家の前で立ち止まる 灰色の老人が確か住んでいたはず


これは嫌な記憶全て焼き尽くす天の光 ほしいですか? どうなんですか?


偏見と邪視の世界を愛で割る 素敵な世界になぁれ明日も


黄金の世が明けるわほらみんなの祈願ね ありがとう、フラワー星人


レース地の地上に降り立って蒔いているのは真珠のビーズです


綺麗なものしか心に入れたくないの だから迂闊に触れないでよね


薔薇の影を幻視する 夕暮れのはざまの時間帯に いんげんを剥きながら


平穏に慣れる気持ちが必要よ きっと明日も変わらないから


ダイアルを回して平和に合わせ続ける忍耐こそが必須項目


項垂れた卓上ライトをなんとなく見つめてなんとなくテンション下がる


蝉の声が夏の光る空気を増幅させる装置だと知る8月14日


イヤホン 何をしても耳が痒くなるので暇を出す 所在なげにテーブルにいる


終戦の日が明日だと ふと気づいて母に確かめる 自分も気がつく前に


強くなければ生き残れない 弱くなければ生きることができない


昔から涼しげだなと評された なぜって暑さを拒絶してるからさ


夏の虫から秋の虫への引き継ぎは今んとこ上手くいってるのだろうか


沈黙せしテレビの抵抗として赤く光る右下 根性あるなおまえ


網戸なんかがあるからガラ悪くなったと言いたくもなる視界のザラつき


心の井戸を上がってくる真っ黒い生物を標本にしてガラスケースに飾る


目の輝きで生きているかどうか判断する この不明瞭な時代に


死んでてもいつか復活できるよ 君がもしイエスのように優しければ


赤い道具がいくつか入っている 家の卓上の体メンテ用の籠に


少年になりそこねた過去の自分を愛することしかもうできなくて


お盆の空気を吸い込んで あの世に引かれないうちに出す危険な遊び


母のため テレビの下の棚にアイドルのCDを積む これも善行のうち


陰徳を積むことをして背伸びする これで少しはいい人間になれたかな


そよ風を打ち負かしてゆく扇風機 そんな頑張らなくてもええんやで


子ども時代に交わした手紙を かわいい紙袋に入れて保管している


ある現象をゆるさない気持ちを持つことで発生する暗い世界


明日にはきっとまた善くなっている 全ての行いが 全ての心が



『青』


碧いサファイアを透かして見る空の透明度と深度の相克について


白き肉を優しく包み込むリラコの青さにダイブして笑う


波間から小人が手を振り叫んでる「シャツ後ろ前反対だよ!」


蒼き雨 体の中に降り注いで静かに世界を征服していく


なぜだろう ブルーハワイをこの人生で ずっと食べそこねている気がする


哲学書 読むときは必ず青色のブックカバーをすると決めている


夏の夜 独り毛布にくるまって 孤独に耐えきれず悲しさを口から出す


イヌフグリの名前の由来を妹に伝えたことを後悔してる


シャガールの青はどこか狂気めいて あの世へ私を連れていこうと企む


綻びから覗く薄青の発泡スチロールを食べたい欲求を少し抑える



『黄』


たんぽぽに埋もれるようにして倒れ込む 君の笑い声は黄色


黄色のペンでぐりぐりと丸を描いて 弾ける喜びの歌


王冠を外して汗を拭う ノブリス・オブリージュは簡単じゃない


天蓋の光は明るくこの町を照らしている 燦々きらめく太陽の町


春風に混じる幸せの匂い わにはここにはやってきません


檸檬を手にして口ずさむ ト長調の勇ましい曲


花形のランプから降り注ぐ黄色の粒子 静かなる幸福の海にしずむ


ラッパの音色で目を覚ます 鼓膜の嬉しさに微笑む朝


頭の中のアルバムを ひらりと捲り懐かしむ 全ては黄金色に包まれて



29日


夏の暮れ バスカヴィルの犬は昼寝して 蝉を食べる夢を見る


赤色の帽子のつばを上にするくせを持っている印刷業者


太陽の巻毛の青年が小脇に抱える聖書のパラフィン


聖典を書かんと意気込む文筆家 青々とした光を浴びて


美しき目録に触れ目を閉じる 人生のそれはどこにあるのか


歴史学学ぶ学生の額の上にとまる蝶々の触覚は黒


現代人の足の下の古文書は足跡なりやと老人は云う


音だけのシステムはあって だからこそ耳は閉じられないのです、きっと


こうやって座っている間にも 蟻の世界経済回る


地下の都市 広がるイマジンを糧にして 拡大し続けてゆく世界


丸くて明るくて素敵な港湾を一口で平らげる海坊主


ターミナル みんな弱くて頼りあう群体のへそみたいなところなのか


とんとこと 路線をこのまま歩いていけば 神様のところに帰れるのかな


踏切を渡り終えるまでに次の言葉 言えなかったらお前の負けな



31日


眠気誘う蝉の名残惜しげな声を額に響かせて目を閉じる


「学問×動物」


野原飛ぶ蝶々の思考は鱗粉となって世界を平和にするエフェクト


かたつむりの概念を窓に這わせつつ 殻の中の居心地に住まう


鶯の言語の読解を試みる小学生のランドセルの艶


梟が夜な夜な哲学をした成果 鳴き声となって朝を早める


ミミズたち口に具体を入れ込んで臀から抽象化をしている最中


両方の手を顔にこすり目を細める 猫の記号論かわいやかわい


蟻たちが地面に書いた文字たちを蹴散らし犬は夏に踊る


モモンガの台形一瞬中空に滞空しふさふさの図形草むらに落つ


カマキリの直線の舞 少しだけ危険な香りを漂わせて、愛


アメンボの作る淡いへこみを幾何学の一点として自在に移動


すずめたちの進むベクトル日常ではしゃいだ声を立てて遊ぶ


近所に住む柴犬のラテン語を翻訳するのは五才の子ども


小さいながら大きく細やかな巣を作る蜘蛛は飛び級で大人


人の指は食べないうさぎエリート教育受けてにんじん食べる


せわしなく働く蜂の民主政 業者によってあっけなく散る国家


最果てを探す象の一国家 神の国に限りなく近く


森に住む熊のポピュリズム「女の子が来たら話しかけてもいい」


合理主義 玉虫の羽の希少性 ジェノサイドの宝庫


こうもりのインフレーションが起きて空の染みとなっていくまで


北極ぐまの体内に宿る宇宙論 全ては氷に帰っていくという


世界五分前仮説 鶏にとってはある意味真実


人間をそそのかした故のカルマ ものともせずに林を横切る


ブラフマン いつかは共にあろうと約束した蛍の時の記憶


ゆるやかに全ての生命が神話として今日もめぐる 現実はロマン


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