ちょいといらっしゃいフカずきんちゃん

 ある日、おかあさんは、この子を呼んで言いました。


「さあ、ちょいといらっしゃい、フカずきんちゃん。ここに“お菓子”がひとつと、“ぶどう酒”がひと瓶あります。

「これを、フカずきんちゃん、おばあさんのところへもっていらっしゃい。

「おばあさんは、ご病気でよわっていらっしゃるが、これをあげると、きっと“元気に”なるでしょう。

「それでは、暑くならないうちにお出かけなさい。

「それから、外へ出たら気をつけて、お行儀よくしてね。

「やたらに、知らない横道へ駆けだしていったりなんか、しないのですよ。

「そんなことをして、転びでもしたら、せっかくの“瓶”はこわれるし、おばあさんにあげるものがなくなるからね。

「それから、おばあさんのお部屋にはいったら、まず、おはようございます、を言うのをわすれずにね。

「いきなり、お部屋のなかを、きょろきょろ見回したりなんかしないでね。


 なんともごちゃごちゃしたお話をききながして、「そんなこと、あたし、ちゃんとみせてよ」と、フカずきんちゃんは、おかあさんにそう言って、指切りしました。

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