第一章15話 この世界について
朝と言うには少し早い時間に俺は起きた。太陽が昇るにはまだ少し早い。
俺は自分の枕の横に目を向ける。そこには無防備に蹲って寝ているララの姿がある。
何故こんなに気に入られたかは分からないが、まぁ可愛いからいいか。
俺は少し悪戯をしたいと思ってしまいララの頬をツンツンする。
んー…ララの頬は赤ちゃんのようにプニプニして気持ちい。
「……うぅん……すぅ…すぅ…」
寝ている姿は可愛くてもっと悪戯してやりたいが、起こしてやるのも悪いからこれ以上は何もしない。セレスも気持ち良さそうに寝ている。ヴィーナは……寝ててもエロい。
そんなことを考えながらテントの外に出る。フェアリーガーデンはまだ物静かで、俺以外誰も起きてないようだ。
暇だ。そういえばウィンドウには便利機能の1つに【念話】というものがあったな。配下達と離れていても会話できる機能なのだが、それも使えなくなっている。
遠くの者と会話出来ないのはやはり不便だな。トワイライト王国がいまどういう状況かも確認する事が出来ない。
まぁこれは色々と考えないといけないな。最悪レイアに手伝ってもらうか。そんな事を考えていると
「ルーク様ここに居たのね!朝食出来ているわよ!」
セレスがやってきた。相変わらずお母さんみたいだ。それよりもうそんな時間が経ったのか!考え過ぎないようにしないと。
「すぐ行くよ」
俺はテントに入り、既に起きているヴィーナとまだ眠そうなララが椅子に座っている。ララは机の上だけど。
「ヴィーナ、ララおはよう」
「おはようでありんす」
「んー…おはようー」
ララは眠い目を擦っている。
「ララ、顔を洗ってきなさい?じゃないと朝食は食べさせませんよ?」
「やー!」
セレスに言われて急いで顔を洗いに行った。そして戻って来るまで待つ。
「洗ってきたー!」
「じゃあ食べるか!」
「いただきます!」
「まーす!」
そして賑やかな朝食が始まる。うん。美味い!セレスかヴィーナの何方かが調味料を持ってきたんだろう。味がしっかりついてて美味しい!ララも美味しそうに食べてる。口の周りにソースなど付いてて汚くなってる。
「ララ、口の周りが汚れてるぞ?……ほら」
「ありがとー!」
俺は綺麗な布でララの口の周りを拭いてやる。何か子供をお世話してるみたいだ。いやララは子供か。
だが一心不乱に食べてる姿は可愛いのだ。と俺はニコニコしながらララの食べっぷりを見てると
「ルーク様」
「お前様」
「ん?なんだ?」
と二人を見ると何故か口の周りがソースだらけになっている。お前ら……。頭を抱えたくなった。いや意図は分かるよ?俺に口を拭いてもらいたいんだよな?だがお前らは子供じゃないだろ!と心の中で突っ込む。そして無言で二人の前にきれいな布を置く。
「何で口を拭いてくれないんですかぁ!」
「ララだけずるいでありんす!」
「セレスは皆のお母さんと思っていたんだけどな。プリン達にも言われてただろ?それにヴィーナ、お前みたいな美人がそんな事するもんじゃないぞ。それにララはまだ子供だ。焼きもちをやいてどうする?」
「わ、私だって皆のお母さんをしていますが、甘えたい時はあるんですぅ!」
「わっちが美人!?お前様、き、急にそんなこと言われても……照れるでありんす…」
セレスは頬を膨らまして拗ねている。可愛い。ヴィーナは頬を赤く染め照れている。こちらも可愛い。最後の方は何て言ったかあまり聞き取れなかったが。
そしてララはこの会話の内容があまり理解できないのか首を傾げながら朝食を食べている。
そんな賑やかな朝食の時間は瞬く間に過ぎていくのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝食を終えた俺達は今、このフェアリーガーデンの村長、というより女王の家の前まできてた。
朝食の後だがずっとセレスが拗ねていたので頭を撫でてやるとすぐに機嫌を良くした。単純な奴だなと思ったのは内緒だ。
「女王様ー!ララだよー!」
と大きく扉の前で叫ぶ。やがて扉がゆっくり開く。
「ララ?もぅ貴方は昨日から居ないと思えば何処に……ルーク様?」
「昨日はルーク様とご飯食べてお泊りしたんだー!」
「な、なんて事を!ルーク様、この子が何かご迷惑をお掛けしませんでしたか?」
「あぁ。賑やかで楽しかったよ」
「そうですか。本当に申し訳ありません」
と謝って少しララを睨んでいるが、そんなララは俺の肩にちょこんと座りニコニコしている。
「いえいえ。今日ここに来たのは色々お話聞きたくて」
「えぇ。さぁ狭いですが中にどうぞ」
中は狭いが人間が入れない狭さではない。ちょっとした屋敷みたいだ。家に入り客室へ案内された。
「さぁお連れ様もどうぞ座ってください」
「ありがとうございます」
少し細長い木のテーブルの近くにソファーみたいな椅子が置かれている。そこに右はヴィーナ、真ん中俺、左はセレスという順番に座る。対面にも同じソファーみたいな椅子があり、俺の正面にフリージアさんが座る。とそこに
「お茶だよー!」
「美味しいよー!」
リリとルルが運んで来る。
「ありがとう」
お礼を言われたリリとルルはニコニコしている。さていきなりで悪いが本題と行こうか。
俺はこの世界についての事を早く聞きたかった。
「フリージアさん、ここに来た理由は昨日も話した通りここが何処なのか、この世界について色々ききたいのです」
「えぇ。分かりました。ではこの世界の事から教えますね」
といいフリージアさんは一枚の紙を持ってきて広げる。
これは…地図か?
「これは地図という物です。そこまで正確な物では無いので大体世界はこんな形だと思ってもらえれば。もっと正確な地図はあるのですが、かなり高価で滅多に出回らないのです。ちなみに地図は勇者が広めました」
なるほどな。道理でそこまで詳細に書かれていないのか。
「で、こちらの大陸が私達が住むナルグランデ大陸といいます」
ナルグランデ大陸はアフリカ大陸と少しに似ている。アフリカ大陸を三倍ぐらい大きくしたらナルグランデ大陸ぐらいになるか?かなりでかい大陸だ。
ちなみにナルグランデの国の自治領を簡単に説明するとアフリカ大陸の左上、出っ張ってる辺りを魔族領のヘルゴーラ。その隣国が神聖ルナミール皇国、アフリカ大陸の真ん中左半分が冒険者大国ハルバード、右半分が魔導大国エクセリオン。
そしてアフリカ大陸下が主に獣王国レオニールが占める。まあ大雑把に言ったらこんな感じだ。もちろんこの五大国以外にも国はある。
ではこのナルグランデ大陸から西に海を渡ったもう一つの大陸なんだろう?
「フリージアさんこのもう一つの大陸は何ていう大陸ですか?」
「この大陸はイルグランデ大陸といいますが、実は大陸がある事は確認されているのですが誰も行ったことがないのです」
「えっそうなんですか?なぜ誰も行かないんですか?」
「海は地上よりも恐ろしい海魔がいるので誰も行こうとはしません。ですのでイルグランデ大陸には楽園があるとか、はたまた何も無い荒野が続くとかも言われてますが、真実は誰も知りません」
なるほど。恐ろしい海魔か。単純に海の中では攻撃する手段が無いから行けないのではないのかな?まぁいつか行ってみたい。
「では次に私達が今いる場所ですが……」
いま俺達がいるのは迷いの森と言われる森だ。この迷いの森は冒険者大国ハルバードの自治領で、辺境のランス辺境伯領内にある。迷いの森は冒険者大国の左下の端っこにある。そのため迷いの森を東に出ればランス辺境伯領、南から出れば獣王国、北から出ればアクス男爵領、西は崖があり海となっている。
ちなみに冒険者大国ハルバードの王都ファルシオンは大国ハルバードの真ん中辺りにありアクス男爵領をさらに北に進めば王都につく。
「となっています。この迷いの森は人が滅多に入ることはありません。あまり進むと方向感覚を失うから人間や獣王国の獣人はこの森を避けていますね」
「なるほどな」
「ここに入る人間は私達を捉えようとする人間だけです。タダでさえ今は警戒しないといけないのに……」
「警戒?何かあったんですか?」
「えぇ。実はここから少し歩いた所に綺麗な湖があるのですが、その近くに街…いえ国でしょうか?が突如現れたのです。この迷いの森もかなり大きい森なので、森達がカモフラージュになっているのですが、私は妖精なので精霊の声を聞けるのです。その国が現れてすぐに精霊が教えてくれました。私が意味の分からない事を言ってるのは確かなのはわかりますが、本当に急に現れたんです!今は何故か認識できないのですが…」
いや意味わかりますともぉ!その国って俺の国だよね!絶対そうだ!やっちまった。というより見つかったのは必然か。認識阻害の魔道具を作る前というか転移してすぐに見つけられてたのか。こればかりは仕方ないな。
だがこれは好都合ではないか?確かに俺の正体をバラすのは軽率な行動かも知れない。でもフリージアさんは信頼できると思う。まだ少ししか話してないが信じても良いと思える。まぁこのローブのおかげかもしれないが。
それに正体を隠してコソコソするより、正体を明かしたほうがこちらも動きやすい。もし何かあった時、力になれるかもしれないし。と言うことでフリージアに正体を明かす事にした。セレスとヴィーナに一応、教えてもいいか目で訴えたが、二人共頷いてくれた。
「フリージアさん実はですね……」
と俺はフリージアさんに俺の正体を明かした。あの国はトワイライト王国という国で、その国の王が俺である事。本当は違う世界にいたが、いきなり国ごと転移した事。まぁ女神のことは省く。
俺がトワイライト王国の王である事を明かした理由は、フリージアさん気づいてそうなんだよな。俺のこと様と呼ぶし。普通の旅人に様をつけないだろ。
「えぇ!?そうなんですか?俄には信じ難いですが、ルーク様がこの世界を何も知らないのは辻褄が合いますね。私は何処かの偉い人かと思ってましたが…」
「何故偉い人だと?」
「それはセレスさんとヴィーナさんです」
「ん?どういう事だ?」
「こう見えて私はそこそこ強いんですよ?でもその私がセレスさんとヴィーナさんには全く勝てる気がしないのです。私はルーク様達と会った時、死ぬ覚悟は出来てましたよ。そんな圧倒的強者のお二人をお連れと言うのですから、それなりの地位にある偉い人かと思うのは当然です」
なるほど。俺には分からないがオーラ?的なのが漏れてたのかな?ある程度強くなれば相手の力量が分かるって話も聞いたことあるし。
「なるほど。それで俺に様を」
「まぁ確かにその理由もあるのですが、ルーク様に様をつける理由は、何方かと言うと【フェアリーローブ】の事が大きいです」
予想以上にローブが活躍した。ほんとつけててよかったわぁ。
「しかしあの国がルーク様の国だなんて……いつか行ってみたいです!」
「えぇ。良いですよ。トワイライト王国にも妖精がいるので、その子達も喜ぶと思います。ですので何時でも歓迎します」
「えっ!ルーク様の国に妖精がいるんですか?もう私達だけと思っていました」
「えぇいますよ。トワイライト王国は人間の国ではなく魔物の国なんです。あぁ悪い魔物ではないですよ?」
「そうなんですか!行ってみたいですね!」
「その時は是非、案内は俺がしますよ」
あっそうそう。フリージアさんから聞いた話だが、この世界ではエルフや獣人、ドワーフは人らしい。〈聖戦タクティクスウォー〉では魔物側だったけどな。さて、この世界の事を色々聞けたから次は魔法の事を聞きたい!
「この世界の事はある程度分かりました。もし宜しければこの世界の魔法の事を教えてもらいたいのですが」
「えぇ。良いですよ。少し長くなりますが」
「構いません!お願いします!」
と俺は新しい玩具を見つけた子供の様に目をキラキラさせた。その顔を見てフリージアはフフッと笑う。
「えと…何ですか?」
「いいえ。何でもありません」
一体何なんだ?気になる!が追求しても教えてくれなさそうだからこれ以上は何も言わない。
「では魔法についてですが…」
とフリージアさんは魔法について語るのである。
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