episode.3
あの日から数日。アプリを通じて君とは何度か文字で会話はしたけれど、あえてはいない。君が学校に来ないからだ。なんで来ないのだろう。とは思うけど、聞けないし、クラスのやつに聞こうにも誰にも話しかけたこととかないしちょっと無理だ。怖い。そんな怖気付いてばかりの日々を過ごしていたらもういつの間にか君と数日あっていなかったんだ。会いたいよ。僕なんかに君に会いたいと思える権利なんざないけれど、それでも思ってしまうんだ。僕は君に再開してもっと弱くなったみたいだ。
ねぇ、もしもあの時僕がもっと早くに三上さんを助けられていたら今どうなっていたのかな。君に会えていなかったのかな。俺は昔から変わらない性格だったのかな。君は僕に「好き」とは言ってくれなかったかな。ひどいことだとわかってるけど、もしこれが君に再会して、君に恋するのに必要なことだったならあの事件があってよかったと思ってしまう自分がいるんだ。そんな自分がひどく嫌いで嫌いで仕方がないよ。
---3年前
中学二年生の始業式。初めて見る顔なんて誰一人としていない。というわけではなかった。知らない奴が一人。今年、三重から転校してきたという三上楓さん。俺は、早速話しかけた。
「ねえ、三上さんってどんな趣味あるの?」
いつも通り、屈託ない笑顔とテンションで聞いた。しかし、返ってきたのはとても小さな声で、なんで私に構うんですか。の一言だった。俺はとにかく驚いた。なんでって初めてあった子がどんな子が知りたいのだから、趣味くらい聞いて当然じゃないかと思った。しかしすぐに自分が名乗っていないことに気がついた。名乗りもせずに趣味を聞くなんて失礼すぎたのだろうかと思いすぐに、「俺は、一ノ瀬樹!趣味は、、ゲームとスポーツ!」と言った。だが、三上さんはそれに反応することもなく、また趣味を教えてくれることもなかった。どうしたものだろうか。と困っていると、今度は俺と仲良のいい女子たちが三上さんに趣味を聞こうと試みた。しばらくは答えてくれなかったが、何度目かでようやく、読書です。とまた小さな声で答えた。しかし、そこで話がまた途切れてしまい女子たちも困り出したので、また俺が声をかけた。
「読書いいよね。俺も好きだよ。どんなジャンルが好きなの?俺は小説だとミステリーが一番好きなんだけど。」
というと、少し三上さんの顔が明るくなったように見えた。気のせいかと思うくらいの差だったが、それが本当だとわかるまでにそう時間はかからなかった。三上さんが私もミステリーが好きで、特に佐藤青南先生や、太田紫織先生が好きです。とさっきよりも大きな声で返ってきたからだ。それに加え三上さんが特に好きだと言った作家先生は自分も好きだったので、そこからは話が少しずつ盛り上がり始めた。俺がその作家先生がどんなものを書いているかなどを周りに説明しながら話を進めていったから、だんだんみんなも三上さんも話が盛り上がっていき、いつしかそれは彼女の前の学校の話に移っていた。
女子の誰かが前の学校について教えて欲しい。といったのを引き金に、また三上さんは黙りこくってしまった。俺も、クラスのみんなもまだガキだったから教えてくれない三上さんにだんだん腹が立ってきた。何度聴いても教えてくれずただずっと黙りこくっている彼女が嫌になり始めた。そこからだろうか、最初は女子たちが陰口を言うくらいのいじめが始まった。しかし、いじめというのはいとも簡単に酷く残酷になっていくもので、一週間後にはあらぬ噂が立ち始め、二週間後には三上さんの持ち物が消えては現れるという怪奇現象のようなことまでやり出した。
俺は関わらずただただずっと傍観者であり続けた。可哀想だ。と思う気持ちを心の奥底にしまって。本当は、言いたかった。やめてやれよ。と。しかし、それをいってしまえば次のターゲットは俺になるのではないかという恐怖が勝っていた。そんなこんなで時は過ぎ、いつしか三上さんへのいじめは真骨頂を迎えていた。殴られ蹴られ、浴びせられるのは無視か罵詈雑言か水。
見ているこちらまで嫌な気持ちになりかねないような内容だった。しかし、奴らは意外にも賢明だった。何一つとして証拠は残さず、水を浴びせた時はすぐに奴らの下っ端のような奴らが、大丈夫。といかにも心配してますふうを装って着替えとタオルを三上さんに渡し、最後まで面倒を見た。殴る蹴るの強さを調節し絶対にアザが残らないようにした。
だから、三上さんも告発するにできなかったのだと思う。証拠は?といえばそこまでだからだ。
ある日、奴らは教室で三上さんの肩を突き飛ばした。三上さんは容易に窓際まで飛ばされ奴らを睨んでいた。しかし、奴らは三上さんのそういう態度も気に入らなかったのか、そのかたを踏みつけた。
そんな時だ。俺の幼馴染である棗優希が「やめなよ」と声をかけたのは。優希は「なんでそんなことするの。別に三上さん何も悪くないじゃん」と泣きながら言い張った。俺は、場違いにもそんな優希の姿がかっこいいと思った。でも、優希は立場が低かった。スクールカーストなんて糞食らえだが、やはり存在するものは存在するのだ。だから、優希が言っても奴らは、何?こいつが前の学校のことが教えないのが悪い。と理不尽な理由を述べた。優希はそれでも戦った。
「どうしても言いたくない理由があったんだろうから、言わなくて当然じゃない!あなたたちにいうことを強制する権利なんかない!」
その姿を見て、俺は何かに背中を押されたような感覚を味わった
「そうだな。誰にでも秘密はあるし、まあもういいんじゃないのか?」
と偉そうに言った。しかし、俺はあの時一応立場が強く入られていたから俺がそう言ったのを境にみんなは三上さんをいじめるのをやめた。
しかし、俺が優希と一緒に三上さんがたつのに手を貸そうとすると、三上さんは優希の手を取り俺の手を払いのけ、俺のことを奴らに向けるのと同じ目をしていった。近寄るなクズが。と。
そう言われて初めて目が覚めた気がした。それはそうだ。俺が一言いうだけで解決するはずだった。俺が三上さんか奴らに声をかけていれば、こんな状況にはならなかった。なのに。俺は逃げた。優希が言ったことに便乗したクズだ。最低の外道だ。
三上さんは、優希に助けられてからすぐにまた転校していった。奴らはもう何もなかったように普通の暮らしをしている。しかし、俺の時間はあの日三上さんに言われてから動いていない。それに気づいた俺は、必死になって動かそうとした。しかし、所詮はクズの試み。止まった時計の針はビクともしない。
だから、僕は少しずつでも変わろうとした。一人称も俺から僕に変え、他人に関わらないようにした。感情を殺し、無を保った。それでも、時計の針が動くことはなかった。あの日、君に会うまでは
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