2021年 7月

一心に筆を走らすみつあみは 我に返って「エネルゲイアの我」


カリフラワー 彼はUFOに 遭いたいの 肩をすくめて少女は微笑む


イントロばかり頭をめぐる 私にとって音楽は毒なのよ、毒


本の山 退職したら 切り崩す 頁の欠片 空に吸われそう


恋人は サイコホラーの小説書く 苦手なのでこわごわ読む我


私が自由を分かるのは 親に愛を注がれたからです、たぶん


友人の 明るさ、仕草、眩さ、可愛さ、可憐さ

(この人素敵だ)




母は「この世に痕跡を残さなくていいわ」と言う そんな、私の中に残さなければ


大丈夫、大丈夫って励まされた 母の腕の中 布団の上で


母の作ってくれる 毎食を私 記憶できない 舌よどうか 覚えていてね




《聴覚》


オフコース「眠れぬ夜」のメロディが 沁みて滲んでせりあがって


The Sound of Silence を聴きながら君を待つ 向かいの花屋の鈴蘭光り


耳からの どんな刺激も痛みだった 君の声だけが僕の癒やしで


耳朶を食む 微かな音が 鼓膜揺し 僕は唐突にレタスを想う


愛の音 聴いて、君の産毛を揺らす風の微笑み、君の髪に触れる僕のこころの震え


しゃこしゃこと 歯磨く君のリズム 腸に響かせ 眠らせていく


すばらしい日々 アウトロ永遠に続くようで このままでは君に会えない


水曜日 雨と倦怠 電話越しの 君の声に 背骨とろけ 今から行くね



《自由詠》


僕以外の誰かも 言葉を持っていると 確かめたいから SNSをひらく


差し伸べることを やめない 命あるかぎり 私に優しさが灯るかぎり


心をひとつ 閉じ込めて うずくまる 春を知らない君に花束を


アメジスト咲く野に夕暮れ訪れる 子どもは帰る 愛待つところへ


謎解きに熱心な君 その瞳 食べてしまいたい 気難しげな刻印ごと


傷口を見抜いた君に 委ねてしまう いのちも心も 未来もぜんぶ


あなたになら 殺されたってかまわない 金木犀のあるこの世にみれんはあるけれど


ブルーインパルス 鮮やかな舞いのそのままに 真っ直ぐ君のカッターシャツになる




美しい少年は隣の少年の痛みを思いやり涙を流し


透明の善意は瞬き光の方舟となって彼を救って


生きたいんだ 呼吸よ静まって どうか、どうか ほつれを握りしめて


傍らの少年の、私の肩をさする手の 大きいこと リズムは崩れず


君しかいないの 意志の強い 瞳の奥に 燃える孤独 手を伸ばしてもいい?


この躰 脱出用ポッドとなり 宇宙に飛ぶ 街は遠く 陽炎となり




《雀》


ありふれた 鳥と言うけれど 朱雀 狩られているのかついぞ見かけぬ


紅雀 握ってにぎって できあがり!手を開いたとたん逃げていった


私は探査型人工兵器雀丸 あなたの背信を見逃しません



《つばめ》


凛とした 小さな背中に 黄金の 光を乗せて 海滑空す


あのひとは 優しい人です 僕のたったひとりの王子様なんだ


微笑み提供 屋根下提供 つばめと人の利害関係



《にわとり》


闘鶏に 興奮する奴 統計で どれだけ喧嘩で死んだのだろう


赤モヒカン 太陽みたく 無慈悲な目 常に威嚇してくる歩み


鶏は 機械じかけなんだよ 首がなくても歩いてるんだから 伯父のほほえみ



《ふくろう》


ミネルヴァの 頭脳は肩の ふくろうで 頭は飾りです 


大きくて 柔らかくて 静か 胸が上下している 夜をまもっている


おやすみ 世界 おやすみ 私 樫の木よ 丑三つ時まで頼んだよ




集団の 黄色い帽子に 横切られ 笑んで待つ人 笑んでいる花

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