第26話「不穏な来訪者」

「はい。ということで、キュウカも住むことになりました。」




ニレイが落ち着いた口調で花成たちにいった。








「よろしくねーん!アタシのカナちゃん博士!あ、博士はいらないのか。」




勢いよく抱き着かれ、キュウカの爆乳が花成の顔を押しつぶした。




「く・・・苦しい・・・」




ふにょんと柔らかくもハリのある胸は花成の息を止めるくらいの圧はあった。








「ちょっとアンタ!いつもそうやって花成にベタベタして!」




「ええ~!ほんっとナナミクってけちんぼだよね~」




「い・・・痛い・・・」




キュウカの次はナナミクの滑らかな足に踏まれ、花成は何かの扉を開いてしまいそうだった。








「こらこら、花成が痛がってますよ。」




2人がもみ合ううちに花成が怪我をしそうだったのでニレイが止めにはいった。




「ニレイ・・・お前も踏んでる・・・!」




「あっ、すみません。」




花成を踏んでいる足をどけたが、なんだかんだニレイの蹴りが一番痛かった。








ニレイは他のセックスアンドロイドと比べても少し天然なところがあるようだった。












一方、ナナミクとキュウカは相変わらずもめていた。




何故か二人はお互いの服を脱がしあっていて、キュウカの爆乳からナナミクのほっそりとした脚まで全て見えてしまっていた。




起き上がったはずの花成はそれを見て、くらっとして倒れてしまった。




「もう~!何してるの!ナナミクのえっち~!」




「バッ、アンタがさきにやり始めたんでしょ!てか、そのデカチチを見せるな~!むかつく!」








「ピンポーン。」




ギャー、ギャーと騒いでいる二人をあきれて見ていた花成は家のインターフォンが鳴るのを聞いた。








「誰だ?はーい。おい、お前ら、お客さんかもしれないから。ちゃんと服着とけ~。」




そう言いながら、玄関に向かっていく花成をニレイはきょとんと見つめていた。












「はいはーい。どなたで・・・。」




玄関の扉を開けた花成は驚きのあまり思考停止状態に陥った。








「久しぶりね、花成。」




目の前にいる紫色の髪の毛を大仰にくるくると巻いているその女性は花成が記憶から消していた人物の一人だった。








「・・・・・・お久しぶりです。ヤツミ姉さん(点々)。」




長い長い沈黙の後、目の前の女性の名前を呼んだ。








「フン。本当は郵送で送るつもりだったのですが、た、たまたま近くに寄ったから。はい、これ。」




ヤツミ姉さんと呼ばれたその女性は1通の封筒を差し出した。








「これは・・・?」




「・・・お父様からよ。」




少し間を置いて、冷たくヤツミは告げた。




「あいつが?(点々)」




後ろからこっそり覗いていたニレイはいつもは優しい花成があれほどまでに恐ろしい声を出すのを初めて聞いた。




仮にも自分の父親に対しての態度としてはどうなのだろうか、何かがありそうだとニレイは思った。








「花成。貴方がお父様をどう思うかなんて勝手ですが、今回は貴方にも悪い知らせではないかもしれませんわ。」




「どういう意味だ?」




「詳しくはその手紙をお読みなさい。では、私わたくしはこれで。・・・というより、さきほど人の声が聞こえたような気がしたのですけれど。」




ヤツミはバサリと扇を広げ口元を隠した。








「え?あ・・・」




まさか、ヤツミがこの家に来るなど思いもよらなかったので、ニレイたちのことを見つかったらどう言い訳しようか考えていなかった花成は動揺した。




「あら、そこに人が・・・?」








その時、ふとニレイが見ると、ナナミクもキュウカも同じようにドアの隙間から花成と謎の美女のようすをみていたのだった。








「あっ・・・」




ヤツミと目が合った三人はずるっとコケてドアが開いてしまった。








その時、結局、ニレイ以外の二人は服の脱がしあいで全裸だった。




「きゃ・・・きゃー!!!




か、か、花成が裸の女性と同居・・・!しかも・・・3P・・・じゃない4P・・・!じゃなかったキャー!変態!」




それまで冷静沈着だったヤツミは悲鳴を上げバターン!と勢いよくドアを閉めた。








「ご・・・ごめん花成。」




全裸のまま抱き合う形でコケていたナナミクとキュウカは気まずい気持ちで花成に謝った。








「・・・・・・。」




「ご、ごめんね!カナちゃん!ま、まさかお姉さんだなんて!た、確かにどことなく似てたもんね!ほらか、髪の毛の色とか・・・」




黙ったままの花成にビビってキュウカが慌てて喋りながらポリポリと頭を掻いた。








しかし、ニレイは花成が二人のことではなく、目の前の手紙に対して集中しているからリアクションが無いのだと気づいた。








「うん、まぁ良いんだ。たいしたことじゃない。それに俺はヤツミ姉さんのこと、本物の家族だなんて思ってないから。」




一瞬もとの優しい姿にもどっていた花成は再び厳しい態度になっていた。




「それって・・・どういう・・?」








「ね・・・ねぇねぇ!その手紙なんて書いてあるの?」




話を逸らすためにナナミクがきいた。




「そういえば確かに何なんだろうな。」




花成はヤツミの言った「今回は貴方にも悪い知らせではないかもしれませんわ。」 という言葉を思い返していた。








ナナミクに急かされるまま花成は手紙を開いた。




「なになに・・?『遺産相続の話し合い』・・・だと・・・?」




「遺産ですか・・・?」




一番花成と長い間住んでいるニレイはそういえば花成から家族のことなど聞いたことも無かったと思った。








「もう死んでるんだ・・・。」




「え?」




一瞬、ニレイは花成の言葉が聞き間違いかと思った。








「俺の父親、翠石峰スイセキホウ 成康ナリヤスは死んでいる。」

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