第二章7話 旅の道中での出来事
みんなが起き始める少し前に俺は目を覚ます。プリンは相変わらず俺に抱きついて寝ている。ほんと朝からプリンの寝顔なんて幸せすぎる。ララも枕より少し上の辺りで、寝返りを打っても踏み潰されないところで寝ている。ヴィーナもまだ寝ているがドラグだけは既に起きているみたいだ。
「ドラグおはよう」
「おはようございますご主人様」
抱きついているプリンをどうしようかな。起きて俺がいなったら落ち込みそうだなー。と考えながらプリンの頬を軽く摘んだり、突いたりして遊ぶ。
「…うぅん。…ルーク…様…」
寝ぼけてるプリンはめちゃくちゃ可愛い。起きて俺がいなったらから拗そうだしイタズラして起こすか。
プリンの頬を突いたり軽く摘んだりして遊ぶ。ドラグも何も言わないようだ。子供なのかスライムなのか分からないが、プリンの頬はかなり柔らかい。そして弄って遊んでいるとプリンが目を覚ます。
「………ルーク様?」
「起きたか?おはようプリン」
「……おはようございますなのです」
と挨拶してくるが何故か上目遣いでジッと俺の目を見てくる。な、なんだこの可愛さ…と言うか何故ジッと俺を見てるんだ?…まさか俺からキスを待ってるとか?
まさかな…。だがプリンはまだずっと見てくる。こんなに可愛いと頬でもいいからキスをしたくなるが我慢だ!
「ど、どうしたプリン?」
「…な、なんでもないのです!」
と俺の胸に顔を埋めて抱きつく。小動物みたいで可愛い。ずっとこのままがいいが起きるとするか。
「プリン起きるぞ?」
「…はいなのです」
少し残念そうな顔をしているプリン。頭を撫でてやると花を咲かせた様に笑顔になった。後はヴィーナとララだ。
ララはフェアリーローブのフードに入れればいいが、ヴィーナはそうもいかない。ヴィーナはいつもの服で寝ているから、これがまたエロいのだ。それに何故か布団もはだけて如何にも誘っているかの様にも見える。俺は見ないようにしてヴィーナのベッドの横に行き、ヴィーナに声をかける。
「…ヴィーナ?朝だぞ?」
するとヴィーナはタイミングよく寝返りを俺がいる方へ打つ。その時ヴィーナの大きい胸が凄く揺れた。そして今も谷間が見えて腕を組み胸を強調しているポーズになっている。……狙ってやったな?完全に起きてるなと俺は思った。
「…ヴィーナ起きてるだろ?起きないと置いてくぞ?」
「…もう!なんでお前様はこんなに誘っているのに手を出してくれないでありんすか?目覚めのキスをしてほしいでありんす!」
何だよ目覚めのキスって…。白雪姫じゃあるまいし。できるならしたいよ!周りにプリンやドラグがいるのにどうしろと?いやいなくてもチキンの俺は出来ないのだが…。
あぁそうだよ。前の世界では彼女なんて居なかったよ!風俗にすら行った事がない!そんな俺がこんな絶世の美女と話したことなんてまともにある訳がない。そりゃきょどりますとも。
「な、何を言ってるんだ!?そ、そんな事できるわけ無いだろ!?(本当はしたいが…)」
「えぇー…。してほしかったでありんす」
とかなり落ち込んでいるので俺はついつい言ってしまった。
「い、いつかしてやるよ…」
「本当でありんすか!?約束でありんすよ!」
しまったぁー!あまりに落ち込んでいたから言ってしまったぁ!ここで今のは無しなんて言ってしまったらヴィーナはかなり落ち込むだろう。無しなんて言えない。これがもしセレスやリルにバレたら大変なことになるだろう。言わない事を願う。
「そ、その内な…」
「あ、あのルーク様…」
プリンがモジモジしながら俺を呼ぶ。なんだ?トイレか?
「どうしたプリン?」
「その…ボクにもキスをしてほしいなのです」
「……へ?」
一瞬何を言われたか分からなかったがすぐに理解した。そうだよ。プリンも男とは言えまだ子供だ。恋愛のキスではなく愛情のキスぐらい欲しがるだろ。
それにプリンの性格なら好きな人にキスされても嬉しいだけと捉えるだろう。これで断ったらプリンの落ち込む姿が目に浮かぶよ…。仕方がない。
「あ、あぁ。プリンも今度してあげるからな?」
「嬉しいなのです!」
相変わらずドラグは助けずニコニコ楽しんでるだけだ。少しは手を貸してほしいものだよ。さて気を取り直して俺も本題に入るか。
「ヴィーナ少し頼まれてほしい事があるんだ」
「いいでありんすよ?」
即答かよ。それはそれで嬉しいけど…
「どんな頼みか聞かないのか?」
「別に聞かなくてもいいでありんす。わっちはお前様の従者でもありんすよ?もしお前様の判断が間違ってたとしてもどうとでもなりんしょう?」
ドラグやプリンも頷いている。フッと笑顔が漏れる。その信頼が俺には嬉しいよ。
「分かった。ヴィーナに頼みたい事は……」
「わかったでありんす」
「何かあったら念話の指輪で連絡してこい」
「了解でありんす」
レイアに念話の指輪を作ってもらっといてほんと良かったな。しかもどんなに遠くても使えるのはありがたい。
あっそうそう、装備についてだが〈聖戦タクティクスウォー〉は基本、武器と防具そして装飾品は1つずつしか装備できなかった。がここは異世界だ。言ってしまえば指輪は10個装備できるじゃないかと俺は思った。
〈聖戦タクティクスウォー〉では指輪を1つ装備している状態で、他の装飾品を装備しようとしても、既に装飾品が装備されていますと言う文字が画面に出てきて装備出来なかった。
だが、ここは異世界だ。当然身に付ければ身に付けれるほど効果が得られる。簡単に言えば、指輪を10個装備してるのにブレスレットやアンクレットを身に付けるとその効果も反映される。これは俺だけではなく配下達全て同じだ。
〈聖戦タクティクスウォー〉の指輪なのだが、例えば毒無効の指輪。これは毒耐性Lv5の指輪になる。〈聖戦タクティクスウォー〉のガチャから出てきた○無効の指輪は全て○耐性Lv5の指輪だった。また、○完全無効の指輪も何個か出てきたが、それは全て○耐性Lv10の指輪だ。
だがレイアから言わせると毒耐性Lv1〜9の指輪は正直いらない物なのだ。毒耐性Lv10の毒完全無効の指輪を作ったほうがいいよね?と言う事で10以下の指輪は作らないらしい。つかLv10の指輪作れるのかよ。
ちなみに毒耐性Lv5の毒無効指輪をどれだけ装備しても毒耐性Lv5からは上がらなかった。つまり重複はできないらしい。
だが10個指輪を装備できるからと言って全ての指に付けたくないよな。どこの成金なんだよって言いたくなる。ジャラジャラしてるのは俺は好かないから。
さてヴィーナは頼み事で少しの間いなくなる。ドラグとプリンと一緒に出発の準備をしてララは俺のローブの中に入れてやる。
さぁ今日も1日歩きますか!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
出発の準備ができたので、疾風の牙とレナルドさんと共に出発する。道中は何回か魔物の襲撃はあったが疾風の牙がすべて対処した。このアクス領には強い魔物がいない為、襲撃されても大概は何とかなる。
疾風の牙とレナルドさんを襲っていた山賊達は例外らしい。
特に何かが起きる事なく順調に進んでいるがやはり1日では次の村に着くことが出来ず野営となる。
夜は魔物が活発になるからどれだけ魔物が弱くても動かない方がいいのだ。
疾風の牙、リーダーウルガが手に持っている透明なクリスタルを握り潰す。すると薄いがドームのような結界ができる。
「ウルガさんいまのクリスタル?みたいなのは何ですか?」
「うん?ルークお前魔除けの結界を知らないのか?旅をする時には必需品だぞ?」
「そうなんですか?」
「あぁ。これは魔除けの結界っていう魔道具だ。結界の中なら、弱い魔物だけなら近寄っても来ない。だが強い魔物には効果が無いんだよ。そして効果時間は半日で結界が消えるからな」
「そういう物もあるんですね」
「お前本当に何も知らないんだな」
「人里からは離れてましたので」
「そうか」
〈聖戦タクティクスウォー〉には無かった魔道具がこの世界にあるようだ。まだ知らないアイテムには心を揺さぶられる。どんな効果なのか気になる。
さて俺も野営の準備をするか。俺はアイテムストレージから魔道具のテントを出す。
「お前今どこからテントを出した?」
「アイテムストレージですけど?」
「アイテムストレージ?アイテムボックスの事か?」
「まぁそうとも言えますね」
「アイテムボックスなんてかなり希少な魔法だぞ!」
「そうなのですか?」
「お前それも知らないのか?勇者様とか賢者様とかの一部の大魔導師が使えるらしいが。まぁ魔道具のアイテムバックってのもあるんだが、それはかなり高価だがな」
アイテムストレージはこの世界で希少な魔法なのか。ただ、勇者以外にも一部の大魔導師が使えるらしいから、誰でも頑張れば覚えることができるのか?その大魔導師とやらに会ってみたいな。
荷物を持たなくてもいいのなら旅とかはかなり重宝するだろうな。商人は口から手が出るほど欲しいスキルなのではないか?
俺が出したテントは男性陣と女性陣の2つなのだが女性陣のテントから叫び声が聞こえる。
「きゃー!何ですかこれはっ!」
「これは…ありえないでしょ!」
その声に反応してウルガとライがすぐに走り出す。
「どうした!?ナーヤ!レイス!」
「何があった!?」
ウルガとライは女性陣のテントなのに躊躇なく入っていく。おいおいこの世界の男は女性の部屋にノックもせずに入るのが常識なのか?
「きゃー!なんで女性のテントにウルガさんとライさんが入ってきてるんですか!?」
「あんた達ねぇー!」
「ち、ちがうんだ!誤解なん…ぎゃぁー!」
「や、やめろ!俺達はなかま…ぐぁー!」
案の定痛い目にあったようだ。この世界でもいきなり女性の部屋等に入ると痛い目を見るようだ。そりゃそうだよなぁ。
「……イテテ。お前らが叫ぶから何かあったんじゃないかってきたのに」
「それでも乙女の部屋にいきなり入るなんて非常識だわ」
「…悪かったよ。それで?なんで叫んでたんだ?」
「ルークさんが出したテントの中が凄いんですよ!」
「そうなのか?中を見してくれよ!」
さっき女性のテントに入って怒られたのに、また中を見してくれよって懲りてないだろ。馬鹿なのか?と俺は横から口を挟む。
「男のテントも中は同じだからそっちで中を見るといいですよ」
「そうか!分かった!」
そう言ってウルガとライは男性陣のテントを見に行く。そんなに凄いテントなのかね?…そういえばこのテント、レイアが作ったのだったな。レイアが色々な魔道具を開発するからいつもの事と思っていたが、これが一般人の声か。
そして男性陣のテントからウルガとライの叫び声が聞こえる。
「何なんだこれは!?」
「どうなってやがる!?」
レイアが言うには、テント中の空間を違う空間に繫げてるとか。ちなみにプリンが手伝って作ったようだ。プリンの中は異次元の空間だからなんかヒントを得たのかもしれない。
「これはもうテントじゃなくて部屋ね」
「しかもすごく広いですよ?ここに住めますよ!」
「俺が泊まってる宿よりもいい部屋だぞこのテント」
ウルガさんが泊まってる宿よりも良い部屋なのか。
まぁこのテント3人部屋だが、3人にしてはかなり広々としているテントだからな。
「いやしかし商人としてはアイテムボックスにこんなテントは羨ましい限りです」
「ま、まぁ親が残してくれた物ですので」
とはぐらかしておく。アイテムボックスのスキルを持っているからと狙われたりしたら面倒だし。
「そうなのですか」
「さぁ明日は早いので早く休みましょう」
無理やり話を終わらして早く休むことを催促する。野営は魔除けの結界を張っているが、一応見張りはするらしい。俺達のテントには小さいがトワイライト王国と同じ防御結界が備わっている。
少し強い魔物程度ではまずどうにもならない。レイアは色々とオプションを付けたがるから仕方ないか。このテントの性能はとんでもない事になっているのは知っている。
男性陣と女性陣のテントのベットは3つずつ置いてある。俺、プリン、ドラグなのだが、プリンとはまた一緒に寝るだろう。俺も嫌ではないからいいのだが。
女性陣はセレス、リル、ヴィーナなのだがヴィーナは頼み事でいない。ベットが男女共に1つずつ余った。まぁいいか。ヴィーナはその内帰ってくるし。
「プリンはどうする?また俺と一緒に寝るのか?」
「もし嫌でなければ…なのです」
「嫌なわけ無いだろ?むしろ一緒に寝たいぞ。こっちにおいで?」
「はいなのです!」
プリンも一緒に寝ると言われて嬉しそうだ。さて俺もゆっくり休むか。また俺はプリンに抱きつかれて寝る。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
日が昇る前に起き、早朝には出発するため早めに起きる。出発をして、この日は何度か襲撃はあったが無事に村に到着する。そしてその村で一泊して、次の日の早朝に出発して、また街へ目指して歩き出す。もう1日野営をして次の日もまた歩く。そしてようやくカトラスの街が見えてくる。
「カトラスの街がみえたぞー!」
「ようやくか!」
カトラスの街は俺の国と同じぐらいの大きさの城郭都市だ。人口は約10万人と多い。カトラスの街は特に名産とかは無いのだが、王都の南側からくる商人や冒険者は必ずカトラスの街に立ち寄る。なのでかなり栄えている。
さていよいよ異世界の街か!ワクワクするぜ!俺は久しぶりに童心に返ったかのような気持ちだ。カトラスの門の前には人の列ができている。どの街もそうだが入場するには身分証の確認と手持ちの検査等するらしい。お尋ね者や街に悪影響のある危険な素材や薬を持ってないか調べる為だ。
身分証は持ってないが何とかなるだろ。俺は、はやる気持ちを抑えて人の列に並ぶのであった。
余談だがヴィーナやプリンにいつかキスをする約束は既にセレスやリルが知っていた。旅の途中で私達もと約束させられた。どうやら念話の指輪で話しているらしい。俺の知らないところでそんな事が。
これは居残り組の女性陣にも知れ渡っている。帰ったら間違いなく言われるだろう。まぁいいか。別に俺もしたくない訳じゃないし。1人だけって言うのも揉め事になるし。
そう考えるようにして旅に集中する。
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