第13話 そんなことはないと思うぞ
部屋に入ってきたのはリュナと名乗る少女だった。
しかも金髪で、めちゃくちゃ整った顔立ちの美少女なのである。
元の世界のアイドルや女優と比べても、勝るとも劣らない美人っぷり。
加えてスタイルも抜群だ。
よく見ると耳が尖っていた。
まさか、ファンタジー世界でお馴染みの、あのエルフなのか……?
「金ちゃん……幼馴染がどうとか人を羨んでおきながら、自分は奴隷のエルフさんとよろしくやってたってわけか……」
「そ、それは少し誤解があるでござるよ! リュナ殿とは確かに奴隷契約を結んでいるでござるが、決して手を出したりはしていないでござる! あと、リュナ殿はハーフエルフでござるよ!」
慌てて弁明する金ちゃん。
「ご主人様とわたくしが結んでいる奴隷契約は、最も重いものとなります。ですので、どんなことを命じられてもわたくしは従うしかありません」
「……金ちゃん……」
「ち、違うでござる! リュナ殿は奴隷市場で、犯罪奴隷として売りに出されていたでござる! 犯罪奴隷は購入後も厳しい奴隷契約を維持しなければならないと、法律で決まっているでござるよ!」
犯罪奴隷?
このエルフ美少女、見た感じは犯罪に手を染めるような人には思えないけど……。
「心配は要らないでござる。リュナ殿は嵌められたのでござる。要するに冤罪でござるよ。それで犯罪奴隷に落とされるというのは、この世界では珍しいことではないでござる。それに奴隷契約を交わしている以上、命令に背くようなことはできないでござるよ。その点でも、むしろ普通の部下よりずっと安全なのでござる」
「まぁ、金ちゃんがそう言うならそうなんだろう」
「小森殿……っ! やはり小森殿は心の友でござるよ!」
「だ、抱きつくなって……っ!」
暑苦しい金ちゃんを引っぺがす。
「しかもリュナ殿は元々、名の知れた冒険者だったでござる。戦闘系の上級職で、レベルも高く、最近あちこちから恨みを買っている拙者の護衛としても大変重宝しているでござるよ」
「恨み?」
「今までなかった謎の商品を売り捌き、急成長を遂げている新興商会でござるからな。当然、既存勢力にとっては面白くないでござろう」
それもそうか。
金ちゃんは戦闘向きの職業じゃないので、気を付けてもらいたいものだ。
と、人の心配をしていると、金ちゃんが声のトーンを落として真剣な顔で言う。
「……小森殿も注意するでござるよ。拙者がここを出入りしていることを、反対勢力が掴んでいる可能性もあるでござる」
「俺は部屋の中にしかいないから大丈夫だって」
部屋セキュリティがあるから、押し入ってくることもできないはずだ。
「でも、金ちゃんはアイテムボックスがあるからよかったけど、どうやって大量の商品を持って帰るんだ?」
「アイテムボックスと同様の効果を発揮する魔道具があるでござるよ。かなり高価ではあったでござるが、この部屋いっぱい分くらいなら収納できるはずでござる」
それからというもの、リュナさんが仕入れに来ることが多くなった。
金ちゃんは自ら立ち上げた商会の会長をしていると言うし、やっぱり忙しいのだろう。
こんな美少女が一人で俺の部屋に来るという状況に、最初は少しドキドキしたのだが、
「コモリ様! 一体どうすればキンチャン様に抱いていただけるのでしょうか!? 奴隷契約があるせいで夜這いをかけることもできず、毎晩悶々として眠れない日々が続いているのです。ああ……ご主人様の子種が欲しい……」
……変態エルフだったので、すぐ気にならなくなった。
俺のところに来るたび、情欲塗れの愚痴をぶつけられるのである。
「やはりわたくしがハーフエルフだからでしょうか……」
「いや、そんなことはないと思うぞ」
単に今までモテたことがない童貞だから、警戒してるか勇気が出ないかのどちらかだろう。
むしろ過去に金ちゃんが好きだったキャラクターたちを考えると、むしろエルフは好きな方だろう。
ちなみにリュナさん、見た目は十代だが実年齢は三十を超えているそうだ。
エルフの血を引くため長寿で歳を取りにくいのだろう。
年齢だけ見ると、高校生を狙うアラサーってことになる……急に犯罪臭がしてきちゃうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます