第35話 危険人物すぎる
『オークの暗森』のエクストラボスは、オークロードだった。
例のごとくこちらの討伐にも成功した俺は、貴重な攻略報酬をゲットした。
【豚人帝の牛刀】『オークの暗森』のエクストラボス攻略報酬。腕力50%上昇
刃渡り二メートルを超す巨大な包丁だ。
エクストラボスであるオークロードが使っていたもので、これを装備していると腕力が50%も上昇するらしい。
そのお陰か、自分の身体よりも大きなこの包丁を、片手で振り回すことができた。
「ただ、これを持って歩きたくはないな。危険人物すぎる」
普段は魔法袋の中に仕舞っておくことにしよう。
その後、俺はもう一つのCランクダンジョンである『魔蟲の樹洞』に挑んだ。
名前の通り昆虫系の魔物が棲息しているダンジョンで、その最奥にいたボスはカブトムシの魔物ジャイアントビートル。
硬い外骨格が厄介な魔物だったが、【豚人帝の牛刀】でその外骨格ごと粉砕できたため、余裕で攻略できた。
そして現れたエクストラボスは、ジャイアントビートルのさらに上位種であるヘラクレス。
これも無事に撃破すると、新たな攻略報酬が手に入った。
【蟲王の外套】『魔蟲の樹洞』のエクストラボス攻略報酬。耐久30%上昇。スキル『大防御』
ヘラクレスの外骨格で作られた漆黒のマントだ。
耐久の上昇は30%に留まるものの、装備していると『大防御』というスキルを使えるらしい。
敵の攻撃に備えて身構えることで、ダメージを大幅に軽減できるという、状況によっては非常に有効なスキルだ。
そうして二つ目のダンジョンをクリアし、ほくほく顔で王都に戻ってくる。
路地の方から女性の悲鳴が聞こえてきたのは、街中でのことだった。
「や、やめてください!」
「いいじゃねぇか、ちょっとくらいよぉ。俺たちと一緒に楽しいことしようぜ」
「嫌です……っ! 離して……っ!」
「ちっ、大人しくしやがれ!」
「きゃっ……」
薄暗い路地を覗き込んでみると、数人の男たちが女性一人を取り囲んでいる。
うーん、なんというテンプレ展開。
女性を助けたら何かしらのイベントが発生しそうだ。
「た、助けて……っ!」
俺に気づいて女性が助けを求めてくる。
さすがに放っておくわけにもいかないので、俺は路地へと足を踏み入れた。
この重装備だから腕の立つ戦士だと思ったのか、男たちは一瞬怯んだものの、所詮は一人だと思い直したらしく、すごんでくる。
「何だ、てめぇは?」
「邪魔だからあっちに行ってろよ」
「……王の威光」
「「「~~~~っ!?」」」
スキル『王の威光』を発動すると、効果覿面だった。
急に威勢を失った彼らは、口をパクパクさせながら後退っている。
「く、くそっ! 覚えてろよ!」
そんな定型文の捨て台詞を残して、路地の向こうへ逃げていってしまった。
「大丈夫ですか?」
「っ……た、助けてくれてありがとう……っ!」
女性は俺が何をしたのか分からず呆然としていたが、慌てて頭を下げてくる。
俺より二つ三つほど年上のお姉さんだ。
町娘風の素朴な印象だが、その割に随分と胸の主張が激しい。
服の上からでも分かるくらい豊満なのだ。
「あなた、凄いのね……ただ睨むだけで追い払っちゃうなんて……私、強い人、好きよ?」
そう言いながら俺の手を取り、潤んだ瞳で見つめてくる。
「ねぇ……よかったら、お礼をさせてもらえないかしら……?」
……どうしてこうなった?
気づいたときには俺は薄暗い部屋に転がされていた。
周囲は壁に取り囲まれ、唯一の出入り口は鉄格子によって塞がれている。
どう見ても牢屋である。
「目を覚ましたようねぇ、坊や?」
と、鉄格子の向こうから声をかけてきたのは、あのとき俺が助けたお姉さんだった。
だが素朴な町娘からは一変し、こちらを小馬鹿にするような笑みを浮かべている。
「なぜこんなところにいるのかって顔ね? あなたの飲み物に睡眠薬を入れておいたのよ。もっとも、あなたに用はないわ。キンチャン商会。あそこの商会長とあなたって、仲が良いのよねぇ?」
どうやら俺は誘拐されてしまったらしい。
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