第2話



 手ぐしで髪の毛をほぐしていく。


 そもそも、なんで僕は髪を伸ばそうと思ったのか。そうすれば、こんなに面倒なことをせずに済んだのに。


 そう考えて、思い出した言葉は『黒髪ロングで巨乳は最高だよな』であった。


 言われた言葉は最低で、気分は最悪で、思い出して言われたことにイラッとした。


 僕に対して何か言ったわけではないことはわかっている。そうであっても、唐突な言葉に引いたし、僕に対して話題にしたことにイラっとした。


 なんだ、コイツ。最低な言葉だな。気持ち悪い。最悪な気分だと思った。


 そうであっても、彼の好みはきっとそうであり、理想像というのは“黒髪ロングの巨乳”なのだろう。……冷静に考えるとクソ野郎だな。


 僕は僕で年相応のサイズなので、決して小さいわけではないが、僕よりも大きな人は学校にいる。


 そういえば、一人称が“僕”であるから勘違いされそうであるが、僕は生物学上は“女の子”になる。


 わざわざ生物学上と前置きをしたのは、僕自身が性別なんてものを特別に思っていないからである。


 身体的には女の子。精神的には意識がない。それでも名前は女の子。


 僕の名前は、千代田ちよだ千歳ちとせ。ぴちぴちの高校二年生だ。


 僕的にはみんなに呼ばれている“セン”というニックネームの方が好きである。

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