2021年 4月

左手に 見えますのはベタ系の雲 右手に見えますのはもさ系の雲


歩道橋 トタン屋根の 間にて 桜が咲いている春尊し


ホームから 線路へ立ち入らないでね (そんな勇気 あったらすげーな)


この世界がないと僕は死んでしまう 一瞬で、ぴって 断末魔あげて


もこもこで 端がしゅわって とけている雲が 僕を支えてくれているんだな


左から バレエダンサーのオフ日みたいな女性 おばあちゃん アディダスの坊主くん 眠る女子高生


うちのママ とっても美人よ うちのパパ とてつもなくハンサムなの、ふふ


コカコーラのCMに出てきそうな父母の 写真に見とれた 春の午後に


どす黒い 怪物を飼っているけれど 彼は寂しがり屋なんだ


唐突な 「殺せ」の声に 突き動かされ 私はペンを 動かし創る


桜降る 来ることのない電車待つ おじさん一声 飛んでお礼する


しっかりと したいんよ俺 しっかりと 世界に組み入って いきたいんだよ


同じ日を 繰り返すのは 尊いと 知ってはいるよ ちゃんとしなきゃな


夕暮れの 陽は住宅を あたためて 黄金に染める 餞みたいに


知ってるか 春の怪物 あいつはな おっかなくって 高菜が好物


観覧車 てっぺんに少女 睥睨し 次はフランクフルト襲撃しなくちゃ


ラーメン丸 食べるときこそ 厳粛に 手を合わせるんだ 兄の教えな


こんにちは いいお天気で よかったですね そうですね ところでちくわぶって美味しいですよね


破壊とは 再生の前触れですよ と君が言ったから 壊したはいいけど いつまた動くの時計


タロットを 喋りながら繰る 春の日に 怪獣なんか 来るはずがない


漠然と した祈りなら しなくていい ただ愛するんだ 心に湧き出るものをね


バレリーナ 目標に向かう こちら私 只今から 昼寝に向かう


ロボットの 少女小首を 傾けて 「死ぬってなんですか?」 真っ黒な瞳


黒ぐろとした空、機巧 狂いだす 野良犬一匹 項垂れ祈る




ドビュッシー 月光を昼どきに聴く カーテンに光 五角形の家


消しゴムの かすに符号を読み込んで 今は昼前、夢のあとさき


私は信じられないくらい傷つきやすくて 冷やし中華が大好き


レース地の 鉄塔夕空 かき混ぜて 明日は晴れよ 電鉄が来る


人を思い出すのが怖くて 傷つけてしまいそで 私は風景ばかり連想をする


思い出の サフラン色を 手繰り寄せ ほら、たくさん飛んでいくわ 未来が風と


近未来 白と黄金(きん)と空色の 都市に君臨する ねそべり猫


女神様 ラズベリーひとつ お食べになって 泉の音で ひらりと目を閉じ


夢の中 父は私に別れ告げ ゴンドラ永遠に 二人を分かつ


現実は どうしてこんなに 優しいの 私はぼんやりしているのにね


春の町 野の花揺れる うすむらさき 私はそっと 左足上げ


散歩道 たくさんの木と 白い家 そよかぜ吹いて 静けさが舞う


アトリエで 黄色いチューブ 絞り出し 海猫鳴いた ビー玉燦めく


ハンドパン まだ見ぬ土地の 郷愁は あの人の後ろ姿に似たり




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