2021年 6月
流れゆく 桜の花びら 面伏せ 彼女の名前は 花宮薫
ぬばたまの 髪艷やかに 腕に落ち 私は思わず 顔埋めたくなる
花宮の 腕ってどうしてあんなにも 白くて甘い飴みたいなんだろ
かりかりと シャーペンの音 響かせて 彼女は理知的 宇宙の眼差し
フラスコが 歪める彼女の 面立ちは 神秘的なの うっとりと友
挙手をした 花宮の右手 真っ直ぐで 俺思わず 拝んじゃったよ
触れられない あなたがあまりに 清冽で 優美な背筋をしているのだもの
イオニア式 ふと浮かんだその言葉 花宮さんの足連想し
漱石の 「こころ」音読 静けさに 花宮さんの アルト溶けてく
「宝物は、琥珀に閉じ込めたいと思わない?」彼女は そういたずらっぽく
光落つ 平和学習 粛々と あの人の 引き結んだ唇
放課後の 音楽室で 弾いている 彼女の十八番はノクターンの2番
シャボン玉 青空遥かに 飛んでいく 「私も遠くに行きたいな」冗談混じり
永遠の 中の一瞬が 今、この瞬間に零れてく どうして誰一人、捕まえられないのかしらね
「花宮さん、愛しています」 薔薇の花束 「ごめんね、私、百合が好きなの」
「花宮さん、大好きです」 百合の花束
「その花、あなたのほうが似合うわよ」
藍色の シャープペンシル 柔らかく握った掌 温かそうで
うっすらと 微笑んだ彼女の 悲しみを肩代わりできたらいいのに
ベランダで 校庭眺める 花宮さん なんだか消え入りそで 思わず腕掴む
花宮さん 僕らはみんな あなたが好きで あなたに心から笑ってほしいと願う
捨て猫を 撫でて餌を 与えてる 花宮さんの静かな眼差し
通学路 声さんざめく 生徒らの 苦悩に寄り添い 木漏れ日揺れる
青葉萌ゆ 少年ひとり 小道往く 今日の朝飯 妖精の羽
自転車で 滑走するは 通学路 ルート51で 友と合流
一限目 夏風一陣 吹いていく プリントはためき 数字零れる
昼休み 蝉の声を 聞きつつバスケ 小窓に雷 こちらを見学
からからと 自転車押すは たぬきの子 俺は手ぶら 駄賃はラムネ
死にたくは なかった ただ、生きたいだけだった 夕焼けの涙
曇り空 優先席に 本好きの人が3人 みんなズボンだ
優しいな あの人みたいになりたいよ 私は人の中に生きてる
生命が 生きてるここに この胴に 楽器みたいに 鳴らしてあげたい
バナナチョコ 思い出すのは祭りの日 おばあちゃんと 歩いた参道
愛くれた あの人をよく 思い出す 傷口塞がる もう怖くないよ
バッハさん ゴルトベルクの音色って とっても軽やかなのが良いのですよね?
お化粧を 真剣に始めてみました 前よりも 顔色悪いのどうしましょうかしら
電車揺れ 前の人が 手すりに指置く 猫のよに 一瞬やらしい気持ちになった
しあわせを 運んでいくの この腕に ほら、またひとつ軽くなった
蠅さんが 肩に止まる くすぐったい 想像上でくすぐったいよ
シャツ洗う 人の手を想う 夕暮れは 菫色の 海をしていた
けだるげに朝の電車に揺られてる 竹の隙間に白光洩れて
ベランダに真赤な薔薇がひっそりと頬寄せ合ってひりついている
いつのまに「うち」を手放したのかしら 喉から「わたし」が飛び出す度に
ヘルメットつけて私を追い越すの 少女の肩に広がるポニーテール
「待っててな もうすぐ終わるよ」妹の 髪を結うなり 坊主の兄貴
入道雲 スーパーカブを走らせて 悪い大人から少女を守る
こんじきの レースをひとひら 編みまして かぎ針白い手眩く清らか
挨拶する 上司の笑顔 心に留めて 明日も会社にゆくのです、まる
ノクターン 遠くからそっと 響いてきて いつの間にか 青空へ駆け上がる
鉄塔と どんより雲の 囁き声 「そちらおかげんいかがですか?」
枝豆大の トラック一台 走ってく 私とあなた 交わる、さよなら
うんちくを熱っぽく語る武田鉄矢 私はなんだか嬉しくなった
「ご苦労さん」上司に労われて嬉しくて 今日の曇り空をほわりと泳ぐ
秘蔵っ子の 映画のプロットを友人に ほめられ背中に若葉が拡がる
花畑 乙女ら輪になり 花輪編む ゆめゆめふんわり 叶えばやんわり
父親に怒りながら塗るうさぎ 可愛そうだがかわいくできたな
ピンク色ネイルはイライラ サフランの色に塗り替えご機嫌Yeah
駅前の自販機で買ったソーダ水 サフラン色の 指ではじく
画材屋と楽器屋さんとカラオケ屋 みんな違ってみんな行くのよ
15弦 小形ハープを 楽器屋に 見に行くるんるん 楽しむぜいえ
油絵を 始めるために 画材屋へ パレット絵筆 キャンバスHOO
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