2021年 3月

白き部屋 ソーセージ裂き しゃお、と飛ぶ しぶきささやか 独りは好きよ


愛の鳥 ひだまりの鳥 幹の鳥 死の島の鳥 口々にぴや


バルコニー 鳩羽ばたき 飛んでゆく あなたは私 どうか元気で


研究棟 白き犬は ロケットを 胸に垂らして フラスコを振る


パステルの 雲ひとつふわ 飛んでいく 愛とは何か その時は忘れ


あいしてる 少年得意げに笑い 差し出す花束 かすみ草の海


砂浜に 描いたハッピーバースデー 君が笑えば 波怖くない


めんぼうの 丸い先端 開いたら 紫の蕾 ふるりと出るんだ


貝殻よ てくまくまやこん てくまくまやこん かわいいおばちゃんに なりたいの


愛ゆえに 君四葉の クローバー 選りすぐる横で 頬を見守り


病室の 女性ひとりで 編み物し 両手から生まれる ワンダーランド


レース地の ワンピースなんて 可愛らしすぎてあたし きっと似合っちゃうわね、なんて


銀行の 建物ってなんであんなに瀟洒なんだろ しゃぼん玉 吹きつつ少女


かわいやかわい あなたの手 清きや清き あなたの眉間


愛だって なくても僕は僕だしな 哲学書から 顔を上げて、ふ


夜空のな 皮を一枚剥がすじゃろ そしたら向こうは神の世なんじゃ


「牛乳にする?」「うん」かわいや弟 口ひげつけたいんだな in銭湯


相合い傘 僕らふたりだね そうね、温かいわ 柄を押し合って


慈雨触れて あなたのことを思い出す こんなに優しく愛されていたの


死んだらさ どこに行くと思う? あなたの隣 そこから先は? さぁ、考えたこともないわ


露垂れて あなたがふっと 振り向いた 前世はいずこ 水滴はねる


手のひらに 並木立って さわさわと 透明な風 清く吹き抜け


知ってるか? あなたはくるりと 振り向いて  この世の秘密を そっと口ずさみ


お城へと 続く道は 冬げしき 赤ん坊と その兄歩き


パックして 声上げ笑う 母妹 時よ止まれ

乾かないでくれ


光満つ 教室でひとり 青年は 想いをふぅと 両手に閉じ込め


廃墟にて 悲しみそっと 暖めて 青空ふわりくちなし微笑み


空色の 愛を僕に 与えたもう 草原にシャボン玉置いてきたの


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る