第17話「第二のアンドロイド」
それは突如として起こった出来事だった。
花成が三繰のことを好きだと改めて確信し、ライサが道の助言で危機感を覚えたあの遊園地に行ってから既に半月ほど経ったころだった。
花成とニレイがいつも通り学校から家に帰ると突然ガタンという音とともに机の引き出しが開いた。
「えっ。」
あまりにも突然の出来事に花成はそれ以外何も反応することができなかった。
花成は引き出しから急に出てきたものにぶつかりその下敷きになった。
「な・・・何かこんなこと前にもあったような・・・」
そう思ったのもつかの間、金切り声のような高い悲鳴が上から襲ってきた。
「キャー!!!何してんのよ!」
「ぐへぇ!?なんだ!?」
そう、机から出てきたのは小柄な美少女だった。
美少女はハーフのような端正な顔立ちと、輝くような金髪、太陽のような黄色い瞳、透き通る白い肌、そして、裸だった。
更に今、美少女の細く綺麗な形の脚が花成のことをこれでもかと攻撃していた。
「イヤァー!」
「おい、痛い痛い!待てって!とりあえずどいてくれ!蹴るなぁー!」
「えっ、あっ、そうね。」
花成は混乱して自分の上から飛びのいた美少女を見た。
美少女は胸のあたりと股のあたりを抑えジトッと鋭い目つきでにらみつけた。
ちなみに隠しているものの胸はツルペタだった。
「・・・子供じゃん。」
思わず出たその言葉に美少女は花成の頬に反射的にビンタした。
「あ、あんたねぇ・・・!あっ。」
花成に何か言おうとした美少女がニレイのことをぽかんと見つめ、言葉を失った。
「?」
思い出せないがニレイはこの美少女のことを見たことがある気がしていた。
「・・・ニレイ。」
美少女はそう言うと笑みのような泣いてしまう直前のような複雑な表情をしていきなりニレイに抱きついた!
「えっ?お・・・?」
花成は全く状況が飲み込めない。
「ニレイ!」
今度は泣きながら嬉しそうに美少女はニレイのことを抱きしめた。
「あなたは・・・?」
「えっ?忘れちゃったの?アタシよアタシ!」
美少女は自分のことを指さし、語気強めになった。
「えーと・・・」
ニレイはもう少しで思い出せそうだった。
確実に、未来で花成博士と同じく大切な存在だったが、タイムスリップの影響で吹き飛んでしまっていた。
「もう!ほら!これなら分かる!?」
そう言って美少女は豊かな自分の金髪ロングヘアーを手でツインテールのようにしてみせた。
「あ!・・・ナナミク!」
ニレイは美少女の名前を呼んだ。
「分かってんじゃない!・・・てか、お前はアタシのことを髪型だけで認識しとるんかーい!」
ビシ、とナナミクは勢いよくニレイにチョップをかました。
「ご、ごめんなさい。」
そう言いながらニレイはこのやりとりを未来で良くやっていることも思い出した。
「ご、ごめん。ちょっと待て。あのー、説明してくれる?」
花成は感動の再会らしき場面を壊さぬようそっと話に入った。
「あ、やっぱりあんた花成ね。・・・ふ、ふーん。まぁ、若い花成も?イケてるじゃない。まぁ未来の花成みたいな余裕はないというか、スケベなやつね。」
「・・・おい。なんだか分からないがお前が失礼なやつだということは分かった。何なんだお前は。まさか・・・」
「フン!やっぱりあの天才科学者・花成博士と言えどガキの時は馬鹿なのね。アタシのことを知らないのは過去だからしょうがないけど、分かるでしょ!」
ナナミクはドヤ顔をしてみせたが、花成は非常に殴りたくなった。
未来の自分も同じ気持ちになるのだろうか。
「おい、お前のほうがガキだろうが。」
「うるさいわね。はー、しょうがないわね。説明してあげるわ。このナナミク様が!」
「いちいち癇に障るやつだな。」
「アタシは高感度コミュニケーション型自律式アンドロイドXXX-7739。名前はナナミク。
こ、この名前はアンタがつけてくれた名前よ・・・。」
最後のほうの言葉はもごもご言っていて聞こえなかったが、花成の予想通りニレイと同じセックスアンドロイドのようだった。
「てか何でお前がこの時代に?未来からやってきたんだろ?」
「そうよ!・・・何でこの時代に来たかは今は言えないわ!」
「はぁ?」
ナナミクはニレイと違って記憶は失っていないようだった。
「まっ、アンタが未来の花成博士ばりに頭が良ければ分かるでしょうけれど。
ガキには分からないでしょうね!」
ナナミクはまたしてもどや顔をしていた。
「はぁ・・・?・・・てか、そんなことより服着ねーのか。」
花成はナナミクの裸を見ないように気遣って言ってやった。
俺は大人だからな、と自分に言い聞かし、失礼な言動は気にしないでおいてやることにした。
ナナミクは自分が素っ裸で言い合いをしていたことに気づき、真っ赤になった。
「ギャー!」
大人の対応もむなしく再び花成はナナミクに蹴られることになったのだった。
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