第二章

第二章1話 王都へ行く目的



みんなと食事をしてから1週間が過ぎた。あの後、色々と話し合い1週間に1回はみんなで集まり食事を取る事に決まった。1週間に1回ってのは少し少ないかもしれないがみんなも忙しいから仕方ない。


とはいえ、仕事で俺に会いに来たりとか、ばったり会ったりしたら少し雑談しているがな。ちなみに俺がトワイライト王国にいない場合は帰ってからすぐみんなで集まる事になっている。


――――コンコン


「ルーク様ぁ!エールですぅ!」


「来たか。入っていいぞ?」


「失礼致しますぅ!」


俺の専属メイドのエールが俺の自室に入ってくる。エールも少し前に俺の自室で悩みを打ち明け、その後はやたら元気なんだよ。元気いっぱい過ぎるというか。


「ルーク様ぁ!会議室の準備は整っておりますぅ!」


「そうか。守護王達はどうだ?」


「はい!タナトス様、レイア様、トール様はまだ来られてませんが集合のお時間までには来られると思いますぅ!」


「そうか」


この世界には恐らく、前の世界の時計みたいなのは無い。


だがこのトワイライト王国では1日に8回鐘を鳴らす。朝の6時から2時間おきに鐘を鳴らしている。そして夜の20時が最後の鐘になる。


今日は会議室でイーリス、守護王達と細かい事を話し合う。タナトス、レイア、トールは仕事だからギリギリになるだろう。先に行っておくか。


「エール、俺も会議室に向かう。会議室にみんなのお茶を持ってきてくれ」


「はいですぅ!お茶の準備してきますぅ!―――ひゃう!痛いですぅ…」


エールは意気揚々にお茶の準備しに行こうとしていたが躓いて転ける。やっぱりエールはエールだなぁ。


「大丈夫か?」


俺はエールを立たせてやる。まぁエールのこういう所が俺は好きなんだが。


「はいぃ…。申し訳ありません…」


「いいよ。焦らなくてもいいから自分のペースで持ってきなよ?」


「怒らないのですか…?」


「怒る訳ないだろ?それがいつものエールだからな」


「ルーク様…。分かりましたぁ!自分のペースで持ってきます!」


とエールはお茶の準備をしに行く。


「さて俺も会議室に行くか」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


俺はノックをして会議室に入る。


「揃っているな」


イ「タナトス、レイア、トールはまだ来ていませんが」


「それは聞いている。まぁ揃うまで待つか」


とみんなで少し雑談しているとタナトス、レイア、トールが会議室に入ってくる。


「よし。みんな集まったな。最初に言っておくがこれは非公式だから気軽でいいぞ」


リ「公式でもトールはいつも通りなんやけどね!」


ト「煩いわい!敬語は苦手なんじゃ!ワシ以外にもヴィーナやレイア、ルーシーも敬語じゃないじゃろ!」


ヴ「お前様も言ってたでありんしょう?個性は大事でありんすと」


レ「トールは言動が年寄り臭いのじゃ!年寄りだから礼儀は分からんみたいな感じなのじゃ!」


ル「…ん。頑固じじい」


リ「プッ…頑固じじいやって!」


ト「仕方ないじゃろ!それがワシの個性みたいなもんじゃ!あとルーシー!頑固じじいではない!」


プ「み、みんな落ち着いてなのです」


タ「プリン、ここは触れない方が身の為なのだよ」


ス「…静かになるのを待つのがいい」


ド「やれやれ。ご主人様の前だというのに…」


リル、ヴィーナ、レイア、ルーシー、トールの話はだんだんヒートアップしていく。


俺はこういうのも好きなのだがここで一番怒らせてはいけない者が口を開く。


セ「あらあら〜。いい加減煩いですよ?議論する価値もない話なら外でしなさい?今はルーク様と大事な会議のお話があるのですよ?なんなら私が外に連れていきましょうか?」


とニコニコして笑顔だが全く目は笑っていないセレス。一瞬でその場は氷のような寒さになる。恐らくだが、殆どの守護王達は冷や汗を流しているだろう。それぐらいセレスの冷笑は怖い。とここで


――――コンコン


「失礼致します。お茶をお持ちしまし……入ってはいけなかったでしょうか?」


入ってきたのはエールだ。エールもすぐにその場を空気を察した。エールはミスとかは多いが、その場の空気が分からない程バカではない。エールは空気を察してオロオロとしている。


セ「エール、大丈夫よ。お茶を皆に配ってあげて?お茶で一息ついてからお話しようと思ってたのよ…ねぇみんな?」


笑顔だが目は笑っていない…がここで反論してしまうとセレスの怒りを買う。それだけはみんな避けたいとおもっている。過去に何かされたと言う訳ではないが怒らしてはマズいと危険のアラームが大音量で鳴っている。


ト「……そ、そうじゃな。丁度喉が乾いていたところじゃわい」


レ「……わ、妾も喉が乾いておる。エールとやら妾にも配ってくれなのじゃ」


ル「…………ん。…お茶飲む」


リ「……エールちゃんウチにも」


ヴ「……エールわっちもお茶が欲しいでありんす」


「わ、分かりましたぁ!」


とエールはここにいる皆にお茶を配る。エールナイスだ!このまま気まずい空気で会議なんてごめんだ。やはりエールは有能だわ。タイミング良すぎ!


それにしてもセレスこえぇー!俺も怒らせないでおこう…。


「そ、それでは会議を始める」


さて俺が話すのは細かな話を決める事だ。俺一人でも決めていいのだが皆と相談したほうがいい。その方が見落としが無い。細かな話は通貨の事や王都に行く事だ。


「まず俺が挙げる議題はこのトワイライト王国の通貨について。今は円になっているがこれをこちらの硬貨にして、この世界の通貨に合わせたい。これについて反対の意見は?」


リ「反対はないんやけど、どうしてこの世界の通貨にするんや?円でもいいんじゃないんかなって」


リルの言いたい事は分かる。だが何れにせよフリージアさん以外の種族も住むかもしれない。なら通貨をこちらの世界に合わしたほうがいい。


「確かに円でも問題ない。だが今後フリージアさんみたいな住人が増えるかもしれないと思ってな」


セ「確かにそう考えればこちらの通貨に合わせるのがいいかもしれないわねぇ」


ト「ふむ。トワイライト王国の通貨を変えるのは俺も反対はねぇ。だが1日2日で出来るようなもんじゃないぞ?」


ド「えぇ。それに硬貨の形も違うと思うのです。現物がなければ作れないのですがご主人様はその辺どうお考えでしょうか?」


「あぁ。それについては俺も考えてある」


タ「それはどういう考えなのだね?」


「人間の街に行く。それも王都だ」


レ「それは迷宮都市って言われてる王都ファルシオンじゃったかのぅ?」


「あぁ。そうだ。そこで硬貨の現物を欲しいが、目的は硬貨の現物ではない」


確かに硬貨の現物は欲しいが別に王都でなくとも手に入る。だが俺は王都に行きたいのだ。目的はいっぱいある。


ヴ「本当の目的は何でありんす?」


「目的は商売だ。現物の硬貨を入手しても再現できるかわからんだろ?特殊な加工がされているかもしれない。なら商売して手っ取り早く稼げばいい」


こちらの通貨をするために、こちらのお金を大量に集めないといけない。それで閃いたのが商売だ。まぁ3割ぐらいは不労所得で楽したいと思っているが。


ス「…我が主は王都に商売しに行くのか?」


「まぁそうだがそれも目的の1つだな」


イ「他の目的は何なのですか?」


リ「もしかして観光とか!?」


プ「ボクも行きたいなのです!」


ル「…ん。私も」


「おいおい観光じゃないぞ。まぁそれも少しはあるが…」


セ「やっぱり観光なのですか!?」


「そりゃ俺だってこっちの世界に来たんだ。観光だってしたいさ。勿論、お前ら全員とな?」


これは本当。守護王の男共とも飲みに行けたりなんてのもしてみたいからなぁ。


ヴ「お前様とデートでありんすか!?行きんしょう!王都に今すぐでありんす!」


ト「落ち着かんかい!」


ド「そうですよヴィーナ。話は最後まで聞きましょう」


「王都に行くのはまず金を集める。このトワイライト王国をこちらの世界の通貨にする為だ。なのでまず商売だな。次に冒険者だ」


冒険者はやっぱロマンだよなぁ!貴族共の犬になるより冒険者で自由に冒険したい!そして自由だからこそ休める日も俺次第!最高っ!まぁ貴族というより既に王なのだが。


プ「冒険者なのです?」


「あぁ。王都は迷宮都市だ。冒険者になって迷宮の奥深くに行けばお宝も沢山あるだろう。もちろん、奥に行けば行くほど危険だがお前達なら楽勝だろう」


ス「…腕が鳴るな」


レ「スサノオ気が早いのじゃ」


「冒険者。これが王都に行く目的の2つ目だ」


ル「…なるほど」


「そして商売や冒険者で名を上げれば王の目にも止まる。正直貴族なんてものにはなる気も無い。なれと言われても断る。力づくで従わせるならこちらも力で何とかする」


正直、貴族や王などのコネクションはいらない。…が、女神様の依頼の件もある。そうした時に王とのコネクションは何かと便利になるかもしれないからなぁ。ただ犬にはならない。


リ「それって大丈夫なんか?」


「いや大丈夫じゃない。だから冒険者で有名になる。俺達を従わせるなんて出来るはずないが、向こうはそれを知らないからな。だから従わせるなんて出来ないと知らしめる為に有名になる」


イ「なるほど。それはいい考えですね」


「まぁ上手く行くかわからんがな。それに俺たちの目的は戦争を止める事。王と知り合いになってる方が動きやすいだろ?王と知り合う為、これが3つ目の目的だ」


セ「3つ目の目的と言う事はまだあるのかしら?」


「あぁ。はっきり言ってこの4つ目の目的が今後一番重要になる」


そういう段階を踏んで最終的に俺が目指す場所。


ト「戦争を止める為、王と知り合うよりも大事だと?一体何じゃい?」


「それはな……このトワイライト王国が独立宣言して国と認めさせる事だ」


「「「「「おぉ!」」」」」


そう。俺の本当の目的はトワイライト王国の建国。いや国は既に出来てるからな独立だな。それが目的だ。王と知り合うのも確かに大事だが一番はトワイライト王国を独立させる事。


タ「だが本当に出来るかね?ここは既にランス辺境伯の領地なのだよ」


レ「確かにそうじゃな。普通なら無理じゃろ」


「それは理解している。だったらここを俺の領地にしてやればいい」


いやだからもう既にランスとかの辺境地だろ!って言いたいだろうが…


ド「そ、そんな事が出来るのですか?ご主人様」


「簡単じゃないだろうがな。上手く行けばいけるとおもう。だがトワイライト王国が独立するのは当分先だ。いきなり独立して冒険者大国の全てが敵になるのは面倒だ」


ト「だからこその王と知り合うってのか」


プ「ルーク様すごいです!」


ル「…ん。すごい」


「言い方は悪いがあの国の王を利用する」


王を利用とかめちゃくちゃ悪い事をしてるように聞こえるが、俺が優先するのはこの国の未来だ。


ヴ「楽しそうな作戦でありんすぇ」


「と言う事で王都にいく。もちろん王都で家を買ったら転移門テレポータルを設置する」


リ「なるほど!それでこっちと行き来がしやすくなるんやね!」


「冒険者には守護王達もなってもらう」


ス「…うむ。…楽しそうだな」


「と言う事で4つ目の目的はトワイライト王国の独立の為の布石」


これがとりあえず王都にいく俺の目的だ。この迷いの森は既にランス辺境伯領の領地だが、奪い取るために動くとしようか。


「さっきも言ったがこの迷いの森の領地を奪う。やり方は……………と言う訳だ」


タ「ククク…。それは面白そうなのだよ」


レ「そうじゃな。フェアリーガーデンに侵入してきたのは大まかに言えば冒険者大国の人間じゃ。その報いをくれてやろう」


まず迷いの森の領地を奪うには段階がある。その1段階目を告げる。


「レイア、迷いの森全体に方向感覚を狂わす結界の魔道具を作れるか?それも一番強力な奴でだ。何個かに分けてもいい」


迷い森全体となればかなり広い。難しい提案かなと思ったが


レ「何個かに分けてもいいなら簡単じゃな」


さすがレイアだ。魔道具に関して右に出るものはいない。


「結界は人間だけに効けばいい。方向感覚が狂っていつの間にか迷いの森の外に出てしまうのが一番理想的だがいけるか?」


レ「お安い御用じゃ」


「よし。次にタナトス。ラガンを拷問にかけろ。拷問は本来ヴィーナに任せるが今回は実験に使ってもいい。だが精神が壊れない程度にやれ」


セ「精神が壊れても私や私の部下の回復魔法なら治せますよぉ?」


「そうだな。もし精神が壊れたらセレスかセレスの部下に治して貰うが、なるべく精神を壊すなよ?」


精神も治せちゃう魔法って便利だなぁ。


タ「でしたら回復魔法を使える者を派遣してもらいたいのだよ」


セ「だったら私の精鋭を1人向かわせるわ」


タ「それはありがたいのだよ」


「よし。ラガンに恐怖と絶対服従を植え付けろ。また逆らったらあの拷問が待ってるって思わせるぐらいにな」


タ「それは楽しい実験になりそうなのだよ」


本当はラガンも殺そうとしたがこいつは利用する事にする。


「と、そういえばまだ聞いてなかったんだが王都にいくのはいいか?」


イ「そこまで考えがあるならいいですよ。危険そうなら止めますが大丈夫そうですし」


他の皆も見てみるが反対は特に無さそうだな。


「じゃあ次に王都にいくメンバーだが…」


一瞬だが女性陣の目付きが変わったような。いや空気が変わったような…。


「王都の道中とかでもそうだが、あまり目立ちたくない。なのであまり目立たないメンバーにする。だが一応聞く。ついて行きたい者は手を挙げろ」


挙げているのはヴィーナにプリン、セレスにリルか。レイアやルーシーはついて行きたいと手を挙げてくれていると思ったのだが挙げてない。俺もしかして嫌われてる?まさか。つい最近家族になろうとかいってたじゃん!お前ら!


「一応行かない理由を聞いてもいいか…?」


イ「執務がありますので」


ス「…我は目立ちすぎる」


ト「ワシは鍛冶をしとる方がいいわい」


タ「私も実験や研究をしたいのだよ」


レ「妾も魔術の研究じゃな」


ル「…歩くの面倒くさい」


ド「わたくしは何方でも」


俺はホッと胸を撫で下ろす。どうやら嫌われた訳じゃないようだ。みんな好きな事をしてるほうがいいらしい。


いやルーシーは歩くのが面倒くさいからだが。まぁ確かにいつもサボったりして部下に迷惑かけてる。ダラダラしてる方がいいのだろう。


ドラグはついて来てくれと言われたらついて来るが、ついて来るなと言われれば来ないだろう。本当は行きたいのだろうが欲望に忠実なのは執事からしたら失格なのだろう。


セ「ルーク様いま嫌われたと思ったでしょう?」


「そ、そんなことは思ってないぞ!」


「そんなに心配しなくても大丈夫でありんす」


誤魔化せない!何故分かった!みんな笑っている。恥ずかしい。


「そんな事はどうでもいい!王都に行くメンバーだがセレス、プリン、リル!後ドラグニルついてきてくれるか?」


ド「畏まりました!全力でお供します!」


やっぱり行きたかったんだなぁー。


「ヴィーナはついてきてもいいのだが…その容姿は絶対にトラブルになると思うんだよね。フェロモン出してるし」


ヴ「嫌でありんす!行きたいでありんす!」


「わかったわかった。ヴィーナ闇魔法使えるな?」


ヴ「使えるでありんす」


「闇魔法で影の中に入ってついて来られるか?」


影を扱う魔法も闇魔法の一部なので使えるはずだ。


ヴ「大丈夫でありんす。影を扱うのも暗殺には必要でありんす」


「よし。じゃあヴィーナもついて来ると。王都出発は1週間後だ。通貨が変わる事についてはまだ民に言わなくていい。目処が立ったらだ。他に話しておきたいことはあるか?」


みんなは特にないようだ。


「では会議を終わる。タナトスはこの後俺について来い。では解散!」


守護王達は立ち上がり自室や持ち場に帰っていく。タナトスは俺についてくる。さて久しぶりにラガンと対面だ。殺さないように注意しないと。


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