第12話 売れまくりでござるよ

 それからというもの、金ちゃんは度々俺のところを訪れては、元の世界の商品を大量に買って帰っていった。


 どうやらアイテムボックスという便利なスキルを持っているらしく、どれだけの量があっても持ち運びには困らないらしい。


「しかしそんなにたくさん売れるのか?」

「売れまくりでござるよ!」


 聞けば、飲食料品やキッチン用品、それに家具類や衣類なんかがよく売れているらしい。


「安価で美味しい。安くて便利。安いのに品質が良い。というふうに、お客様から絶賛されているでござる。やはり地球の製品は素晴らしいでござるよ」


 逆に玩具などの娯楽系の売れ行きはあまりよくないようだ。

 そういう文化があまり根付いていないのだろう。


 本や漫画は言語の問題でそもそも読めないらしいので仕方ないが、金ちゃんの一押しであるフィギュアも今のところまったく売れてないという。


「無論、拙者は絶対に諦めないでござるよ! この世界にフィギュアを広めるというのは、きっと拙者の使命でござる!」


 いやあ、さすがに神様もそんなことのためにわざわざ異世界から召喚したりしないと思うけど……。


 金ちゃんのお陰で、俺もかなり儲けさせてもらっていた。

 マージンを10パーセントにしているので、100ゴールドの商品を通販で購入すると、110円で金ちゃんが買い取ってくれる。


 すでに300万ゴールドは稼いでいると思う。

 ほとんど何もしていないのに、こんなに貰っていいのだろうか。


 外で遊ぶわけにもいかないので、そのお金で室内環境を整えることにした。

 DIY経験のない俺だが、日曜大工のスキルを取得すれば一人でもリフォームができるだろう。時間も無限にあるし。


 腐りかけの床板をすべて剥がし、購入した新しい床材へと交換する。

 漆喰の塗り壁セットが売ってあったので、いったんそれで壁全体を塗り、その上からシール状の壁紙を張り付けた。

 天井も壁と同様の処置を行う。


 後は色々と家具や小物などを購入し、お洒落に飾り付けてやると、


「よし、これで少しはまともな部屋になったな」


 独房のようだった部屋が見違えるほどよくなった。

 窓だけは相変わらず独房チックなやつしかないが、さすがにこいつをDYIするのは難しそうだ。


 窓ガラスすらなく、鉄格子が嵌ってるだけだしな。

 お陰で虫が入り放題で、虫除けスキルを取得してしまった。


 ベッドと布団が手に入ったのがありがたい。

 快眠スキルがあるから床でも問題なく眠れるのだが、やはり心地よさが段違いだ。


「ベッドに寝転がって漫画を読む……幸せだな」


 後はゲームができれば嬉しいのだが、生憎と電気が通っていないこの世界では難しい。

 昔の携帯型ゲームなら乾電池で動いたようだが……。


「いや、待てよ。発電機を買えば……確か、非常用の、太陽光で発電するようなやつがあったはず……」


 と思ったが、そもそも家の中じゃダメだった。

 独房型の窓では入ってくる光の量なんてたかが知れているし、発電できたとしても微々たる量だろう。


「次に金ちゃんが来たら外で充電してもらえるよう、頼んでみようかな?」


 そんな風に考えていたのだが、実際に金ちゃんが来たときには完全に頭から吹き飛んでしまった。

 それもこれも、金ちゃんが特大の衝撃をぶち込んできたせいである。


「小森殿、実は紹介したい人がいるでござる」

「紹介したい人?」

「この世界の人でござるのだが、拙者がとても信頼を置いている部下でござる」

「へえ」


 金ちゃんがそう言うならそうなのだろう。


「拙者も色々と忙しくて、仕入れに来ることができなくなるかもしれないでござる。そのときにはに任せたいのでござるよ。ただ、ここは小森殿にとってプライベートの場所でござるし、ギフトのことも秘匿しておきたいでござろう?」

「そうだな……。確かにここのことは金ちゃん以外には知られたくない。ただ、金ちゃんが本当に信頼している相手と言うなら、大丈夫だ」

「よいでござるか? 大変ありがたいでござる! では、ここに来てもらって構わないでござるか?」

「ああ」


 そしていったん部屋を出ていった金ちゃんが、しばらくしてその部下とやらを連れてくる。


「初めまして、コモリ様。キンチャン様のであるリュナと申します」


 やってきたのは超絶美少女だった。

 しかも今、奴隷って言わなかった……?

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