幸せを運んだ緑のたぬき

もちー。

第1話

はぁ、、、今年も1人で緑のたぬき、かぁ。

ピコン。

「やったぁ!」

私は思わず口に出して喜んでしまった。


「どうしたのさ、朝から今世紀最大に嬉しいみたいな顔して。」

「もしや、彼氏でもできたんじゃ、、、」

「あのねあのね!大晦日、お父さん帰ってくるんだって!」

「あ、スルーしていく感じね。」

「そういや、茜のお父さんって今海外だしな。」

そう。私の家族はただ1人、今海外へ単身赴任中のお父さん。お母さんは私が小さい頃交通事故に遭っちゃって、そこからお父さんが1人で私を育ててくれた。今までは1人で緑のたぬきを食べてたけど、今回はお父さんが帰ってくるから2人で食べれる、、、嬉しい、、、

「じゃ、今日の合奏ミスなしじゃないとね。」

「そうだぞ〜?」

「梨花も紫音も容赦ない、、、」

「まぁお前にとっちゃ簡単だろ。茜部長。」

「あ!ぼっち晴臣!」

「いい加減そのあだ名やめろよ。」

「むーりー!」

「部長副部長カップル。イチャイチャするのは放課後とかにしてくれません?」

「カップルじゃないしイチャイチャもしてない!友達!」

「ん〜?ほんとかぁ?」

「ほんとほんと!ただの友達だって!」

「ただの友達、か(ボソッ」

「晴臣!なんか言ってよ!」

「あ、あぁ。友達だよ友達(まだ、、、な。)」


ズキッ


え、自分で言っといてなんだろ、、、

「それより早く鍵開けないとまずいんじゃない?」

「ほんとだ!1年生待ってる!」

「せんぱーい。頑張って〜。」

「もう!他人事にして!」

「はいはい。ちょっとは手伝うよ。ほら、紫音。」

「えぇー、可愛い1年生に早く会いたいー。」

「すぐ会えるって。」

「はいよぉ。」


コンコン

「失礼します。2年2組の凪原茜です。吹奏楽で使う鍵を取りに来ました。」

「あ、凪原さん。」

「赤坂先生。今日の予定は、、、」

「今日は、10時から合奏で、11時40分に片付け。基礎合奏もあるから、それも伝えてね。」

「了解しました。ありがとうございました。」


ふぅ。終わったぁ、、、

「終わったみたいな顔すんなよ。鍵開けしないといけないし点呼もしないといけないだろ。」

「わかってるって!鍵開け、手伝ってくれるよね!」

「わかったから。早くするぞ。」

「OK!」


「皆揃ったー?点呼始めるよー。」

「揃ってるよ!」

「じゃあクラリネット。」

「全員います。」

「フルート。」

「全員います。」

「サックス。」

「全員います。」

「じゃあ、、、」


省略


「はい!今日は、10時から基礎合奏と合奏で、11時40分片付け!パートごとで音合わせしてから来る事。じゃあ解散!」


〜部活が終わり〜


「今日すごく調子良かったじゃん。特にソロの所!」

「やっぱお父さんの力すげぇな。」

「ファザコンめ。」

「ふふーん。今日部活最終日だから楽器持って帰ってお父さんに披露するんだ!」

「え、スルー?」

「まぁ嬉しそうで何よりだよ。」

「あ、じゃあばいばい!梨花、紫音!」

「私らの事もお父さんに紹介するんだぞ〜。」

「もっちろん!じゃあね!」

「ん。ばいばい。」

「ところでお前さ、」

「どうしたぼっち晴臣。」

「そのあだ名やめろ、、、てかやっぱいいわ。」

「そう?じゃあいいけど。」


「(好きな人、、、聞けねぇなぁ。)」


「あ、じゃあね〜ぼっち晴臣!」

「はぁ、もうあだ名のツッコミしないでおこうかな、、、」

「大晦日、暇だからLINEするー。」

「いや、それはいいんだけどな。まぁいいや。じゃあな。」

「ばいばーい!」


ガチャ

「ただいまー。ってあれ?おばあちゃん今日居ないのか。あれ、置き手紙ある。」


『茜ちゃんへ。今日はおばあちゃん用事があって1人で過ごして欲しいの。お願いね。』


えー。おばあちゃん居ないのか。何しよ。あ!カレンダーに書いとかなきゃ!

お父さんが帰ってくる!!!っと。ふふ。楽しみだなぁ。


〜大晦日当日〜


『晴臣ー。起きてるー?』

『いや、LINEするのはいいんだけどさ。今、朝の5時。』

『返事してくれたからいいじゃん!』

『俺以外のやつにすると迷惑だぞそれ。』

『はーい。』

『で、お前の父さんいつ帰ってくるんだっけ?』

『えっとね、16時位って言ってた!』

『はえぇじゃん。』

『そう!でもソワソワするからさ、ちょっとミニ合奏しようよ!』

『まぁいいけど。迎えに行くからちょっと待ってろよ。』

『合奏場所は晴臣の家だよね?』

『ん。じゃあ後でな。』

『うん!』


今日は良いことずくめ〜♪


ピーンポーン

「はーい。」

「迎えに来たぞー。」

「はーい!!」


えっと、楽器持って、っと。


「早かったね、晴臣。」

「そりゃ迎えに来るってったってすぐそこだからな。じゃあ行くぞ。」

「うん!」


「そういや晴臣はソロの調子どう?」

「お前に心配されるほど下手じゃねーよ。」

「はぁ?人が折角心配してんのにさ!」

「お前の方こそ大丈夫なのかよ。」

「晴臣に心配されるほど下手じゃありませんー。」

「うわ。コイツ返してきた。」

「ふふーん。そんな簡単に負けませーん。」

「チッ。」

「あ!今舌打ちしたでしょ!」

「してねーよ。てか家着いたし。合奏するんだろ?」

「うん!てか、いつ見ても晴臣ん家デカいよね。」

「まぁ父さん有名なサックス奏者だしな。」


ガチャ

「じゃあ荷物そこら辺に置いて、準備出来たら合奏するぞ。」

「OK!」


「準備出来たよ。」

「じゃあやるぞ。1.2.3.4。」

「〜♪♪〜〜〜♪」

「1回通したけど、、、」

「まずA。真ん中で息途切れるな。それからF、リズムがちょっとだけ狂ってた。あとはソロ。これは自分で分かってるだろ。」

「うん。後、Cの前半のピッチとGの連符。」

「もう1回だな。」

「そうだね。」

「行くぞ。1.2.3.4。」

「〜♪♪〜〜〜♪」

「もう1回。」

「Gだけやろ。」

「OK。1.2.3.4。」

・・・・・・

「昼飯食べるか。」

「そうしよ〜!」

「ちょっと待ってろ。」

「分かった。」

「ふんふふーん。」

「鼻歌してるとこ邪魔するが、サンドイッチ持ってきたぞ。」

「おぉ〜!」

「じゃ、いただきます。」

「いただきまーす!ん、美味しー!晴臣が作ったの?」

「まぁな。簡単だから特に何も無いけど。」

「すご。」

「あんま多く食べんなよ。晩飯、父さんと緑のたぬき食べるんだろ。」

「うん!」

「それじゃ、食べ終わったら再開するか。」

「そうしよ!」


「もうそろそろ帰った方がいいんじゃね?」

「じゃあまた今度ね!」

「ん。送ってく。」

「いいのに〜。」

「送るっつってんの。」

「ありがと!」

「じゃあ行くぞ。」

「待ってよー。」


「そういえばお前、男子と関わりほとんどねぇよな。」

「まぁ晴臣いたら十分かなーって。」


え、何言ってんの私。別に晴臣なんとも思ってないはずじゃん。


「お前なぁ、、、まぁいいけど。(なんでそんなこと言うんだよ。期待するだろ。)」

「じ、じゃあね。」

「おう。じゃーな。」


ガチャ

「はぁ、、、モヤモヤするなぁ、、、」


いや、好きじゃない。でも、、、


「私、晴臣いなくて生きれるのかな。」


ダメダメ。そんなネガティブになっちゃ。

お父さん、まだかなぁ?


3時間経過、、、


現在18時。お父さん、16時位に帰ってくるって言ったよね、、、?

でも、飛行機が遅れてるのかも。いつも約束は守ってくれたし、あとちょっとの辛抱。


あ、れ、、、?今、21時、だよね。どうしよう。お父さん、帰って来ない。


『ねぇ晴臣。』

『どうしたんだよ。今父さんといるんじゃないのか?』

『それがね、全然来ないの、、、』

『きっと来るって。』

『約束、忘れちゃってるのかな、、、』

『そんなわけ無いだろ。』

『そう?』

『あぁ。もうちょい待ってみろよ。お前が1番、お前の父さんの事分かってるだろ。』


そうだ。お父さんは約束破るような人じゃない。


『ありがと。』

『ん。』


22時、、、23時、、、

来、ない、、、。なんで。帰ってくるって言ったじゃん。なんでよ。


「お父さんのバカ。」

ガチャ

「茜!」

「お、お父さん、、、?」

「茜!」

ギュッ

「ごめんな、ごめんな茜。寂しかったよな。」

「ううん。お父さんが来てくれたからもう寂しくなんかないよ。」

「じゃあ、お父さん緑のたぬき買って帰って来たし、、、食べるか!」

「うん!お父さん!」

「しばらく帰って来れなかったから、たくさん聞かせてくれ。学校の事や友達の事。」

「うん!あのね、、、」


この時食べた緑のたぬきの味は、いつもと同じものなのに違うような、温かくて美味しい味だった。


「晴臣、、、ありがとね(ボソッ」

「どうした?茜。」

「ううん!それで、友達がね、、、」

Fin。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幸せを運んだ緑のたぬき もちー。 @motiai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る