第一章4話 金の少女の正体
俺はゆっくりと目が覚めさた。
いつの間にかベットの中にいた。今度は真っ白な空間じゃなくて安心した。
「…知らない天井だ」
いや知っている。いつもはログアウトしているからあまり見たことがないが間違いなくトワイライト王国の自分の部屋の天井だ。
ベットはプリンセスベットみたいな天蓋などがついてるベットではなくキングサイズの普通のベットだ。普通と言っても俺からしたら豪華だ。
「…今何時だ?」
時計はない。時間が知りたい時はウィンドウを開いた画面の右上に表示されるのだが無くなっている。
仕方ないとバルコニーに目を向ける。まだ日は登ってないようだ。おそらく4時か5時辺りだろうか。
立ち上がって鏡の前に行く。鏡にはルーク・シルバ・トワイライトの顔が映っている。
「新道龍也よりイケメンだな。だがこの世界では普通なんだろうな」
髪は黒髪で目は黒。身長は168。体はガチムチではなく程よい筋肉がついている。服はバスローブを纏っている。
「俺昨日、風呂入って寝たのか?覚えてない…」
そんなどうでもいい事を考えるが、まだ早いからもう一眠りする。二度寝最高だ。
それにベットがふかふかで気持ちい。心なしかいい匂いがするし。………ん?いい匂い?何故香りが?いや異世界にきたから当たり前か?
色々頭を悩ませていたがふかふかベットには勝てず、すぐに寝た。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
コンコン。誰かがドアをノックする。だが俺は熟睡しているので当然気付かない。
コンコン。もう一度誰かがノックする。
「主様?主様?まだ起きていませんか?」
元気な明るい声なのだがどこか慌ててるような少女の声が扉の奥から聞こえるが、やはり熟睡してるので主様からの返事はない。
「今は緊急事態です…仕方ないです……主様入りますね!」
本来、主様から許可がないと入れないのだが緊急事態ということで許可無く入る。
後で罰は受けますと心に覚悟して。
そしてベットの前までいき主様の肩を揺らしながら声をかける。
「主様!起きてください!主様!」
「…ん…ぅん……?」
ようやく目が覚めた俺。目の前に金色のクリクリ目をした可愛らしい少女がこちらを覗き込んでいる。
俺はこの少女を知っている。
「…んー?イーリスか?おはよう」
「主様おはようございます!」
イーリスと呼ばれた少女はニコニコしながら笑顔を向けてくる。イーリスの後ろには尻尾がゆらゆら揺れている。そして頭の上には三角の尖った耳がピコピコと反応している。可愛い。そうイーリスは狐の獣人だ。
イーリスの見た目は外見14歳ぐらいで金髪の髪は肩ぐらいまで伸びてる。そして何より巫女服だ。
こういう服や身長、口調など細かな設定を決められるのが〈聖戦タクティクスウォー〉の醍醐味だ。
イーリスは俺のただ一人の側近だ。ちなみに俺は魔王側だ。イーリスの種族は虹九尾。〈聖戦タクティクスウォー〉ではかなりレアな種族である。
プレイ開始時に側近を一人決めるのだがエルフ(エルフも魔王側)やら狼系、スライム系よりも人気がなかったのが狐の魔物だ。
それは何故かと言うと
スライムはゴミなど街を綺麗にしたりと重宝される。
俺以外にも狐の魔物を最初に選んだ奴はいるが野良モンスターにもすぐに殺られる。かなり育成が難しいモンスターなのだ。あまりに難しいので狐の魔物を選んだ初心者のほとんどが最初から作り直していた。
それでも俺は狐が大好きだからずっとこのままで行くことにした。
だが〈聖戦タクティクスウォー〉がリリースされて3年、最初から狐の魔物を選ぶ初心者が全体の1%を切ったので運営が救済処置のため4次進化したレベル100の狐の魔物に、ある特殊な素材を使えば特殊進化できるようになる。
いや救済ならステータスをもっと強くしろよ!と思ったのだがそこら辺のバランスを変えたくなかったのか、特殊進化追加と言う形になったのだ。
しかしそのとある特殊な素材がかなり鬼畜だった。そのとある特殊な素材はオーブという素材でたまにイベントで手に入り他ではガチャぐらいしか手に入らない。そんなオーブを九種類集めないといけない。
もちろんユーザーから批判が上がり誰もが投げ出した。でも俺は更に3年の月日をかけて集めた。
かなり課金もした。○十万ぐらいはかけただろうか?
そしてついに進化したのが虹九尾だ。
尻尾が赤、黄緑、水色、茶色、白、黒、黄色、深緑、灰色の9色でそれぞれ色の対応した魔法を扱えるチートだ。
ちなみに黄緑は風、深緑は木、灰色は重力。
この虹九尾はドラゴンにステータスは劣るものの色々な魔法を駆使してドラゴンと対等に張り合える力を得た。
虹九尾にしているプレイヤーはまだ俺しか見たことなかった。
ただイーリスは戦闘の時だけしか九尾にならない。
普段は1本(黄色だけ)尻尾を出している。
何故黄色なのかはその色が一番狐の色に近いからである。ちなみに耳はちゃんと狐色だ。
どのモンスターもある程度レベルが上がると人化できるようになる。俺の側近や守護王は皆人化できる。
まぁそんなこんなでイーリスは超レアなモンスターなのである。
「お腹が空いたな。食堂に行くか」
「お供します!」
今までの会話を反射的に返していたがようやく違和感に気付いた。お供します?今まで俺がお供せよなど連れて歩いてたがお供しますなど言われたことがない。
そして微かに匂うイーリスからの良い匂いが。
ゲームでは嗅覚は無かった。そもそも触れようとしてもホログラムみたいに透き通るのだ。
これはプレイヤーが変なことを出来無いようにする処置だ。
だが今なら……
「イーリスこっちにおいで」
「はい」
イーリスは不思議そうな顔でこっちに来る。そして側にきたイーリスのほっぺたを触る。
「ひゃう……」
イーリスはいきなり触れられた事によって変な声が出てたが俺は気にせず触る。驚いたことに触れるし体温があるのだ。そしてやはりいい匂いがする。
「はうぅ…あの主様?いきなりどうしたのですか?」
「あ、あぁ…少し気になったことがあって」
イーリスは頬を赤く染めながらも尻尾揺らしてる。犬と違って狐が嬉しい時の尻尾の揺れ方はゆっくりなのだ。
そして俺は理解した。
女神ミール様に簡単な命令しか聞かない配下でも大丈夫なのかと聞いた時に、それは大丈夫だからとか言ってたのを思い出した。
こういうことだったのか。しかもいきなりどうしたのかと聞いてきた。
これはイーリスが自分の思考で物事を考え発言してることがよくわかる。
女神ミール様の言葉通りならおそらく他の守護王達も既に自分で考えを行動できるようになっている。
これは少し楽しみだ。
今もイーリスは俺にされるがままになってるがこれでは俺が小さい子に変な事をしてる風に見える。
俺はロリではない!狐が好きなだけだ!まぁ14歳ぐらいにしたのは俺なんだが…
と思いながらイーリスの頬から手を離す。
「イーリス、食事をしたら現在の状況を確認したい。全ての守護王に一時間後謁見の間にこいと伝えろ」
「わかりました!」
俺は普通の服とズボンの上にお気に入りのローブ、フェアリーローブを羽織る。
「王様って感じはしないが王の服や貴族の服って何かいやなんだよな。やっぱローブ羽織るほうが好きだな」
そして俺は足早に食堂へと向かう。食堂について早々と食事を終わらし謁見の間に向かう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
謁見の間に入ると既に十人の守護王が頭を下げ跪いている。そして俺は玉座に座り
「面をあげよ」
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