第48話 だから命だけは
先ほどより明らかに力を増した魔族。
だが格下を威圧する「王の威光」スキルを使ってみたら、効果があったっぽい?
「何だ、これは……? なぜこの私が、貴様のような下等な生き物を前に、身体を震わせている……? 恐怖、しているのか……?」
本人も驚いているようだ。
一時的にステータスが下がっているはずなので、これで変身による上昇分を相殺してくれていたらいいのだが。
それでも効果はあくまで一時的なもの。
時間制限があるはずなので、その間に一気にケリをつけなければ。
俺は勝負を決めるべく、こちらから仕掛けた。
「(おりゃああああああああああああっ!)」
……声を出したら幼馴染に正体がバレかねないから、雄叫びは心の中である。
剣の心得なんて何もないので、とにかく我武者羅に繰り出す連撃だ。
魔族はそれを魔力を纏った腕で捌こうとするが、その腕から血が噴き出している。
よし、十分にダメージは与えられるようだ。
さらに相変わらず敏捷値は俺が優位にいるらしく、魔族がたまに出してくる反撃を躱しながら、ほとんど一方的に攻め立てていく。
「馬鹿なっ……変身した私がっ……押されているなどっ……」
しかし相変わらず傷はすぐに治ってしまうし、このままでは王の威光の効果が切れるまでに倒せそうにない。
どうしようかと焦り始めたところで、ふと思いつく。
そうだ。
戦いに使えるスキルを取得するのはどうだろう?
俺は今まで、引き籠り生活を快適で充実にするためのスキルしか取ってこなかった。
だが、取得可能なスキルリストの中には、戦闘に有効なスキルも存在しているのだ。
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怪力 100
頑丈 100
俊敏 100
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例えばこうしたステータスの値を上げると思われるスキル。
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剣技 100
体技 100
火魔法 100
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それに武技や魔法が使えるようになると思われるスキル。
最初の頃は必要なスキルポイントが多くて、取得なんて無理と思ってはいたが……。
今は五千ポイントくらい残っている状態だ。
勿体ぶらずにガンガン取得してしまおう。
まぁでも、ひとまず怪力と俊敏と剣技だけでいいかな。
〈怪力を取得しました〉
〈俊敏を取得しました〉
〈剣技を取得しました〉
これで300ポイントを消費した。
「っ!? な、何だ……っ!? 急に強く……っ!」
ステータスを見てみると、どうやら筋力と耐久と敏捷がそれぞれ10%ずつ上昇していた。
その変化が魔族にも分かったらしく、信じられないとばかりに目を見開いている。
それに適当に振り回しているだけだった牛刀も、不思議とどう扱えばいいのか感覚的に理解できる気がした。
これは剣技スキルの効果だろう。
よし、スキルのLV2を上げてみるか。
予想通り、LV2にするには200ずつのスキルポイントが必要なようだ。
構わず消費してやる。
〈怪力がLV2になりました〉
〈俊敏がLV2になりました〉
〈剣技がLV2になりました〉
「がぁぁぁっ!? 馬鹿なっ……またしてもっ……」
お陰で完全に圧倒し始めた。
もう一押しだ。
〈怪力がLV3になりました〉
〈俊敏がLV3になりました〉
〈剣技がLV3になりました〉
「~~~~~~~~~~~~~~っ!?」
俺の斬撃が魔族の右腕を斬り飛ばし、さらに返す刀で左腕も両断。
上半身が無防備になった魔族は、もはや俺には敵わないと悟ったのか、前方に凄まじい魔力を放出し、それを推進力にして逃げ出そうとしたが、遅い。
すぐさま追いつくと、渾身の一撃で胴を真っ二つに。
身体が泣き別れ、上半身と下半身が別々に地面を転がった。
「ま、待てっ……待ってくれ! お願いだっ! わ、私は心を改めた! もう二度と、人間を殺さないと誓おう! だからっ……だから命だけはっ!」
必死に命乞いしてくる。
うん、知ってる、こういうパターン、油断させておいて絶対何か仕掛けてくるんだよな。
と思っていると、魔族の身体が怪しく光りはじめた。
「クククッ……魔族を舐めるなよ、下等生物がぁっ! 貴様らを道連れにして死んでやる! クハハハハハッ、残念だったなぁっ!」
どうやら自爆するつもりらしい。
しかし悲しいかな、この身体はただのアバターだ。
だがこの場所で爆発されると、俺はともかく、周囲にとんでもない被害が出るかもしれない。
俺は咄嗟に魔族の身体を抱え、思い切り空に向かって飛び上がる。
「クハハハハハッ、やはり人間は愚かだなぁっ! 貴様一人なら、逃げることもできたかもしれないというのにっ! 自らの命と引き換えに、他の人間を救おうとするとはな……っ! もはや貴様は死を免れることはできぬぞ! この距離から私の命を費やした自爆攻撃を喰らっては貴様とて、一溜りもない……っ! クハハハハハハ――」
次の瞬間、魔族の身体から魔力が膨れ上がって、凄まじい爆発が巻き起こった。
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チャット小説の『peep』さんにて、本作がイラストノベル化されています!
キャラのイラストや音楽付きで物語が進行し、小説とはまた違った楽しみ方ができるので、ぜひ読んでみてください!
https://peep.jp/stories/C1iqQyZuz9MyItpi
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