フカずきんちゃん、こんちは
ところで、おばあさんのおうちは、村から
フカずきんちゃんが森へ這入りかけますと、おおかみがひょっこり出てきました。でも、フカずきんちゃんは、おおかみのごとき
「フカずきんちゃん、こんちは」と、おおかみは言いました。しゃべるくらいのかしこさはあるようです。
「ありがとう、おおかみちゃん」
「たいそう早くから、どちらへ?」
「おばあちゃんのところへいくのよ」
「まえかけの下に持っているものは、なあに?」
「“お菓子”に、“ぶどう酒”。おばあさん、ご病気でよわっているでしょう。それで、お見舞いに、もってってあげようかとおもって、きのう、おうちで“焼いた”の。これでおばあさん、“しっかり”なさるわ」
「おばあさんはどこ住みさ、フカずきんちゃん」おおかみは詮索をかさねます。
「これからまた、八か九
フカずきんちゃんは、こう教えました。じぶんのすみかではありませんので、気安いものでした。
おおかみは、心のなかでかんがえていました。
「(わかい、やわらかそうな小むすめ。こいつはあぶらがのって、おいしそうだ。ばあさまとやらよりは、ずっと味がよかろう。いやさ、ついでに、両方いっしょにぱっくりやる工夫が肝心だ)」
そこで、おおかみは、しばらくのあいだ、フカずきんちゃんと並んであるきながら、
「フカずきんちゃん、まあ、そこらじゅうにきれいに咲いている花をごらん。なんだって、ほうぼう眺めて見ないんだろうな。ほら、小鳥が、あんなにいい声で歌をうたっているのに、フカずきんちゃん、なんだかまるで聞いてないようだなあ。学校へいくときのように、むやみと、せっせこ、せっせこと、あるいているんだなあ。外は、森のなかがこんなにあかるくてたのしいのに」
そう言われて(うんざりしつつも)、フカずきんちゃんは、あおむいてみました。すると、お日さまの光が、木と木の茂ったなかからもれて、どの木にもどの木にも、きれいな花がいっぱい咲いているのが、目にはいりました。そこで、
「あたし、おばあさまに、元気でいきおいのいいお花をさがして、“花たば”をこしらえて、もってってあげよう。するとおばあさん、きっと“およろこび”になるわ。まだ朝はやいから、だいじょうぶ、時間までにいけるでしょう」
と、こうおもって、ついと横道から、その中で駆けだして這入って、森のなかのいろいろの花をさがしました。そうして、ひとつ花をつむと、その先にもっときれいなのがあるんじゃないか、という木がして、そのほうへ駆けていきました。そうして、だんだん森の奥へ奥へと、さそわれていきました。
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