第34話 ちゃんと効くようだ

 俺は王都の北にあるCランクダンジョン『オークの魔森』へとやってきていた。


 この世界のダンジョンは、必ずしも洞窟や遺跡のような閉鎖的なものとは限らないという。

 こうした森全体がダンジョンになっていたり、山や湖が丸ごとダンジョンだったりするらしい。


『オークの魔森』はその名の通り、主に豚頭の人型の魔物であるオークが棲息しているダンジョンだ。

 そして深い森の奥のどこかにボスモンスターがいるのだろう。


「よーし、出発!」


 森の中へと足を踏み入れる。

 鬱蒼とした森の中には道らしきものが続いている一方で、その両側はあまりにも木々が生い茂っており、道を逸れての移動は難しそうだ。


「そう考えると洞窟とあまり変わらないな」


 より厄介な点があるとすれば、木々の隙間から時々、アルミラージという角の生えたウサギの魔物が飛び出してくることだ。

 こちらの機動力を奪うつもりか、足を狙って突進してくるのである。


「おら!」

「~~ッ!?」


 蹴り飛ばしてやった。

 見た目は可愛いウサギだが、攻撃してきたのだから容赦はしない。


 それにしてもこのダンジョン、オーク種しかいないわけじゃないんだな。

 その辺りもDランクダンジョンとは違うということか。


「ブヒィィィッ!」


 狭い道を塞ぐように、豚頭の魔物オークが立ちはだかる。

 身長180センチくらいの巨漢で、木を削って作ったような槍を手にしている。


 力強い突進から、その槍を突き出してきた。

 ひとまず俺はそれを鎧部分で受けてみる。


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 HP:2954

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 現在の最大HPが3004なので、ちょうど50のダメージだった。

 つまりエルダーコボルトと同じくらいの攻撃力ってことか。


 通常種のオークなのに、攻撃力だけならDランクダンジョンのボス相当だ。

 Cランクで一気に難易度が跳ね上がった印象である。


 俺はお返しとばかりに、オークの脳天を斬りつけた。


「ブヒッ……」

「おっ、一撃じゃ倒せないのか」


 すかさずもう一発をお見舞いし、オークは今度こそ絶命して地面に倒れ込む。


 攻撃力が高く、HPも多い。

 やはりゴブリンやコボルトとは単体の強さが段違いだな。


 一方で、動きはあまり早くない。

 敏捷値の高い俺なら、すべての攻撃を見切って躱すことも可能だった。


 洞窟よりは少し道が広いため、俺にとっては戦いやすいフィールドだ。

 とはいえ、巨漢のオークが二体同時に並ぶと、道がかなり塞がってはしまう。


「ちょうどいい。王の威光スキルを試してみよう」


 現れた二体のオークに対して、俺は【小鬼王の首飾り】で使えるようになったスキルを発動してみた。


「「ブヒッ……」」

「動きが少し鈍くなったな。ちゃんと効くようだ」


 気になるのは「格下」の定義だ。

 ステータスなのか、それともレベルなのか、金ちゃんの鑑定でもそこまで詳しいことは分かっていない。


 レベルだったら、300越えの俺は大抵の魔物に効くということになるが……。







 首飾りの効果もあって、俺はその後も順調にダンジョンの攻略を進めていった。

 そしてボス部屋へと辿り着く。


「ブフオオオオオオオオオオッ!!」


 待ち構えていたのはオークの上位種、ハイオークだ。

 手下オークを三体も従えたハイオークは、身の丈二メートルを超え、まさしくボスモンスターに相応しい威容である。


 さすがにボスには効かないだろう。

 そう思いつつ、ダメもとで俺は使ってみた。


「王の威光、発動」

「~~~~ッ!?」

「あれ? もしかして効いた……?」


 まさかこのスキル、ボスにも効果があるのか……。


 初見なので本当に能力が低下したのか、比較することはできない。

 しかし実際に戦ってみると、やはり弱体化していたのだろう、あっさりと撃破してしまった。


「――ダンジョンボス:ハイオークを倒しました」

「――おめでとうございます。ダンジョン『オークの暗森』クリアです」

「――特定条件『ソロでダンジョンボスを初見攻略する』の達成が確認されました」

「――エクストラボスに挑戦することができます。挑戦しますか?」

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