第31話 少しは知能があるんだな

「グギェギェギェッ!」


 そんな気持ちの悪い声を上げながら、醜悪な顔の魔物が躍りかかってくる。


「ギャッ!?」


 脇をすり抜けざま、剣で胴体を輪切りにしてやった。


 やはりリアルゴブリンはキモかった。

 緑色の肌で、目がぎょろぎょろと大きく、乱杭歯の隙間から常に長い舌がだらしなく飛び出している。


 基本的に裸なので、下半身は丸出しだ。

 そしてどのゴブリンも、ち〇ち〇が付いていない。


 もしかしたらこのダンジョンのゴブリンはすべて雌なのかもしれない。


「だから女を襲わないのかな」


 そんなどうでもいいことを考えながら、ゴブリンを瞬殺していく。


 ゴブリン一体一体はコボルトよりも明らかに弱かった。

 身体も一回りは小さいし、俊敏性にも欠け、そのくせ耐久力も低い。


 ただ、数が多い。

 どこからともなくどんどん湧いてくるのだ。


 それに時々、仲間と連携しながら攻撃してくる。


「ゴブリンは徒党を組むとは聞いていたが……少しは知能があるんだな」


 もっとも、与えられるダメージが1では、俺を倒すことはできない。


「ギャギャギャ!」

「グギャーッ!」

「あれ、逃げ出した」


 どうやら力の差を痛感すると逃げてしまうらしい。

 こちらとしては楽なので助かる。


『ゴブリンの巣穴』はその名の通り、まさにゴブリンたちの巣穴だった。


『コボルトの鉱窟』は比較的しっかりした岩の洞窟だったのだが、こちらはただ土の中を堀り進めただけといった感じで、壁は脆く柔らかく、天井からは砂が降ってきたりする。

 地震がきたら簡単に崩れそうだな……。


 法則性もなく出鱈目に掘られているようで、迷路のような複雑に入り組んでいた。

 一応、探索スキルに従って進んではいるが、確率的なものなので絶対ではない。


 特に道が何方向にも分かれていると、判断に困ってしまう。


 右の道:28%

 左の道:19%

 右前方の道:31%

 左前方の道:22%


 もうちょっと頼みますよ探索さん……って感じだ。


「探索のレベルを上げるか。そうすれば正確性が増すかもな」


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探索LV2 400

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 俺は400ポイントを消費し、索敵のレベルを2に上げた。

 すると先ほどと同じ分かれ道で、数値が変化した。


 右の道:42%

 左の道:11%

 右前方の道:35%

 左前方の道:12%


「確率が逆転したんだが……どっちだよ。まぁ右の道に進んでみるか」


 探索レベル2を信じて、右の道を選ぶのだった。






 ダンジョンの奥へと進んでいくと、ゴブリンの上位種と遭遇するようになった。


 弓矢で遠距離攻撃してくるゴブリンアーチャー。

 剣の扱いに長けたゴブリンソードマン。

 攻撃魔法を使ってくるゴブリンメイジ。

 味方の回復をするゴブリンヒーラー。

 通常種の数倍の体格を持ち、動きは鈍いものの怪力を有するホブゴブリン。


 コボルトに比べると随分と多彩な顔ぶれだ。

 あっちはコボルトとコボルトリーダーくらいしかいなかったからな。


 とはいえ、いずれも俺の相手ではなく。

【狗人王の尻尾】で跳ね上がった高い敏捷値を活かし、一気に距離を詰めて瞬殺していくだけだ。


「おっ、ようやくボス部屋か」


 ダンジョンに潜り始めてからおよそ三時間。

 ついに俺はボス部屋へと続く扉の前に辿り着く。


 扉を開けて中に入る。

 そこで待ち構えていたのは、総勢ニ十体近いゴブリンたちだった。

 通常種もいれば、上位種もいる。


「こいつら全員がボスってこと? まぁ、まとめて倒せばいいだけだな」


 ニ十体のゴブリンたちは、これまで遭遇したゴブリンたちとは比較にならないほど高い連携で、侵入者の俺を排除しようとしてきた。

 初心者にとっては厄介な相手だろうが、俺には通じなかった。


 頭上から降ってくる矢や攻撃魔法を躱しながら、俺は次々とゴブリンを仕留めていく。

 ホブゴブリンが盾役を買って出てくるが、少々HPが高いだけの鈍間では、俺を止めることなどできない。


 雑魚の通常ゴブリンたちを蹴散らし、ゴブリンメイジにゴブリンアーチャーを斬り倒す。

 さらに、逃げようとしていたゴブリンヒーラーを背中からブスリ。


 よし、これで半分は倒したはず……。


「……待て。なんか増えてないか?」


 ニ十体のうち十体を討伐したとして、残りは十体。

 だが周囲にはざっと数えて、十五体、いや、十六体いる。


「っ……地面からゴブリンが……。え、もしかして無限増殖するパターン?」

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